今年の注目ポイント5選!日米の金融政策や世界景気動向も

 まず、今年の注目ポイントを見ていきます。今年も米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)の金融政策が最大注目となりますが、これに加えて日銀の政策修正の動き、世界景気動向が為替相場を動かす主要因となると予想されます。そして、今年後半は夏場ごろから盛り上がる11月の米大統領選挙が最大注目材料となります。

(1)米国FRBの金融政策

 FRBの利下げがいつ始まるのかが市場の焦点となります。昨年12月のFOMC(連邦公開市場委員会)時点では今年3回計0.75%の利下げ見通しとなっていましたが、市場の予想は今年6回計1.5%の利下げとなっています。

 今後、この市場とのギャップがどのように埋まっていくのかが重要です。FOMCの見通しが市場予想に近づくのか、市場がFOMC見通しに近づくのか注目です。

 先週の米雇用統計が予想より良かったため3月から利下げとの見方が後退しましたが、雇用統計の評価も、労働参加率の低下や過去2カ月の雇用者数も大きく下方修正(7.1万人減)されており、その見方が分かれています。

 また、12月ISM非製造業景況指数の雇用指数が3年5カ月ぶりの低水準となったことから、労働市場の需給は堅調だと判断しきれない部分もあります。今後、米国物価や労働市場の動向をにらみながら利下げ時期を探っていくことになりそうです。

 ボスティック・アトランタ連邦準備銀行総裁は8日、「インフレは予想以上に低下している」と発言しました。この発言のように、物価低下がはっきりしてくれば、利下げ期待が高まり、ドル/円は頭の重たい展開が続くことが予想されます。

 ただ、円高は絶対的金利差や需給要因もあるため、円高の値幅は限定的との見方も多く、マーケットの円売り志向はまだまだ強いのは気になるところです。予想外の動きとなるのはマーケットの常ですので、柔軟な姿勢で臨む必要があります。

 また、FRBの保有資産縮小ペースを減速すべきとの議論も出始めており、ペースダウンとなれば、ドル売り要因となるため、その動向にも注意する必要があります。

(2)日銀の金融政策

 日銀の政策修正については、1月の金融政策決定会合での修正期待は後退しており、やはり、春の賃上げを見極めるまでは日銀は動きづらいと思われます。3月会合か、展望リポート(経済・物価情勢の展望)が公表される4月会合での政策修正期待が高まっています。

 あるいは、6月、7月会合の政策修正の見方もあります。それらの時期が近づくにつれて円高圧力が増すことが予想されます。それ以降になると、米国の利下げ時期と重なる可能性もあるため政策修正はやりづらい環境になるかもしれません。

 植田和男総裁は米国の政策に左右されることはないと否定していますが、政策修正見送りリスクは留意しておいた方がよいかもしれません。修正見送りは円安要因となります。

(3)世界経済動向

 世界銀行は1月9日、2024年の世界経済成長率見通しを公表し、2024年は2.4%と昨年の2.6%から低下し、3年連続で減速する見通しでした。米国は昨年の2.5%から1.6%と大きく減速する見通しとしています。

 この見通しのように今年は世界各国の2023年までの急速な利上げによる経済への影響がより鮮明になり、さらに中国は不動産市場の低迷が続き、景気回復も遅れ、世界経済は後退することが予想されます。

 また、世界経済後退による需要減によって原油は下落し、中国のデフレ輸出によって世界的に物価下落圧力が高まることが予想されます。世界経済後退と物価低下は、世界各国で利下げの流れとなることが予想されます。

 利下げ開始の時期や頻度によって、相対的に通貨の強弱が起こりますが、総じてドルは急速な利上げによるドル高の反動で上値が重たくなることが予想されます。

 留意したいのは、米国が景気減速となり、利下げをしても経済回復が鈍い場合です。その場合には失望感から市場が急変動することも予想されるため注意する必要があります。

(4)米大統領選挙

 今年前半はFRBの金融政策、後半は11月5日の米大統領選挙が最大の注目材料となります。トランプ氏が当選すると、世界の枠組みはがらっと変わる可能性もあるため、世界の投資マネーも夏場以降動きづらい環境となることが予想されます。さらに選挙によって米国内の分断が一層進めば、米国の信頼がなくなり、外交、経済に大きな影響が出てくることが予想されます。

 大統領候補が指名される夏場以降、選挙戦が盛り上がってきますが、複数の罪で起訴されたトランプ氏が立候補できるかどうかという問題もあります。米大統領選予備選が集中するスーパーチューズデーの前日、3月4日には米連邦議会占拠事件の初公判があります。裁判の行方に注目です。

(5)地政学リスク

 パレスチナ問題、台湾総統選が注目材料です。イスラエルのネタニヤフ政権の執拗なガザ地区への攻撃については国際世論で批判が高まっていますが、イスラエル国内でも批判が強まってきており、この批判をかわすために他国への本格的な攻撃を仕掛けはしないかと気になるところです。 

 中東の戦火拡大は、原油上昇、インフレ懸念再燃、米利上げ再開懸念となり、米金利上昇とともにドル高・円安シナリオが想定されるため注意する必要があります。ただ、戦果拡大は世界経済の減速懸念から、原油の上昇も一過性の可能性があることも予想されます。

 1月13日の台湾総統選は注目材料ですが、すぐに市場に影響が出ることは予想しがたいです。しかし、今後の米中関係、日中関係にどのような影響があるか注視する必要があります。