新NISAスタート
いよいよ来年から新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)がスタートします。いまはそのスタートに向けて「どこで新NISAをやる?」という金融機関選びのちょうどいいタイミングです。いまからしっかり準備して、力強くスタートを切りましょう。
制度の利点をわきまえる
新NISAは国民が長期で資産形成を行うことを支援するために設けられた制度です。その関係で、おっとりとした、しかし根気強い、コツコツ投資を励行すればいちばん良い結果が出るように制度自体が設計されています。
それには三つの要素が前提として想定されています。
- 長期にわたって継続すること
- 相場が良い時も悪い時も粛々と買い足すこと
- 分散を心がけること
新NISAであなたの資金を運用する際も、これら三つのポイントを踏まえた上で投資対象を選んでゆかねばなりません。
長期投資
長期にわたって継続してひとつの投資対象に投資するためには「いま流行の……」とか「このテーマが熱い!」というような切り口の銘柄は全てペケだということになります。いまならさしずめ人工知能(AI)が旬ですが、新NISAは10年、20年という単位で物事を考えないといけないのでAIが今後20年間相場のテーマの中心になる可能性は極めて低いです。
むしろ相場というものは大きな材料、素晴らしいストーリーほど最初にスパートして、一気呵成(かせい)の勢いで将来のアップサイドをいま全て織り込んでしまう……そういう性急さを持っています。一例としてラジオは1915年に考案され、1921年に人気がブレイクし、1950年ごろまでにほぼ全ての米国の家庭に普及しました。
しかし代表的ラジオ株であるRCAの株価は1929年にピークを付け、そこから▲80%も暴落しているのです。言い直せばラジオそのものは大成功を収めたけれどラジオ株が我が世の春を謳歌(おうか)したのは短期間だけだったのです。このようなエキサイティングなストーリーはハッキリ言って新NISAには向きません。
ドルコスト平均法
相場が良い時も悪い時も粛々と買い足すことを投資の用語ではドルコスト平均法と言います。市場環境が悪い時は誰も気が引けるわけですけれど、そういう時こそ安い値段で仕込める局面でもあるわけで、我慢して買い足せば後で振り返ったとき(あのときの買いが平均買いコストを下げるのに役立った)ということが多いのです。
このようなガッツの買い足しができるためには、そもそも相場や経済が悪い時にバラバラに分解してしまうような企業ではダメなわけで、全天候型のブルーチップ(優良株)であり、不況でもびくともしない会社である必要があります。
分散
どんなに良い投資対象でも相場は移り気なので、たまたま投資家の注目がそれて人気の圏外に放置されるというようなことは相場の世界ではしょっちゅうあります。良い会社なのにぜんぜん脚光を浴びないことほどイライラさせられることはありません。
でも循環物色は相場のごく自然な特徴なのでこればっかりはかんしゃくを起してもどうにもなりません。すると日頃から分散投資に心がけ、幅広い銘柄やセクターに網を張ることで自分だけ取り残されるリスクをある程度軽減する必要がどうしてもあるわけです。
ポートフォリオのイメージ
このように説明してきても、皆さんはなかなか具体的なイメージが湧きにくいと思います。具体例で示した方が腑に落ちると思うので、あえて銘柄を示します。これらは推奨ということではなくて考え方を体得するための事例だと思ってください。
ペプシコ(ティッカーシンボル:PEP)はポテトチップスや清涼飲料の会社です。これらの商品は景気が良かろうが悪かろうが安定的に消費されることが知られています。景気後退局面に強いのでディフェンシブ(防衛的)銘柄という風に呼ばれることもあります。長期で見た場合、スナック類は食品市場全体より早いスピードで成長してきました。流行にも余り関係ありません。
ファイザー(ティッカーシンボル:PFE)は製薬会社です。新型コロナがまん延した時、同社のワクチンが世界を救ったことは記憶に新しいですが、いまはそれが終息し、ふたたび退屈な銘柄に戻っています。財務的にはとてもしっかりしています。
プロクター&ギャンブル(ティッカーシンボル:PG)は洗剤、食器洗い洗剤、紙おむつ、生理用品、トイレットペーパー、歯磨き粉、のどあめ、ビューティー、スキンケア製品を作っています。手堅い経営で知られた企業で、派手さは無いですが、安心して見ていられる企業です。
ウォルマート(ティッカーシンボル:WMT)は大手ディスカウントストアでバリューを強調した品ぞろえとなっています。食品の販売でも大きな存在感があります。財務的には極めて保守的な会社として知られています。
ビザ(ティッカーシンボル:V)はクレジットカードの情報インフラを銀行や商店、企業に提供している会社です。消費者におカネを貸すことはやっておらず、あくまでも情報処理を担当する会社です。クレジットカード市場は大手数社の寡占となっており、「カードがどこでも使える」ことが消費者にとって重要なことなのでスケール・メリットを享受しやすいビジネスです。
まとめ
来年からはじまる新NISAに備え、いまは金融機関選びに集中すべき時です。新NISAは国民の長期での資産形成を支援する制度なので、おのずと制度設計も(1)長期投資、(2)ドルコスト平均法、(3)分散投資、というポイントを念頭に最適化されています。
したがって我々が新NISAで運用する際も、この制度の良い点を最大限に引き出すような投資の仕方をすべきだと思います。