マグロの初セリ。1億5,000万円から700万円に大暴落

「大丈夫。傾向と対策です。あなたが奥さんとひとまずうまく付き合っているように、きちんと理解すれば、気を付けられるようになります。それに、バブルを理解すると、なぜ、長期で投資に臨むほうが、あるいは、積立投資のように長期にわたって時間を分散する投資のほうが、結局は成績がよいのか、リターンを得やすい理由が腑に落ちるはずです」

<リターン>という言葉で、隆一は身を乗り出した。

「では、どこから話を始めましょうか。まず、株式や不動産への投資に限らず、モノの値段は、その時々の市場での需要(買い)と供給(売り)によって決まっていきます」

「先生、さすがにそこは私もわかります。モノの値段が、需要と供給が一致したところで決まることくらい、高校生でも知っていますよ。どの教科書にも書いてあるじゃないですか」

「失礼。さて、ここからが肝心です。その需要と供給の特徴です。需要は、実際に消費するための<実需>からだけ、生まれるわけではありません。何かの理由でどうしても欲しければ、どんな値段でも買うかもしれません。ここで私たちが説明に使うのが、『価値(Value)と価格(Price)とは違う』という言葉です。ところで、マグロは好きですか?」

「そりゃ、好きです。特に中トロなんて最高ですね。もっぱら回転寿司ですが」

「ええ。私も好物です。そのマグロですが、市場のセリで値段が決まりますよね。覚えているかもしれませんが、2013年の初セリで大間のマグロに1尾1億5,540万円の高値が付いて話題になりました。すしチェーン『すしざんまい』と香港資本の『板前寿司』が競い合った結果でした。しかし、翌年の初セリでは同様のマグロが1尾736万円でした」

「ありましたね、そんなこと。同じマグロでも、その時々によって、値段は大違いですね」
 隆一は、当時のニュースをぼんやりと思い出しながら、ぼんやりとした返事をした。

「この価格差に、違和感を覚えませんか? 翌年のマグロが前年に比べて、大きさや味で極端に劣っていたわけではないはずです。20倍以上の差がつくほどにはね。つまり、実質的な価値とは別に、価格というのは市場で決まる、ということです」

「味は食べてないのでわかりませんが、大きさが20倍も違うなんてことはないでしょうしね。話題づくりとはいえ、ずいぶん釣り上げたもんですね」

「釣り上げる、という表現はおもしろいですね。欲しい人の熱量次第で価格というものは変化していきます。株価も同様です。対象となる会社の収益力や保有する財産などの価値だけで決まるわけではありません」

「なるほど、マグロのセリと同じというわけですね」