2024年の業界見通し:新車販売減速へ、一段の価格競争激化で採算性悪化も
中国の2023年通年の新車販売台数は過去最高を記録する見通しだが、BOCIは続く2024年について、販売伸び率の減速を予想。価格競争の一段の激化が業界全体の採算性に影響するとみている。自動車メーカーの多くがサプライチェーンや技術レベルの向上によるコスト削減戦略を打ち出す中、2024年は個別のコスト管理能力やその成果を検証する年になるとの見方。さらに都市NOA(ナビゲーション・オン・オートパイロット、運転支援システムの一種)機能が全国展開されるのに伴い、2024年には自動運転機能に対する消費マインドが一気に上向く可能性を指摘し、この分野のリーディング企業に恩恵が及ぶ見通しを示した。ただ、需給の緩みから、自動車株のボラティリティはさらに高まると予想。個別銘柄では、完成車メーカーの小鵬汽車(09868)と理想汽車(02015)、部品メーカーの福耀ガラス(03606)を選好している。
BOCIによると、2023年の新車販売台数は前年比11.3%増の2,990万台(うち乗用車は9.8%増の2,590万台)と、市場の予想を上回る見込み。ただ、2024年には価格競争が激化する上に、乗用車の販売台数が前年比3%程度の伸びにとどまり、業界全体の総売上高が減速する見通しという。うち新エネ車(NEV)の販売台数に関する予測は20-25%増の1,100万台。最近ではリチウム炭酸価格(リチウムイオン電池の原料)が軟化しているとはいえ、価格競争がさらに激化すれば、業界全体の採算性は悪化することになる。
中国のNEV市場では競争激化を背景に、価格帯ごとの勢力図が変化しつつある。ローエンドは安定的だが、10万-20万元の価格帯では最大手BYD(01211)の圧倒的優位が若干揺らぐ可能性が出てきた。また、NEVの浸透率が最も高い20万-30万元の価格帯では、上位のテスラとBYDに対抗するその他メーカーが混戦状態となる見込み。一方、30万元以上のハイエンドクラスでは、NEVへの移行はスローペース。EV3大新興メーカーの一つである理想汽車と、有力ハイテク企業ファーウェイが協業する「AITO」との競争が焦点となるが、現時点では穏やかな競争環境下にある。
都市NOAの全国展開に伴い、2024年には自動運転機能に対する消費者の受容度が大きく上向く見込み。「AITO」のシステム開発へのファーウェイの参画は、従来型メーカーが自動運転競争に参入する上で一つの方法を示しているが、BOCIは反復データの最適化やエンジニアリング作業管理における信頼性と効率性の点から、全面的な自社開発方式のほうがやはり優位にあるとの見方だ。
一方、中国の主要NEVメーカーは海外市場の開拓を強化しており、2024年には世界最大の自動車輸出国としての中国の地位がさらに高まる見込み。ただ、BOCIは中国各社の持続的なグローバル化の可能性を見極めるために、世界NEV市場における販売構成の構造的変化に目を向ける必要があると指摘している。