はじめに

 今回のアンケート調査は、2023年12月25日(月)~12月27日(水)にかけて行われました。

 12月末の日経平均株価は3万3,464円で取引を終えました。月足ベースでは再び下落に転じてしまいましたが、下げの大きさ自体は前月末終値(3万3,486円)比で22円安と小幅にとどまり、ほぼ横ばいでした。

 また、前年(2022年)末の2万6,094円からは7,300円を超える上昇幅となっており、2023年の相場を全体的に捉えると、株価水準を大きく切り上げた年だったと言えます。

 あらためて、12月の月間の値動きを振り返ると、日米の金融政策をめぐる思惑を背景に、前半は警戒モードで軟調な場面が目立ち、後半に入ると、不安後退で反発する展開となりました。月間を通じては、米国における景気のソフトランディング見通しや、利下げ期待を先取りする動きが前月に続いて相場のけん引役となりました。

 その一方で、国内では、日経平均が年初来高値水準まで上昇するものの、新たに高値を更新できるほどの勢いが出なかったことや、米国株市場でも徐々に過熱感や割高感が意識され始めたことなど、一部で株価の上昇機運に陰りも見え始めた中で月末を迎えました。

 このような中で行われた今回のアンケートですが、3,500名を超える個人投資家からの回答を頂きました。日経平均のDIについては、前回よりも株高の見通しがやや後退したほか、為替の見通しについては、米国の金利低下傾向を受けて円高見通しをさらに傾ける結果となりました。

 次回もぜひ、本アンケートにご協力をお願いいたします。

日経平均の見通し

「目先の調整を想定も堅調な見方は継続」

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

 今回調査における日経平均の見通しDIは、1カ月先がプラス13.17、3カ月先はプラス13.48となりました。

 前回調査の結果がそれぞれプラス26.79、プラス14.33でしたので、両者ともにDIの値が縮小したことになります。

 特に1カ月先DIが前回の値の約半分となっています。今回の調査期間(12月25日(月)~27日(水))の日経平均は軟調な値動きではなく、むしろ、高値圏での推移だったのですが、6月19日(月)の取引時間中につけた高値(3万3,772円)をなかなか超えられない状況が半年以上続いたため、上値の重たさによる目先の売り観測が今回の結果に反映されたのかもしれません。

 とはいえ、回答の内訳グラフを見ると、強気派の割合が弱気派よりも多い状況が続いており、今後の相場に対して悲観的になっているわけではなさそうです。

※四捨五入の都合で合計が100にならない場合がある
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 1カ月先の内訳グラフを見ると、強気派が前回の39.78%から29.26%に減少、弱気派が12.99%から16.09%に増加、中立派が47.24%から54.65%に増加しています。

※四捨五入の都合で合計が100にならない場合がある
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 さらに、3カ月先の内訳グラフでは、強気派が33.40%から34.06%に増加、弱気派が19.07%から20.59%の増加、中立派が47.54%から45.35%の減少と、いずれも前回からの増減が限定的にとどまっており、中期的な見通しの堅調さは維持されている印象です。

 こうした中で迎えた2024年相場ですが、大発会の取引時間中に日経平均が2023年末終値(3万3,464円)から700円以上も下落する場面があるなど、やや不安の残るスタートとなりましたが、連休明けの9日(火)にはバブル後の最高値を一時的に更新するなど、早い段階で持ち直す動きとなっています。

 実際に、年初の日本株の物色動向を見ると、元日に北陸を襲った地震の影響で、日本銀行の金融政策の修正が遅れるとの見方が高まり、為替市場で円安が進んだことから、輸出関連株が買われました。

 ほかにも、米国の金利上昇を受けて銀行株が上昇、さらに、中東情勢を受けた地政学的要因で海運株が買われ、いわゆるNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)特需で証券株や高配株などにも買いが向かうなど、幅広い銘柄へ買いが相場を支えた面があります。

 さらに、まもなく迎える企業決算シーズンや、来週15日(月)には東証から「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示企業リストが公表され、企業業績への関心度が高まるタイミングでもあります。

 グロース株を中心に不安定な値動きとなっている米国株の「揺さぶり」には警戒が必要なものの、日本株については、企業改革が評価される銘柄が増加し、全体の底上げ基調を高められるかが試されることになりそうです。

今月の質問「老後のお金、準備は進んでいますか?」

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 ここからは、「今月の質問」について、書きます。12月のテーマは「老後のお金、準備は進んでいますか?」でした。

