「先生、私はもっと投資のことを知りたいのです。投資をちゃんと<体系的>に理解することで、人生がハッピーになると思うのです。こんなことを妻に言うと投資なんてギャンブルと同じでしょ、と取りつく島もありませんが・・・」

 隆一は、なんとなく気になっていた<体系的>という言葉をつい持ち出していた。

 ただ、先生の反応も
「投資とギャンブルの違い、そこを理解することはとても大切ですよ」
と上々のようだったので、隆一は続けた。
「そうなんですか、妻を説得したいのでぜひ教えてください」

「では、あなたは投資を友達に説明することができますか?」
 逆に先生に質問され、隆一は返事に詰まった。

 投資に対しては、株の上げ下げでそれが儲けるとか、損をするとか、という程度で深く考えたことはなかったからだ。周りの友達もおおかた隆一と同じレベルで投資のことを考えているように思う。

 先生は続けて、
「むろん、投資はギャンブルとまったく違いますよ。私の言う『投資』は、株式やFXの短期回転売買とも違います。株式の短期回転売買で利益を得ようとする営みを『トレード』とよんでいますが、投資、ギャンブル、そしてトレードが、どう違うのか説明しましょう。あなたは少しお酒を飲んでいるようですが、大丈夫ですか?」

 隆一はお酒を飲んでいることを指摘され、どきっとしたが、もうほとんど酔いは冷めて来ており、先生の話についていこうと決めていた。