為替DI:1月のドル/円、個人投資家の予想は?
楽天証券FXディーリング部 荒地 潤
楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示します。
DIは「強さ」ではなく、「多さ」を測ります。DIは、円安や円高の「強さ」がどの程度なのかを示しているわけではないですが、個人投資家の相場観が正確に反映されていると考えるならば、DIの「多さ」は同時に「強さ」を示すことになります。
「1月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」
楽天証券がドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の70%が「円高/ドル安」に動くと予想していることが分かりました。前月は53%でした。
円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から34ポイント減少してマイナス40になりました。DIのマイナスは2カ月連続で、個人投資家の円高見通しが円安見通しよりも多いことを示しています。
FRBはインフレに勝利したのか?
FRB(米連邦準備制度理事会)が金融政策の運営にあたって課せられている法的使命は「物価の安定」と「最大限の雇用」を達成することです。これはFRBのデュアル・マンデートと呼ばれています。
デュアル・マンデートを具体的な数字で示すならば、「物価の安定」とは、コアPCEの2%です。PCEとは個人消費支出の略で、米国の家計が購入した財やサービスを集計した経済指標のことです。
そのうち変動の激しい食品とエネルギーを除いた数字をコアPCEと言います。「雇用の最大化」とは、失業率がNAIRU(非加速的失業率)の水準で、FRBはこれを4%と見積もっています。
FRBの目標は、失業者を増やさずにインフレ目標を達成することです。失業率はレイオフやリストラを通してではなく、自然な人口動態と労働力の変化によって上昇させます。しかし、これは理想です。
FRBはデュアル・マンデートのうちのひとつ「雇用の最大化」を達成して、あとは「物価の安定」、すなわち労働市場を動揺させることなくインフレ率を下げることだけです。
CPI(消費者物価指数)は、昨年6月のピーク時から1/3に低下しました。しかし、下落の大部分はベース効果とエネルギー価格の下落のおかげです。ベース効果は1年後には消えていますし、エネルギーが今後も低価格で推移するという保証はありません。
一方、コアPCEは1年前と比べてほとんど下がっていません。賃金上昇率は4.0%以上で高止まり、賃金と物価のスパイラルの脅威にも直面しています。FRBはインフレとの戦いに勝利したのかとの質問に対しては、もしFRBがCPIではなくコアPCEを重視しているならば、決してそうではないというのが答えです。
マーケットでは米国の政策金利はピークに達し、FRBは来年から利下げを開始するとの見方が強まっています。しかし、利上げ終了と利下げは全くの別物です。長期間にわたる高金利の維持と、労働市場の大幅な調整の必要性が残っています。FRBの仕事はまだ終わっていません。
ユーロ/円
楽天証券がユーロ/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の69%が「円高/ユーロ安」に動くと予想していることが分かりました。前月は48%でした。
円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から42ポイント減少してマイナス38になりました。DIがマイナスになったのは2023年3月以来のことで、個人投資家の円高(ユーロ安)見通しが円安(ユーロ高)見通しよりも多いことを示しています。
豪ドル/円
楽天証券が豪ドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の67%が「円高/豪ドル安」に動くと予想していることが分かりました。前月は47%でした。
円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から40ポイント減少してマイナス34になりました。豪ドル/円のDIがマイナスになったのは2023年3月以来のことで、個人投資家の円高(豪ドル安)見通しが円安(豪ドル高)見通しよりも多いことを示しています。
今後、投資してみたい金融商品・国(地域)
楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲
今回は、毎月実施している質問「今後投資してみたい金融商品」で「投資信託」「国内株式」「外国株式」「ETF(上場投資信託)」を選択した人の割合に注目します。各質問の選択肢は、ページ下部の表のとおり、13個です。(複数選択可)
図:「投資信託」「国内株式」「外国株式」「ETF」を選択した人の割合の推移
2023年12月の調査で、「投資信託」を選択した人の割合は52.65%(全回答者3,561名中1,875名)でした。「国内株式」は64.90%、「外国株式」は46.22%、「ETF」は32.69%でした。上図のとおり、2023年11月と12月に投資信託を選択した人の割合の上昇が目立っています。
このタイミングで投資信託を選択した人の割合が大きく上昇した理由の一つに、1月から新NISAがスタートしたことが挙げられます。
新NISAの「つみたて投資枠」を活用できる銘柄は、販売手数料ゼロ、信託報酬が一定水準以下、分配頻度が毎月ではないなどの金融庁の基準を満たした銘柄で、ほとんどが投資信託です。(280銘柄のうち投資信託が272本、ETFが8本。2024年1月4日(木)時点)
長期視点の資産形成になじむ「つみたて投資枠」を活用したいと考えている投資家の方が、投資信託を選択した可能性があります。上記で示した四つの金融商品に属する銘柄のほとんどが、新NISAの「成長投資枠」を活用して取引できますが、今のところ長期視点の資産形成を目指し、投資信託に注目する動きが目立っていることがうかがえます。
「つみたて投資枠」を活用した取引の活況状況と投資信託を選択する人の割合には、関連がありそうです。引き続き、これらの動向に注目していきたいと思います。
表:今後、投資してみたい金融商品 2023年12月調査時点 (複数回答可)
表:今後、投資してみたい国(地域) 2023年12月調査時点 (複数回答可)