首脳外交の意義と限界
このように、11月11~17日に米サンフランシスコで開催されるAPEC経済リーダーズウイーク、および一連の会議、サミットに際して、首脳会談を実現するための「地ならし」が着実に行われてきた経緯が見て取れます。そして、「中国経済、米中対立、台湾有事」のロジックに基づいていえば、これらのプロセスは、景気回復を目指す中国経済にとって「追い風」を、台湾海峡を巡る地政学にとっては「安定剤」を意味するのは疑いないでしょう。
実際に私が掌握する限り、米中当局は首脳会談の実現を前提に各種調整を続けているのが現状です。来週中には、「結果」がお披露目されることになるでしょう。
直近の訪米期間中、王毅外相は、今年米中関係が経験した紆余(うよ)曲折から教訓をくみ取るという観点から米中は、
- 両国首脳間の合意を順守する
- 両国関係を安定化する
- 円滑な意思疎通を保持する
- 矛盾や摩擦を管理する
- 互恵的協力を推進する
という5つを成し遂げていかなければならないと主張。また、「サンフランシスコへの道のりは平坦なものではなく、自動運転で実現できるものではない」という中国政府の現状認識を示しています。中国政府としては米国との関係は改善したい、それが外部環境、国内経済を整えることにつながるからだ、という明確な認識を持っているのは間違いありません。
一方でより根源的な国家戦略、世界戦略という意味でいえば、3期目入りした習近平政権は依然として、米国は中国の発展を封じ込めようとしている、中国の体制を転覆しようとしていると考えている。一方の米国も、中国は既存の国際秩序を変えようとしている、米国の覇権に挑戦しようとしていると考えている。
要するに、両国間の相互不信が根本的に解決する局面は考えづらく、それは、今回首脳会談が実現しようがしまいが末永く続いていくということです。人権、先端技術、地政学、台湾、経済、軍事、イデオロギー・価値観…といった各分野での攻防は常に米中関係の前に横たわり、状況次第でそれらは顕在化したり、鎮静化したりします。
日本としても、そんな米中関係を辛抱強く見て、粘り強く付き合っていくことが求められるでしょう。
ただ、何はともあれ、昨今、日本を挟む米中二大国が対話を重視し、ハイレベル協議を重ね、交流や往来を促し、首脳会談の実現に向けて尽力している現状は、日本としてもウエルカムと言えるでしょう。
中国経済、米中対立、台湾有事。
どれをとっても、日本の将来の生存と発展に死活的影響を与えるのは必至なのですから。