儲けている人の仲間に入りたい

 先生の話が一段落したところで、隆一は一番聞きたいことをおもむろに持ち出した。

「先生、日本でも儲かった人がそれなりにいるなら、私もその仲間に入りたいと思うのですが」

「そうでしょうね。そうでなければ私を訪ねてはこなかったでしょう」

 欲が出すぎてしまったかと思い、「いや、勉強させていただきたいと思いまして・・・・・・」と、隆一は「勉強」という言葉をことさらに強調した。

「あなたは、まず、2つのことを理解しなければいけません。1つは、投資にしろ、トレードにしろ、それは丁か半か、上がるか下がるか、という『当てもの』ではないということです。正確な情報と確立された理論か信頼できる経験知にもとづいて分析して、リスクをとるということです」

 隆一は身を乗り出していた。難しい話になりそうだと思う一方で、知りたい儲け方の話には近づいてきたと思ったからだ。

「利益を上げようとすれば、それなりの情報収集や勉強と訓練が必要になります。しかし、いくら情報を集めても、いくら分析しても、利益が出るか否かは将来のことですから、必ず予想した結果になるとは限りません。だから、利益になるか損失になるか不確定な将来にむけて、今、決断するという意味でのリスクテイクも必要になります。」

「情報収集、勉強と訓練、それにリスクテイクですか・・・」

 隆一はふと、学生時代に抜き打ちで難しい長文英語のテストを出されうなだれたときのことを思い出し、やはり自分には無理ではないかという思いがこみ上げてきた。

 隆一の様子を見慣れた光景のように先生は、話してくれた。

「不安にさせるようなことを言ってしまったようですね。確かに、投資を体系的に学ぶことは簡単ではありませんが、これまで私のところにきた中で一人の脱落者もいませんよ。私の講義が終わるころには、投資のことが腑に落ちているはずです。それほど心配をする必要はありません」

 その言葉で隆一の気持ちはいくぶん明るくなった。

「先生、それではこれから毎週金曜日の夜7時にお邪魔してもよろしいですか」

「それはいい心がけですね。世間が花金で飲んでいる時間帯にちゃんと来られますか」

「先生、何度も言っていますが、私は本当に投資のことを体系的に学びたいのです」

「わかりました、ではまた来週お待ちしています。次回は資本主義の仕組みについて学びましょう」

 足取り軽く、隆一は新橋の飲み屋街を気にすることなく、家路についた。

第5話:「資本主義より、マシな仕組みがないだけ」を読む

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