「電子帳簿保存法」って何?
皆さんは、「電子帳簿保存法」をご存じですか? 会社勤めであれば、会社から説明があったという方も多いでしょうし、経営者であれば顧問税理士から話を聞いて知っているという方も多いでしょう。
ただ、筆者の周りの経営者仲間に話を聞くと、全くと言ってよいほど知らない人が多く、正直「年明けから始まるのに大丈夫かな?」と心配してしまいます。
電子帳簿保存法について一から説明すると膨大な分量になってしまいますので、読者の皆さんに最低限知っておいていただきたい点に絞ってお伝えしたいと思います。
足元で話題となっているのは、電子帳簿保存法のうち「電子取引」と呼ばれるものです。請求書、領収書、見積書、契約書などの取引関係書類が電子的に交付された場合、それを紙で保存することは許されず、電子データのまま保存することが求められます。
ですから、例えば皆さんが仕事上、相手先との請求書、領収書、契約書などのやり取りを電子取引で行っている場合は、それらのデータは電子データのまま保存しなければならないのです。
法人だけでなく個人事業主も対象
そして、この規定は全ての法人のほか、個人事業主も対象となります。対象除外となる例外規定もありません。
例えば筆者の顧問先で、90歳近い高齢者の方が1人でやっている法人であったり、80代の夫婦で不動産賃貸業を営んでいる個人事業主の方がいらっしゃるのですが、いくらご高齢であっても、電子取引については紙での保存は一切認められず、電子データとして保存しなければならないのです。
今では80代の方も普通にメールでのやりとりをしていますし、そこにファイルを添付することもあります。また、最近ではクレジットカードの明細も紙ではなくパソコンでダウンロードが必要になっていますし、通帳も紙の通帳ではなくWEB通帳が普及していますが、これも電子取引データですから電子データとして保存しなければなりません。
高齢者であっても、零細企業であっても、個人事業主であっても、例外なく電子取引データは紙ではなく電子データとしての保存が強要される、これがもう間もなくスタートするということの重大さにぜひ気づいていただきたいと思います。
対応が難しければ緩和措置や猶予措置で乗り切ることも可
また、電子取引データの情報を電子データとして保存するためには、例えば市販のソフトやクラウドサービスを使ったり、事務処理規程を社内で設けるとともに、検索機能を付して保存するなど、中小零細企業や個人事業主にはかなりハードルが高い条件が付されています。
そこで、例えば2期前の売上高が5,000万円以下の事業者であったり、電子取引データをプリントアウトして日付および取引先ごとに整理している場合は、税務署からの電子取引データのダウンロードの求めに応じることができるようにしていれば、検索機能要件は不要とされています。
また、そもそも人手不足や資金不足といった理由により、令和6年1月から対応することが難しい場合は、税務調査の際に、電子取引データのダウンロードの求め、そして電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めに応じることができていれば、単に電子取引データを保存しておくだけでよい、という猶予措置が設けられています。
ですからさまざまな要件を満たすことは到底無理、という事業者の方は、最低限、電子取引データをしっかりと保存しておくことだけは行うようにしてください。
(参考:国税庁ホームページより)
令和6年1月からの電子取引データの保存方法
電子帳簿保存法
株式投資関係の書類は電子的な保存が必要?
ところで、株式投資関係の書類、例えば売買をした際に証券会社から電子的に発行される取引報告書などについても電子的な保存が必要なのでしょうか?
(なお、以下については国税庁HPの一問一答などを見ても明確な記載がないため、電子帳簿保存法の趣旨を鑑みた上での筆者の見解にとどまる点をご了承ください)。
まず、個人については、通常は株式投資の売買は、譲渡所得を構成するものであり、事業として行っているわけではありません。よって、電子的に発行される取引報告書を電子データとして保存する義務はないと考えられます。
ただし、株式投資の利益が事業所得や雑所得に該当するような場合は、事業に関する取引の報告書に該当しますから、これが電子的に発行されているのであれば、電子データのまま保存することが求められると思われます。
また、法人にて株式投資をしている場合は、取引報告書などの書類は株式投資の利益の計算、ひいては税額の算定の根拠資料になりますから、これらが電子的に発行された場合には、電子データのままでの保存が必要になるものと思われます。
もう間もなく本格スタートする電子帳簿保存法、必要な方はしっかりと事前対応をしておくことを強くお勧めします。