11月の貿易統計:輸出の小幅増も先行き不透明、世界景気減速とチェーン再構築で

 税関総署の発表によれば、中国の2023年11月の輸出は前年同月比0.5%の微増となり、前月の同6.4%減から小幅のプラス成長に転じた(米ドル建て、以下同じ)。半面、輸入は同0.6%減と、前月の3%増から後退。その結果、11月の貿易黒字は684億米ドルと、前月の565億米ドルから拡大し、前年同期比でも4%増(前月は同31%減)に転じた。

 11月の輸出の復調は主に、前年同月実績の低さというベース効果と、世界の製造活動の緩やかな改善傾向によるもの。ただ、過去2年間の年率平均では、11月の輸出は5.1%減と、前月の4.1%減から下げ幅を広げる形となった。需要面においては、世界の製造活動は緩やかに回復し、グローバル製造業PMI(購買担当者指数)は11月に49.3と、10月の48.8から上昇している。構造面では、米国の総輸入額に占める中国のシェアは9-10月に約15%と、7-8月の14%、5-6月の13.4%から上向きに推移した。

 11月の輸出を地域別に見ると、米国、インド、台湾向けが前年同月比5.6%増、7.6%増、5.5%増と、前月の5.6%減、3.4%増、3.6%減から改善。東南アジア諸国連合(ASEAN)向けも減少幅が縮小したが、EU(欧州連合)向けは15.2%減と前月の10.6%減から下げ幅を広げた。

 品目別では、自動車、電子製品の一部、家具の輸出が増加。中でもスマートフォンとIC(集積回路)の輸出が54.6%増、12.4%増と、高い伸びを示した(前月は同21.9%増、15%減)。自動車輸出は10月に44.9%増加した後、11月は27.9%増。半面、玩具(19%減)をはじめ、労働集約型製品の輸出は引き続き低調だった。

 BOCIは今後の輸出動向について、12月にはさらに伸びが加速すると予想。その結果、2023年通年の輸出が前年比約4.5%減となる見通しを示した。続く2024年に関しては、世界経済の減速やグローバルサプライチェーンの再構築といった複数のマイナス要因に直面するものの、2023年に比べれば、逆風は和らぐとみる。その三つの理由のうち一つは、人民元相場の安定化により、米ドル換算した場合の目減りが縮小する可能性が高いこと。二つ目は米中関係に改善の兆しがみられること。世界の総輸出額や先進国の輸入額における中国のシェアの低下が、前年より緩やかなペースとなる見通しという。三つ目は米製造セクターの在庫投資の増加と世界の製造活動の改善が短期的に輸出を後押しする可能性があること。ただ、それでも、世界経済の減速と産業チェーンの競争激化という問題が存在する以上、さほど楽観的にはなれないとし、2024年通年の輸出について、前年比0.4%減を予想している。

 一方、輸入は11月に小幅の減少に転じ、市場予想を下回った。BOCIは内需の不足を反映しているとの見方。2024年の輸入については前年比1%前後の小幅のプラス成長を見込み、その理由として、主にPPI(生産者物価指数)の回復と一部製造セクターの在庫積み増しの可能性を挙げている。