 2019年に老後のお金の問題が日本社会の喫緊の課題であることを広く認知させた「老後2,000万円問題」は、現在も各所でさまざまな切り口で議論されています。老後のお金に関する不安が底流する中、2024年は翌2025年の年金制度改革を控え、老後のお金に関する議論が加速する年になると考えられています。

 こうした中、楽天DIでも「老後のお金」について取り上げました。2017年5月に老後のお金について尋ねた際とほぼ同様の質問をしながら、現在の投資家のみなさまの老後のお金についてのお考えを尋ねました。総回答者数は2017年5月が3,273人、2023年12月は3,561人でした。

図:質問1

※四捨五入の都合で合計が100にならない場合がある
出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 質問1では、老後のお金に対するお考えと準備について尋ねました。2023年12月の調査では、準備は進めているが目標額にまだ遠い(45.93%)、準備を進めており目標額まであと少し(15.45%)、すでに準備は完了し不安は全くない(10.41%)、などが多く選択されました。

 2017年5月の調査結果と比較するといずれも1.5ポイント以上、上昇しました。これらの選択肢の共通点は、老後のお金に対する準備が進行している、もしくは完了していることです。2017年5月の調査からおよそ6年半の間に、日本の個人投資家のみなさまの間で、老後のお金の不安への対策が強まってきたことがうかがえます。

 質問2では、老後資金の準備を進めている方にどのような資産、運用商品によってまかなうかを尋ねました。2017年5月と同様、公的年金(52.60%)、預貯金(50.72%)、退職金(25.39%)、賃金(24.32%)などが多くの方に選択されました。

図:質問2

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 また、2017年5月に比べて投資信託(58.58%、+20.48ポイント)、株式投資(61.75%、+8.22ポイント)、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)(24.99%、+2.53ポイント)といった投資商品を選択した方の割合が高くなりました。

 質問1、2の結果より、この6年半に間に日本の個人投資家の間で老後のお金に対する不安への対策が強まり、その具体策に投資を用いる、という流れが本格化しはじめたことがうかがえます。

 質問3と4では、老後に毎月必要な資金の額(一人当たり)について尋ねました。質問3は最低限必要な金額(生活資金)、質問4は楽しく過ごすための金額(生活資金+ゆとり資金)でした。

図:質問3・4

※「未回答」を除く
出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 2023年12月の調査では、最低限必要な金額については15万0,001円~20万円が最も多く選択されました。2017年5月の調査と同様です。2017年5月は15万0,001円~20万円と25万0,001円~30万円に山がありましたが、2023年12月は全体的にグラフの形状はなだらかになりました。

 楽しく過ごすための金額については、30万0,001円~40万円が最も多く選択されました。2017年5月に最も多く選択された25万0,001円~30万円よりも上がった一因に、税金や社会保険などの金額が上昇したことが挙げられます。

 最低限必要な金額を確保するか、楽しく過ごすための金額を目指すか、老後の資金についての目的は人によってさまざまです。どちらを目的にするかで手段やそれにかかる資金の額、時間(期間)などが変わってきます。ご自身の目的を決めた上で、老後までの時間(期間)をiDeCoなどを上手に使って有効活用していくことが一計なのかもしれません。

 ここまで、「老後のお金、準備は進んでいますか?」というテーマで行った各種質問の回答結果をまとめました。今後もさまざまなテーマを用意し、個人投資家のみなさまのお考えを、伝えていきます。

為替DI:1月のドル/円、個人投資家の予想は?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示します。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 DIは「強さ」ではなく、「多さ」を測ります。DIは、円安や円高の「強さ」がどの程度なのかを示しているわけではないですが、個人投資家の相場観が正確に反映されていると考えるならば、DIの「多さ」は同時に「強さ」を示すことになります。

「1月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」

 楽天証券がドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の70%が「円高/ドル安」に動くと予想していることが分かりました。前月は53%でした。

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から34ポイント減少してマイナス40になりました。DIのマイナスは2カ月連続で、個人投資家の円高見通しが円安見通しよりも多いことを示しています。

※四捨五入の都合で合計が100にならない場合がある
出所:楽天DIのデータより筆者作成
出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

FRBはインフレに勝利したのか?

