国内クラウド市場、垂直統合型モデルを展開する通信キャリアがリード

 中国国内市場をリードする通信キャリア3社のクラウド・コンピューティング事業は、2023年通期に前年比59%の増収を達成する見込み。BOCIは通信キャリア3社のうち、チャイナ・テレコム(00728)のクラウド事業を有力視。強力な垂直統合アプローチ「雲網融合」(クラウドと通信ネットワークの融合)を強みに、最も早くクラウド事業の採算化を達成する見通しを示した。通信キャリアの中では同社をトップピック銘柄としている。また、通信セクター全体に対して強気のレーティングを維持。通信キャリア3社のほか、通信設備サプライヤーの中興通訊(00763)、中国通信服務(00552)の株価の先行きに対しても強気見通しを維持している。

 中国では、通信キャリアのクラウドサービスの売上高が2020年から急成長局面に入り、その後2-3年にわたって年率3桁の成長を記録した。2023年通期の売上高は前年比59%増の計2,300億元に達する見込み。各社経営陣が示したクラウド事業の2023年の予想売上高は、チャイナ・テレコムが1,000億元と最大で、以下、チャイナ・モバイル(00941)が800億元、チャイナ・ユニコム(00762)が500億元。仮にこの目標を達成すれば、3大キャリアの増収ペースが市場平均を大きく上回ることになる。ちなみに2023年6月中間期には、チャイナ・テレコムのクラウド収入が前年同期比63.4%増(459億元)で、チャイナ・ユニコム、チャイナ・モバイルが同36%増、80%増だった。

 クラウド事業者としての通信キャリアは、極端な垂直統合の「雲網融合」アプローチを取っている。独自のファイバー伝送ネットワーク、自前のIDC(インターネットデータセンター)あるいはAiDC(アーティフィシャル・インテリジェンス・データセンター)を構築し、独自のソフトウエア・オペレーティング・システムやデータベース、さらには自前のサーバー、ルーターなどを用いてクラウド事業を展開する。こうした方式は、第三者のリソースに依存する非通信系(主にインターネットサービス企業)のクラウド事業者とは大きく異なる。BOCIは2つのモデルの違いは主にEBITDAマージンに現れるとの見解。サービス収入に対する減価償却費と事業運営費の比重に格差が生じると指摘している。ケーススタディーによれば、うちチャイナ・テレコムのクラウド事業は2023-24年に損益分岐点に到達する可能性が高いという。

 BOCIはまた、通信設備メーカー2社、中興通訊と中国通信服務の株価の先行きに対しても強気見通しを継続している。両社ともに、キャリア各社がクラウドインフラを構築する上で重要なAiDC市場に、ハードウエア、ソフトウエア、エンジニアリング・サービスを提供しており、クラウドビジネスの活況が追い風となる。中興通訊と中国通信服務は最近の調整を受け、年初来下落率が33%、21%に達しており、BOCIによれば、現在株価は魅力的な水準にある。