マイナス金利から通常の緩和スキームへ円滑に移行できるか

 現在のマイナス金利政策は、金融機関が日銀に預けている当座預金を3階層に分け、そのうちの一つ(「政策金利適用残高」)にマイナス0.1%を課すというものです。

 したがって、マイナス金利政策を止めるとなれば、準備預金制度に従って積み上げている当座預金の残高に影響が及ぶことになるため、当該制度に合わせて、つまり「積み期」(当月16日~翌月15日)に合わせて変更する必要があります。

 こうしたことから、仮に3月18~19日に開催されるMPMでマイナス金利政策解除を決定したとすると、それが適用されるのは4月積み期、すなわち4月16日からということになります。4月MPMは25~26日とその直後であり、常識的にはマイナス金利からプラス金利への円滑な移行が優先され、4月MPMで動くということはないと考えられます。

FRBの利下げと重なった時の為替市場に与える影響

 動くなら次の6月MPM(13~14日)からであり、その際気になるのはFRBの動向です。日銀の利上げとFRBの利下げ転換が重なれば、日銀のさらなる追加利上げや、FRBのさらなる利下げに対する思惑次第で、ドル/円相場が過剰に反応するリスクがあります。

 特に米国の投資家は、日本固有の事情を深く配慮せず、単純に米国のケースを当てはめて考える傾向が強いため、日銀も2%くらいまでどんどん利上げするに違いないと思い込む可能性は否定できません。

 したがって、為替が円高方向にオーバーシュートするリスクを決して甘く見ない方が良いと思っていますが、幸い米国の景気が予想以上に底堅く、FRBが利下げに転じるタイミングが、今年の後半にズレ込む可能性が高いとみています。

 アトランタ連邦準備銀行が推計するGDP(国内総生産)ナウキャストを見ると、1月26日現在、2024年1-3月期実質GDPの予測値は前期比年率3.0%と、驚くべき粘り腰を見せています。

 今後、景気が極端に崩れなければ、パウエルFRB議長が描くソフトランディング・シナリオのもとで、インフレ率の落ち着き方をにらみながら、政策金利を景気中立的な水準に徐々に近づけていくという、いわば「正常化利下げ」を行っていくことになると予想されます。

 FRBの物価見通し(2024年10-12月の前年比2.4%)を前提にすれば、その正常化利下げの開始は早くて9月。それ以降、日銀は様子を見ると想定し、追加利上げは6月と7月の2回にとどまると予想しました。