国内豚肉価格が10月に36%下落、供給過剰で2024年まで軟調推移か

 豚肉価格の下落を背景に、中国の豚肉産業チェーンの2023年7-9月期決算は総じて低調だった。10月の平均価格が前年同月比36%下落するという状況下で、製品価格、採算性の両面から予想を大きく下回り、2023年の消費セクターの中でほぼ最弱の様相となった。BOCIはこの先、需要期を迎えるにつれ、豚肉価格が上向く可能性を指摘しながらも、業界サイクルは基本的に低調に推移するとの見方。当面は川上価格の低迷で、川下企業に恩恵が及ぶ見通しを示した。香港上場のH株銘柄の中では、豚肉生産の世界最大手である万洲国際(00288)を戦術、ファンダメンタルズの両面から有力視している。

 国内の豚肉価格は新型コロナ感染が全国的に広がっていた2022年12月に転換点を迎え、この段階で1kg当たり30元を割り込んだ(農業農村部調べ)。コロナ規制の撤廃による社会・経済活動の再開後も、飲食需要の伸び悩みで価格動向はさえず、2023年5月に再びマイナス圏に転落。6月にはさらに下げ幅を広げた。7月には前月比で上向いたものの、10月には月平均で1kg=21.85元に沈み、前年同月比36%下落している。

 需要の低迷だけでなく、供給増も豚肉価格の下落を招いた要因。豚肉価格が急騰し始めた2022年6月頃から養豚業者が一斉に生産増強に動いた。2021-22年に豚肉価格が急落した際に小規模業者が撤退し、業界の企業化が進んだことも供給過多の一因になった。

 BOCIは短期的に、豚肉価格の大幅反発は期待薄との見方。2024年上期まで、金額、前年同期比変動率の両面で、軟調に推移するとみる。2023年8月の食用豚の頭数は4億4,200万頭と、アフリカ豚熱が発生した2018年まで数年間の平均値を上回る数字。また、母豚(種豚)の数も4,200万頭と、過去の実績に対して相対的に多い。BOCIは養豚業者による繁殖効率の向上や、子豚の成育期間が約10カ月である点を考慮し、供給量は2024年下期まで高水準を維持するとみている。

 BOCIはセクター全体に対して、中立のレーティングを付与し、現時点では産業チェーンの川下と川上が明暗を分けると指摘している。川上の養豚事業者の苦戦が10-12月も続く半面、下流の食肉処理部門は需要と設備稼働率の改善を受けた採算性の向上が期待できるとの見方。個別では中糧家佳康食品(01610)の株価の先行きに対して中立、万洲国際に関しては強気の見通しを付与した。うち米中双方で事業を展開する万洲国際に関しては、国内業界動向の影響は中立的との見解。国内で手掛ける食肉製品(加工肉など)事業にプラスとなる半面、米中の豚肉価格差の縮小が輸入事業の需要減を招く可能性があるとした。米国の川上事業の底入れと、米子会社スミスフィールド・フード(13年に買収)の分離上場の可能性がこの先焦点になるとしている。

 セクター全体のレーティング面のリスク要因として、豚感染症の再発や豚肉を含む動物性たんぱく製品の需要減、飼料価格の高騰、貿易摩擦の激化などの可能性を挙げている。