 FRB(米連邦準備制度理事会)が金融政策の運営にあたって課せられている法的使命は「物価の安定」と「最大限の雇用」を達成することです。これはFRBのデュアル・マンデートと呼ばれています。

 デュアル・マンデートを具体的な数字で示すならば、「物価の安定」とは、コアPCEの2%です。PCEとは個人消費支出の略で、米国の家計が購入した財やサービスを集計した経済指標のことです。

 そのうち変動の激しい食品とエネルギーを除いた数字をコアPCEと言います。「雇用の最大化」とは、失業率がNAIRU(非加速的失業率)の水準で、FRBはこれを4%と見積もっています。

 FRBの目標は、失業者を増やさずにインフレ目標を達成することです。失業率はレイオフやリストラを通してではなく、自然な人口動態と労働力の変化によって上昇させます。しかし、これは理想です。

 FRBはデュアル・マンデートのうちのひとつ「雇用の最大化」を達成して、あとは「物価の安定」、すなわち労働市場を動揺させることなくインフレ率を下げることだけです。

 CPI(消費者物価指数)は、昨年6月のピーク時から1/3に低下しました。しかし、下落の大部分はベース効果とエネルギー価格の下落のおかげです。ベース効果は1年後には消えていますし、エネルギーが今後も低価格で推移するという保証はありません。

 一方、コアPCEは1年前と比べてほとんど下がっていません。賃金上昇率は4.0%以上で高止まり、賃金と物価のスパイラルの脅威にも直面しています。FRBはインフレとの戦いに勝利したのかとの質問に対しては、もしFRBがCPIではなくコアPCEを重視しているならば、決してそうではないというのが答えです。

 マーケットでは米国の政策金利はピークに達し、FRBは来年から利下げを開始するとの見方が強まっています。しかし、利上げ終了と利下げは全くの別物です。長期間にわたる高金利の維持と、労働市場の大幅な調整の必要性が残っています。FRBの仕事はまだ終わっていません。

ユーロ/円

 楽天証券がユーロ/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の69%が「円高/ユーロ安」に動くと予想していることが分かりました。前月は48%でした。

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から42ポイント減少してマイナス38になりました。DIがマイナスになったのは2023年3月以来のことで、個人投資家の円高(ユーロ安)見通しが円安(ユーロ高)見通しよりも多いことを示しています。

※四捨五入の都合で合計が100にならない場合がある
出所:楽天DIのデータより筆者作成
出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

豪ドル/円

 楽天証券が豪ドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の67%が「円高/豪ドル安」に動くと予想していることが分かりました。前月は47%でした。

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から40ポイント減少してマイナス34になりました。豪ドル/円のDIがマイナスになったのは2023年3月以来のことで、個人投資家の円高(豪ドル安)見通しが円安(豪ドル高)見通しよりも多いことを示しています。

※四捨五入の都合で合計が100にならない場合がある
出所:楽天DIのデータより筆者作成
出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後投資してみたい金融商品」で「投資信託」「国内株式」「外国株式」「ETF(上場投資信託)」を選択した人の割合に注目します。各質問の選択肢は、ページ下部の表のとおり、13個です。(複数選択可)

図:「投資信託」「国内株式」「外国株式」「ETF」を選択した人の割合の推移

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 2023年12月の調査で、「投資信託」を選択した人の割合は52.65%(全回答者3,561名中1,875名)でした。「国内株式」は64.90%、「外国株式」は46.22%、「ETF」は32.69%でした。上図のとおり、2023年11月と12月に投資信託を選択した人の割合の上昇が目立っています。

 このタイミングで投資信託を選択した人の割合が大きく上昇した理由の一つに、1月から新NISAがスタートしたことが挙げられます。

 新NISAの「つみたて投資枠」を活用できる銘柄は、販売手数料ゼロ、信託報酬が一定水準以下、分配頻度が毎月ではないなどの金融庁の基準を満たした銘柄で、ほとんどが投資信託です。(280銘柄のうち投資信託が272本、ETFが8本。2024年1月4日(木)時点)

 長期視点の資産形成になじむ「つみたて投資枠」を活用したいと考えている投資家の方が、投資信託を選択した可能性があります。上記で示した四つの金融商品に属する銘柄のほとんどが、新NISAの「成長投資枠」を活用して取引できますが、今のところ長期視点の資産形成を目指し、投資信託に注目する動きが目立っていることがうかがえます。

「つみたて投資枠」を活用した取引の活況状況と投資信託を選択する人の割合には、関連がありそうです。引き続き、これらの動向に注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2023年12月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2023年12月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成