2023年上期は軒並み減益決算、一般炭価格は生産鈍化と低在庫でこの先上昇か

 中国国内の一般炭(燃料用石炭)価格は夏季に高騰する展開とはならなかったが、年内に需要の回復と生産量の減速を背景に上向く可能性がある。BOCIは在庫の縮小を受け、売り手の価格決定力が高まるとみて、実勢価格の上昇を予想。価格見通しを小幅に上方修正した。ただ、需要面ではさらに明るい兆しが必要との見解であり、セクター全体に対して中立のレーティングを継続。個別では配当利回りの高い中国神華能源(01088)と首鋼福山資源(00639)に対し、強気の投資判断を付与している。

 2022年に異常な高水準にあった石炭価格は、2023年上期にほぼ一本調子で下落。その結果、石炭銘柄の上期決算は軒並み減益となった。BOCIのカバー銘柄では、エン鉱能源(01171)の同期決算が石炭価格の下押しで予想を下回ったが、加工業務の歩留まりの上昇がサプライズとなった首鋼福山資源は、前年同期比23%の減益ながらも予想から上振れた。

 中国政府が国内経済の安定成長に向け、各種の刺激策を導入する中、製造業PMI(購買担当者景気指数)は5月の低水準から上向きに推移(5月は48.8、直近の8月は49.7)。うち新規受注指数は8月に50.2まで回復した(50が好不況の分かれ目)。BOCIはこの先、一段のインフラ投資の拡大余地を指摘。一連の要因が全て、石炭需要の拡大を示唆するとしている。

 中国の原炭生産量は7月に前年同月比で横ばい、前月比では3%縮小した。炭鉱事故を受けた安全基準の強化が影響したためで、8月も低水準で推移する見込み。浙江省杭州市で9月23日に開幕するアジア競技大会が新たな安全基準強化の口実となる可能性もある。

 さらに注目すべきは、中国最大の石炭積み出し港・秦皇島と渤海周辺の港湾9カ所における石炭在庫が現在、2022年11月以来の低水準まで縮小していること。こうした中、ベンチマークとなる秦皇島の一般炭スポット価格は現在1トン当たり870元と、夏場の高値をわずか5元下回る水準で底堅く推移しており、この先一段の上昇が見込まれる。

 BOCIは秦皇島の一般炭ベンチマーク価格について、2023年の平均予想を1.5%上方修正し、1トン=940元に設定。2024年についても1.2%引き上げて同838元とした。さらに一般炭の2023年、2024年の契約価格に関する予想値を0.6%、1.0%上方修正している。

 一方、夏に予想外に上昇した原料炭(主に製鉄用原料)価格について、BOCIはこの先の安定推移を見込む。製鋼所の収益性は高いとは言えないものの、インフラ投資の一段の強化や製鋼所レベルでの在庫の縮小が価格を下支えすると予想。クリーン強粘結炭の2023-2025年の平均価格予想をそれぞれ、5.5%、1.7%、1.3%上昇修正した。

 BOCIは個別では、高配当利回りの中国神華能源と首鋼福山資源に対して強気。前者に関してはほかに収益成長の質の高さを指摘している。