過去3年の売上高は堅調推移、海外市場と後期治験に強い銘柄が有利に

 中国の医薬品製造開発受託(CXO)セクターでは、主要銘柄の売上高が2020年上期-2023年上期に年率平均24-60%増と、相対的に高い伸びを示した。世界の製薬大手が研究開発費の対売上高比率を約20%に維持したことが寄与。中でも世界大手を主要顧客とする薬明生物技術(02269)や無錫薬明康徳新薬開発(02359)などが恩恵を受けた。世界の製薬業界の資金調達環境は対照的に改善しつつあり、BOCIは海外収益比率の大きいCXO銘柄が、現在の業況低迷期に抵抗力を発揮するとの見方。セクター全体の低バリュエーションなどに言及し、今後の株価反発の可能性を指摘している。

 個別では薬明生物技術、康龍化成(03759)、北京昭衍新薬研究中心(06127)、杭州泰格医薬科技(03347)、無錫薬明康徳新薬開発、金斯瑞生物科技(01548)の売上高(新型コロナ以外)が、2020年上期-2023年上期にそれぞれ年率平均60%、34%、34%、32%、31%、24%増加した。新型コロナ関連収入の減少による影響は特に見られなかった。

 中国ではバイオ医薬品の資金環境が厳しく、2023年6月、7月、8月の資金調達額は前年同月比34%減、38%減、74%減と極めて低調だった。半面、海外では改善傾向が見られ、この3カ月に29%減、28%減、13%減と推移した。中国のCXO大手は海外売り上げ比率が高く、2020年通期の加重平均65%に対して、2023年上期は73%。個別では無錫薬明康徳新薬開発、康龍化成、薬明生物技術の比率が84%、83%、79%に達している。

 受注残高は全般に低調で、薬明生物技術と北京昭衍新薬研究中心の2023年上期末の受注残は前期比で2%減、12%減。康龍化成は22年に前年比30%減少した後、2023年上期にはさらに前期比15%減少。杭州泰格医薬科技、金斯瑞生物科技も受注残の伸びが大きく減速した。BOCIによれば、早期臨床試験プロジェクトが減少する半面、後期プロジェクトは堅調。資金のひっ迫に直面したバイオテクノロジー企業が、後期治験段階にある製品候補の開発を優先した可能性があるという。

 BOCIのカバー銘柄の12カ月予想PER(株価収益率)は6月の68-165倍から、8月には12-28倍に急落した。財務の悪化、地政学リスクに加え、医薬品を対象とした国内の「反腐敗」運動が痛手となった。その結果、主要銘柄の2023-25年の予想PERは21倍、16倍、13倍と、2019年以来の最低を記録している。予想PERを1株当たり利益成長率で割ったPEGレシオも2023年予想で平均0.8倍(世界同業は平均1.7倍)。CXO銘柄をポートフォリオに組み込むファンドも2年前から大きく減少した。

 ただ、BOCIは大手CXOのバリュエーションやファンドの保有状況はすでに底に到達しているとの見方。悪材料が解消に向かい次第、反発に転じる可能性を指摘し、カバー銘柄6社全ての株価の先行きに対して強気見通しを付与した。中でも海外市場と後期治験業務を主力とする銘柄を有力視。無錫薬明康徳新薬開発をトップピックとしている。