対ユーロと対ポンドで円高に、円高圧力が対ドルに波及も
12月1日のニューヨーク外国為替市場で1ドル=146円台のドル安円高になったことは、対ユーロや対ポンドのクロス円でも円高になったことも要因と思われます。
11月29日の最初の146円台の時は、対ユーロで1ユーロ=161円台でしたが、12月1日の2回目の1ドル=146円台になった時は、1ユーロ=159円台でした。対ユーロで2円ほどの円高となり、対ポンドでは1円ほどの円高となりました。このクロス円での円高圧力が対ドルで1ドル=146円台の円高水準にしたようです。
対ユーロの方が対ポンドよりも円高幅が大きかった背景には、1日にフランス銀行(中央銀行)のビルロワドガロー総裁が来年の利下げに言及したことがユーロ売りに影響したようです。ビルロワドガロー総裁は、ユーロ圏はディスインフレのプロセスが「予想以上に速い」との認識を示し、「何らかの衝撃が起きない限り、利上げはもはや完了した」と発言しています。そして、2024年のある時期が来れば、利下げの問題がでてくるかもしれない。」と述べています。
また、5日には、ECB(欧州中央銀行)でタカ派のシュナーベル専務理事がユーロ圏のインフレ率が予想より早く縮小しているため、今後、追加で利上げする可能性は低いと発言しました。シュナーベル氏が姿勢を弱めたことから2024年3月にも利下げを始めるとの観測が強まりました。
14日のECB理事会に向けて一気に利上げ打ち止めから利下げ期待が高まれば、ユーロ安がさらに進むことが予想されます。ユーロ安円高がさらに進めば、ドル相場も1ドル=146円台から1ドル=145円台へと円高圧力が波及してくることが予想されます。ユーロやポンドの買戻しが鈍ければ、ドルの戻りも鈍くなることが予想されるため、クロス円の動きを注視する必要があります。
米雇用統計が市場想定通り改善なら、ドル絶好の売り場か?!
今週はさまざまな米雇用指数が発表されます。5日の10月雇用動態調査(JOLTS)求人件数、6日の民間調査会社による11月ADP雇用統計、7日には前週分新規失業保険申請件数、そして8日には本命の米11月雇用統計が発表予定です。
米自動車メーカーのストライキの影響がなくなったことから、11月は前月より改善するとの見方が優勢ですが、この見通し通りなら、早期利下げ期待は後退し、金利は上昇、ドルの買戻しが入りやすくなります。パウエル氏の発言で前のめりになった分だけ反動も大きくなるかもしれません。
しかし、今回のドル安相場で売りそびれた投資家にとっては、クリスマス休暇や年末も控えていることから、ドル高に反発すれば絶好のドルの売り場となるかもしれません。
5日に発表された10月雇用動態調査(JOLTS)求人件数は、873.3万件と市場予想の930万件を下回る結果となりました。米10年債利回りは4.1%台に低下して、ドル売りとなりました。引けにかけてドルは1ドル=147円台に買い戻されましたが、ドルの上値は重たい展開が続いています。