<指数パフォーマンス比較~バリュー株orグロース株どっちが優勢?~>

1月の中小型株ハイライト「外国人の大型株詣での片隅で…」

 2024年の株式市場は、幸先良すぎなスタートになりました(大型株にとって)。中小型株ということでみても、上表のように指数で見て全て月間プラス。

 なのですが、本来は(理屈上は)上がりにくいはずの大型株指数が圧倒的にアウトパフォームしたのが1月相場。月間騰落率は日経平均株価が+8.4%、TOPIX(東証株価指数)が+7.8%ですので、中小型株指数(とくに東証グロース指数)は物足りない上昇だったといえます。

 プライム市場でとくに上がった業種は海運(+17.1%)、証券商品先物(+15.2%)、輸送用機器(+13.4%)でした。昨年12月の日本銀行会合がハト派的だった(その後に開示された「主な意見」はタカ派的でしたが…)こと、そして1月1日に発生した能登半島地震を受けた日銀の早期マイナス金利解除の可能性低下を受け、ドル/円相場のトレンドが円安方向に反転。

 円安が買い手掛かりになった業種も多いのですが、これら業種が当然ですが、東証グロース市場にはほぼ皆無だったこともパフォーマンス差の理由と説明できます。

 中小型株においては、バリュー株とグロース株ではバリュー株が優位(東証スタンダード指数もバリュー株の色合いが濃い)。大型株の方では、グロース株でもアドバンテストやディスコなど半導体関連株は大活況でした。

 昨年の主軸テーマ「生成AI」については、関連株の中核である米エヌビディア株が新年早々から急伸。これが波及した形ですが、半導体関連株も中小型株には少なく、半導体除くグロース株のパッとしなさが際立つ格好に…。

 世界の投資家からの視聴率が最も高い日経平均は、(1月23日の日銀会合の結果判明直後に付けた)3万6,984円を1月のザラ場高値としています。この水準は約34年ぶり高値ということもあり、メディアでも多く取り上げられました。「1989年に付けた史上最高値更新もあるんじゃないか!?」そんな気も否応なく高まるものすごいモメンタム指数と化した日経平均。

 他国の株価指数も凌駕(りょうが)する圧巻のパフォーマンスで、とくに香港、中国の株価指数が大幅安する中での逆行高現象は圧巻でした。中国人投資家が、自国の株の損失にうんざりし、上海市場で取引できる日経平均連動型ETF(上場投資信託)にお金を投じているという話は大きな話題になりました。

 また、今となれば悲惨な話ですが、「中国株ロング/日本株ショート」でポジションをつくっていたヘッジファンドが甚大な損害で閉鎖に追い込まれたというニュースもありました。

 地政学リスクからも距離を置く日本株市場に避難的に資金シフトさせる海外勢が多かったとされた1月。その他にも、昨年に続き、東証の要請に応じた「企業改革」や、この1月から開始となった新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)による緩やかな資金流入期待なども日本株のカタリストだったとされます。

 この1月の最大の買い手は外国人投資家だったのですが、市場別で見ても違いは一目瞭然。ロットの大きい資金は、流動性の高い大型株を優先するため、大型株にはバラ色の1カ月であっても、中小型株を触っていた投資家にとっては「普段と大して変わらない」というのが正直な1月相場の感想となりそうです。

新NISAで中小型株!今月の銘柄アイデアは…「静かに高値…『売りが少ない』好需給銘柄」

 2月に入っても、時価総額トップのトヨタ、そして任天堂や三菱商事も最高値を更新する強地合いを維持しています。海外投資家の現物株への資金流入を感じさせる現象で、物色の矛先はシフトしながらも、海外投資家が日本株を支持するムードは続きそうです。

 ただ、そうした海外投資家の新規マネーを呼び込んでいるとはいえ、スタンダードやグロース市場の中小型株に、その恩恵が下りてくる感じはありません。これは、大きな資金を短期間で投入するに当たり、時価総額や売買代金(流動性)のサイズ感ほど重要な要件は無いからです。

 こうした投資家の影響度が高い時期は、業績が低調だとか、バリュエーションが高いとか、そうした要素に目を背けられる面はあります。ただし、大型株に限った話ですが…。

 東証プライム市場では、海外投資家が月間で1兆円超も買い越す活況ぶりとなっている一方、普段と変わらないのがスタンダード、グロース。

 上表は、「プライム」の売買代金に対する「スタンダード+グロース」の売買代金の比率を折れ線グラフで表示したもので、今年1月と昨年1月を比べています。昨年1月の平均は8.9%だったのに対して、今年1月は6.4%。プライム市場に対するスタンダード、グロース市場の売買が大きく低下しています。

 プライム市場では1日の売買代金が前年比で約7割もアップしたのに、スタンダード、グロース市場は同2割弱。しかも、アップ分のほとんどは、直近IPO(新規公開株)でグロース上場のQPS研究所(5595)分で、それを除けば前年比横ばいというのが実情でした。

 買い手は海外投資家で、その海外投資家はプライムの大型株中心に物色しているとすれば、中小型株への循環物色に期待するのも無理な話といえそうです。

 ただ、株価は買い手の事情だけでなく、売り手の事情で決まる側面もあります。買いが少なくても、売りがもっと少なければスルスル上がるのが株価…でいえば、海外投資家の買いを期待できなくても、そもそも売りが少ない好需給株を探すのは理にかなった発想です。

高値圏でも売り物少ない!サイレント高値切り上げ銘柄
【条件】(1)過去1カ月騰落率+10%以上
(2)過去3カ月騰落率+30%以上
(3)信用買い残比率5%未満
(4)売買代金25日移動平均<13週移動平均
※時価総額100億円以上、時価総額大きい順

コード 銘柄名 時価総額
(億円)
信用
買い残比率
9268 オプティマス 488 4%
2938 オカムラ食品工業 305 1%
6547 グリーンズ 295 4%
2820 やまみ 280 2%
9163 ナレルG 276 4%
5013 ユシロ化学工業 276 1%
6137 小池酸素工業 211 1%
5285 ヤマックス 146 4%
7254 ユニバンス 145 2%
7819 粧美堂 103 1%
※水色の網掛けは東証グロース、それ以外はスタンダード

 今回は、スタンダード、グロース上場銘柄の中で、後から振り返ったら上がってたサイレント高値切り上げ銘柄を取り上げます。過去1カ月で日経平均を上回る10%超の上昇率を記録(かつ過去3カ月で30%超の上昇率)した強い株のみピックアップ。

 その中で、条件として「将来的な売り圧力が小さい」「売買を減らしながら上昇」この2点を加えました。「将来的な売り圧力が小さい」に関しては、信用買い残が発行済み株数に対して5%未満と低比率の銘柄としています。また、「売買を減らしながら上昇」は、13週移動平均売買代金より25日移動平均売買代金が少ない銘柄としました。

 条件に合致した時価総額100億円以上の銘柄は、スタンダード、グロース市場全体でわずか10銘柄。静かに上昇、ということでいえば、人気化しにくいスタンダード銘柄が多いのが特徴といえます。

 昨年上場した直近IPO系では、サーモンの養殖というニッチ分野で成長期待の高いオカムラ食品工業(2938)、グロース上場ながら低PER(株価収益率)の価格設定でジワジワ上昇しているナレルグループ(9163)が該当します。しっかり配当を出している企業が多く、配当株に関しては、長期保有前提の(売るつもりの無い)買い手の割合が高いことが大きそうです。

 新NISAの成長投資枠で投資する場合、「今の株価では売る人が少ない」そういう目線で銘柄を探してみてください!