製品価格が過去半年間の低迷を脱却、10-12月期に大幅な業績回復期待

 中国国内のセメント価格は半年間にわたって下落した後、9月半ばに上向きに転じた。BOCIは価格の回復傾向が年内続くと予想。個別銘柄の2023年10-12月期の単位当たり粗利益について、前四半期比59-240%増との見通しを示した。クリンカー(セメントの中間製品)在庫の高止まりがセメント価格の重しになるとしながらも、2024年には石炭調達価格の軟化が利益成長を後押しするとの見方。年初からの株価の調整を理由に、一部銘柄が利益回復期待の投資選択肢になり得るとした。セクター全体の先行きに対して強気のレーティングを維持し、個別では中国建材(03323)を最有力視している。

 BOCIのカバー銘柄である安徽コンチセメント(00914)、中国建材、華潤セメント(01313)の7-9月期の純利益は、前四半期で44-86%減少した。セメント価格の下落を受けた単位当たり粗利益の縮小が響いた。

 ただ、BOCIは主に需要サイドに目を向け、10-12月期の大幅な業績回復を見込む。まずは地方政府の特別債発行規模が7-9月期に前四半期比22%増の1兆1,500億元に達し、これが10-12月のインフラ建設プロジェクトに振り向けられる見通し。さらに中央政府は1兆元の国債増発に動いており、うち半分が10-12月の自然災害防止・復興プロジェクトに投下される見込み。インフラ投資の加速はセメント需要の拡大につながる。

 国内のセメント価格は半年間の低迷を経て、9月半ばに上向きに転じた。一般炭価格の軟化もあり、セメントメーカーの粗利益は前月比で大きく改善する見込み。安徽コンチセメントと中国建材の10-12月期の単位当たり粗利益について、BOCIはそれぞれ前四半期比59%増、240%増を予想している。

 一方、クリンカー在庫の高止まりは、短期的にセメント価格の上値を抑える要因。BOCIはそれでも、一般炭平均価格の下落を受け、2024年の粗利益が個別に前年比9-49%増加するとみている。

 中国のセメント業界はすでに、2018-21年の高成長期を過ぎ、供給過剰体質を抱えた一種の斜陽産業となりつつある。従って、一般炭価格の下落以外の要因で、この先長期的に大幅な業績拡大を維持することは困難。また、縮小傾向を続ける不動産開発投資にも、今のところ回復の兆しは見られない。中国政府はセメント業界を炭素取引に含める計画。これが実現すれば、旧式設備の削減につながるものの、BOCIは排出基準の設定方法に関する意見の不一致を理由に、2024年の実現は難しいとの見方だ。

 BOCIは年初来の値下がりで、セメント銘柄のPBR(株価純資産倍率)が歴史的低水準にあると指摘。大幅な利益回復見通しを理由に、リスク・リワードの視点から投資チャンスを指摘した。セクター全体に対して強気のレーティングを継続し、個別では中国建材と安徽コンチセメントの株価の先行きに対して強気見通しを付与している。