2024年の経済見通し:引き続きマクロ政策がカギ、GDP成長率は前年比約4.8%か

 BOCIは2024年の中国経済について、構造転換が進む中、さらに回復に向かうとみている。政府指導部は国内経済の移行期において、景気回復を目指すと同時に、目玉となる新たな成長ポイントの策定を目指していると指摘。2024年も緩和的なマクロ政策を継続する見通しを示した。一方の世界経済については、これまでの欧米の金融引き締めを受け、一段の下押し圧力にさらされるとの見方。米国が利下げに転じても、政治的不透明感や地政学リスク、政府債務の増大、世界のサプライチェーンの再構築といった要因が大きな不確実性をもたらすとしている。

 中国経済の成長力は十分とは言えず、2024年もマクロ経済政策が重要な役割を果たす見込み。BOCIは景気支援策と消費回復が経済成長を支えると予想。2024年の実質GDP (国内総生産)成長率については、前年比約4.8%との予測を示している(2023年予想は前年比約5.2%)。

 物価指標は2024年に、緩やかに底入れする見通し。CPI(消費者物価指数)上昇率は2023年に前年比で0.3%上昇した後、2024年も1.3%ほど上昇するとみる。PPI(生産者物価指数)は2023年に約3%下落した後、約0.4%の上昇に転じる見通しという。

 注目の不動産開発投資は、デベロッパーの資金調達環境が大きく改善しない限り、引き続き下押し圧力にさらされる見込み。「3大プロジェクト」(低価格の保障性住宅の建設、緊急時使用が可能な公共インフラ建設、都市部スラムの改造)による効果はある程度期待できるものの、不動産投資のプラス成長への転換は依然困難。2024年通年で、前年比8%減少する見通しを示した。半面、金融・財政政策の焦点となるインフラ投資と製造業投資に関しては、2024年も相対的に安定成長を維持するとみている。

 輸出については、2024年に前年比0.4%の縮小を見込む。中国の輸出に対する逆風は弱まる見通しだが、世界経済の減速やグローバルサプライチェーンの再構築を背景に、引き続きさまざまな問題を抱える可能性が高い。

 消費は2024年も引き続き、中国経済の成長エンジンとなる見込み。コロナ後の「リオープン」効果で急回復したサービス消費の一部は徐々に減速するとみられるが、消費全体の拡大余地は依然大きく、雇用や所得が回復ペースを左右する見通しという。

 一方、景気回復を目指す政策の下、一般財政赤字と地方債務はさらに拡大する見込み。ただ、金融リスクやモラルハザードを防ぐ見地から、一部先進国ほど大規模な財政赤字は想定されないとし、2024年の一般財政赤字は対GDP比で3.2%程度、地方政府特別債は4兆元前後になるとみている。

 金融政策においては、潤沢な流動性環境の維持や信用の拡大策を継続する可能性が高い。特定分野にターゲットを絞った構造的な金融政策が、国内経済の移行や金融リスクの緩和をさらに後押しする見通しという。