肝心なのは成長率そのものではなく中身と実態。中国経済の「日本化」リスクは拭えず

 第3四半期の成長率そのものは市場予想を上回ったわけですが、「高いレベルの発展」を掲げている習近平政権にとって、より重要なのは経済の中身と実態であるはずです。

 同日に発表された、その他の主要経済統計を整理してみました。9月の数値を見ると、徐々にではあるが上向き傾向にあった工業生産は伸び率を維持、夏休みから国慶節休暇にかけて上昇が期待されていた個人消費は伸び率が一定程度上昇(国慶節休暇ボーナスという意味では10月の数値に要注目)となっています。

2023年第2四半期以降の主な経済指標

  9月 8月 7月 6月 5月 4月
工業生産 4.5% 4.5% 3.7% 4.4% 3.5% 5.6%
小売売上高 5.5% 4.6% 2.5% 3.1% 12.7% 18.4%
固定資産投資
(1-9月)
3.1%

3.2%
(1-8月)

3.4%
(1-7月)

3.8%
(1-6月)

4.0%
(1-5月)

4.7%
(1-4月)

不動産開発投資
(1-9月)
▲9.1%

▲8.8%
(1-8月)

▲8.5%
(1-7月)

▲7.9%
(1-6月)

▲7.2%
(1-5月)

▲6.2%
(1-4月)

調査失業率
(除く農村部)
5.0% 5.2% 5.3% 5.2% 5.2% 5.2%
同25~59歳       4.1% 4.1% 4.2%
同16~24歳       21.3% 20.8% 20.4%
消費者物価指数(CPI) 0.0% 0.1% ▲0.3% 0.0% 0.2% 0.1%
生産者物価指数(PPI) ▲2.5% ▲3.0% ▲4.4% ▲5.4% ▲4.6% ▲3.6%
中国国家統計局の発表を基に作成。数字は前年同月(期)比。▲はマイナス

 一方で、国家統計局の報道官が「経済は持続的に回復してきている」としつつも、「国内需要は依然として明らかに不足しており、経済を回復させていくための基礎を強固にする必要がある」と認めているように、中国経済を巡る現在地と先行きはまだまだ不安要素だらけといえるでしょう。

 例えば、1-9月期の伸び率がそれまでよりも低迷した固定資産投資、中でも不動産開発投資は下降をたどっており、本連載でも扱ってきた中央政府による不動産テコ入れ策、不動産税の先送りなどが期待された効果を上げているとはいえません。

 中国政府が10月19日に発表した住宅価格指数によれば、主要70都市のうち約8割に当たる54都市で新築住宅価格が値下がり、中古住宅に至っては9割に当たる65都市で価格が下落しています。前述した瀋陽市北部のように、価格がコロナ禍前と比べて4割も下がるような市況が全国的に、ドミノ式に発生するような事態になれば、それこそ「不動産バブルの崩壊」が現実味を帯びてきます。

 さらに、9月のCPI(消費者物価指数)は横ばいということで、中国経済の「デフレ化」という不安要素が解消されたとは全くいえませんし、20%以上で高止まりしていた若年層の失業率は8月以降発表されないままで放置されています。

 少子化、デフレ、不動産バブルの崩壊…前述した瀋陽在住の大学教授は「中国東北経済の夕張化」を懸念していましたが、「中国経済の日本化」も引き続き焦点となっていきそうです。