年末買われる銘柄は?
2023年も残り10日ほどです。FOMC(米連邦公開市場委員会)や、ECB(欧州中央銀行)理事会、日本銀行の金融政策決定会合といった重要イベントをクリアしたことから、海外の機関投資家の多くはクリスマス・年末休暇入りする時期です。
為替など外部環境に左右されがちな地合いではありますが、例年通りであれば、年末年始は、個人投資家中心の物色が強まる時期となります。
2023年は、これまで以上に配当利回りが高い銘柄が買われるなどNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)を意識した資金の流れがありました。2024年は新しいNISA制度がスタートしますので、個人投資家の動向は引き続き見逃せない需給要因となります。
12月27日に権利付き最終日を迎えることから、12月の期末配当もしくは中間配当による利回りの高い銘柄には、NISAに絡んだ買いが向かいやすいでしょう。また、東京証券取引所がPBR(株価純資産倍率)の低迷する上場企業に対して改善策を開示・実行するよう要請していることから、低PBR銘柄にも引き続き関心が向かうでしょう。
掉尾の一振:東証グロース市場の見直し買いに期待する理由
ですが、今回、お伝えしたいのはこうした銘柄ではありません。日本の株式市場では「掉尾の一振(とうびのいっしん)」という相場格言が存在します。掉尾の一振とは、年末最後の売買日となる「大納会」に向けて株価が上昇する様子を示す相場格言です。
日経平均株価が年末にかけて上昇するケースを指すこともあれば、東証プライム市場の銘柄よりも東証グロース市場の中小型株が上昇することを意味するケースもあります。
NISAに絡んだ買い需要は、高配当銘柄や低PBR銘柄に回りやすいかもしれませんが、2023年の年末年始は、東証プライム市場よりも出遅れている東証グロース市場の中小型株が見直される展開を想定します。各国の中央銀行が金融政策を転換する可能性が高まっていることから、今後長期的な円安トレンドが是正される可能性が強いからです。
12月に入って、FRB(米連邦準備制度理事会)は2024年に3回程度の利下げ(0.75%)を見込む発表を行いました。また、ECBも、政策金利の追加引き上げの可能性がほぼなくなっています。
日本の金融政策正常化はまだまだこれからですが、2024年のどこかのタイミングでは実施する公算が大きいことから、日本の金利もじりじりと上昇する可能性があります。つまり、円安の源泉ともいえる「日本と各国との金利差」は縮小する傾向が今後強まるわけです。
輸出関連銘柄など大型株への追い風だった円安が転換することで、物色の対象は「外需株→内需株へ」大きく変わるでしょう。今後は、円高メリットのある中小型株を中心に見直し買いが向かう地合いを想定します。
そこで、今回は、掉尾の一振が期待できそうな銘柄として、東証グロース市場の主力20銘柄で構成する「東証グロース市場Core指数」の中から5銘柄をご紹介します。
東証グロース市場Core指数は、東証グロース市場に上場する内国普通株のうち、上場時価総額、流動性を考慮して選定する20銘柄により構成される指数です。市場の実態をより的確に反映するため、構成銘柄の定期入れ替えを毎年1回(10月)に行っています。
2023年12月14日に東証グロース市場で時価総額トップだったビジョナル(4194)が東証プライム市場に移行したことから、現在は19銘柄で構成されています。いずれの銘柄も国内を中心にサービスを展開しており、為替の影響は受けにくい事業を手掛けています。個人投資家を中心とした年末年始の中小型株物色の核になると考えます。
年末の上昇に期待!中小型株5選
銘柄名 | 証券コード | 株価(円) (12月20日終値) |
ポイント |
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カバー | 5253 | 2,726 | 2023年VTuberランキングで同社所属VTuberが年間トップ |
弁護士ドットコム | 6027 | 4,295 | 法務部門の人材不足にマッチした事業拡大中 |
アドベンチャー | 6030 | 5,620 | 円高メリット銘柄として早くも見直しの動き |
GENDA | 9166 | 2,827 | 業績好調で上場来高値更新にトライ |
ispace | 9348 | 846 | 国が支援する宇宙事業は夢では終わらない |
カバー(5253)
VTuber事務所「ホロライブプロダクション」の運営や、メタバースなどバーチャル領域のビジネスを展開しています。2023年12月15日終値ベースの東証グロース市場の時価総額では2位にランクインしています。
ライセンス事業とグッズ販売などが好調に推移しています。また、2023年で最もスーパーチャット(投げ銭のこと)を集めたVTuberランキング(韓国企業発表)では、同社事務所所属の「博衣こより」さんがトップとなりました。
2023年3月に上場した後の株価は、下値をじりじりと切り上げる右肩上がりの展開となっています。同年12月1日の上場来高値3,325円を上抜けると、高値更新に伴う需給面を材料とした買いも期待できます。
弁護士ドットコム(6027)
日本最大級の企業法務ポータルサイト「BUSINESS LAWYERS」の運営や、電子契約クラウドサインなどを展開しています。BUSINESS LAWYERSの会員数がサービス開始から7年で10万人を突破するなど、企業の法務関連の人材不足のニーズをうまく取り込んでいることから、2024年4-9月期業績は、前年同期比で二けたの増収増益となりました。
株価は、2020年10月の上場来高値1万5,880円以降、緩やかな右肩下がりが続いていましたが、2023年3月16日の年初来安値2,222円をボトムに反発しています。まずは、同年11月8日以来の5,000円台回復を目指したいところです。
アドベンチャー(6030)
格安航空券予約サイト「スカイチケット」を運営しています。為替市場で円安が進行したことから、海外旅行に行く日本人数の伸び悩みが業績の下押し要因でしたが、円安一服を受けて、足元で見直す動きが強まっています。
訪日外国人数は、2023年10月の数字が2019年同月を上回る水準となりましたが、同社は国内サービスが主力のため、インバウンド関連銘柄の物色の対象外となっていました。足元の円高・ドル安を材料に年初来安値圏からのリバウンド相場に期待します。
GENDA(9166)
アミューズメント関連を手掛けており、2023年12月15日終値ベースの東証グロース市場の時価総額では5位にランクインしています。2023年2-10月期の営業利益を41.64億円と発表しました。国内のアミューズメント施設運営で人流の増加や新規店舗の積極的な出店などが奏功しました。
2024年1月期の営業利益予想は、前期比17.8%増の50.00億円と据え置きましたが、進捗(しんちょく)率は既に8割を超えていますので、業績見通し上方修正への期待感があります。上場来高値3,285円を上回ってくると、高値更新に伴う需給面を材料とした買い優勢の地合いも想定できます。
ispace(9348)
宇宙事業を手掛けており、赤字額は徐々に減少しています。2023年11月には、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」のミッション2で月に輸送する予定のマイクロローバー(小型月面探査車)の最終デザインを公開しました。
ミッション2は最速で2024年冬の打ち上げを計画しており、ミッション1で得た成果を踏まえた月着陸船の設計・技術、月面輸送サービスおよび月面データサービスの提供という事業モデルの検証を強化する目的を掲げています。
経済産業省が行った「SBIR(中小企業イノベーション創出推進事業)」の枠組みにおいて、最大120億円が交付されることが決まりました。同社の宇宙事業は「夢」だけではなく、その実現に向けて国が支援していることから注目します。
2023年の上場後は、需給面への不安がありましたが、大株主が売却できないロックアップ期間が終了(2023年10月8日)してから2カ月ほど経過していますので、需給面への警戒はだいぶ和らいだといえます。上場来安値圏からの見直し買いに期待します。