インフレ、景気過熱、バブルを警戒する中国政府
中国政府は足元、「デフレ傾向にある経済」をどれだけ深刻に捉えているのでしょうか。
統計局報道官が公式見解として述べるように、昨今の「物価低迷は一時的なもの」というのが中国政府の立場です。実際にそう考えているのでしょう。その意味で、今年下半期を通じて、あるいは来年にかけて、CPI上昇率が横ばい、下落するような状況が続けば、それは「一時的」ではなく「構造的」な現象になりますから、中国政府の読みは外れることになります。
実際、中国経済を俯瞰(ふかん)すると、工業生産、個人消費、不動産市場、失業率、為替レートなどを含め、停滞感、不況感をほうふつとさせる数値がずらっと並んでおり、デフレ傾向からの脱却という意味で、予断を許さない状況が続くことは間違いないでしょう。
一方で、中国政府の経済認識をきちんと押さえておく必要があるとも私は思っています。
リーマンショックを挟み、過去20年中国政府の景気への反応や対応を観察してきた経験則からすると、中国政府は(1)インフレ、(2)景気過熱、(3)バブル(特に不動産)に対する許容度、忍耐力が弱い、というのが私の現時点での判断です。
要するに中国政府は、
・世界経済、中国経済が相互依存する中、どのような状況、段階、局面にあったとしても、基本的な姿勢として、金融政策を引き締めなければならないほど極端なインフレが起きるくらいなら、デフレ基調のほうがマシ。
・景気が過熱するくらいなら、若干冷え込んでいるくらいの方がマシ。
・不動産バブルが形成される(その後崩壊)くらいなら、住宅価格が横ばい、下落するくらいのほうがマシ。
だと考える傾向にあるということです。
そう考える背景には、(1)、(2)、(3)がそれぞれ、あるいは同時発生的に起こることは、14億という巨大な船を運行させなければならない中国としては、不安要素が増大し、状況次第では、社会不安、政治不安につながりかねない、という彼らなりの経験則が作用しているようです。
「物価が急騰すれば人民は暴れる、だが物価下落で人民が暴れることはない。」
そのように考えているようです。
もちろん昨今、中国の人々が、全体的に物価が下がっていると感じているかどうかは別問題ですし(実際そうは思っていないでしょう)
「物価は急騰するより下落するほうがマシ」というマインドセットと、経済の持続的成長の間に存在する矛盾にどう対処すべきか、というのもまた別問題と言えます。
今週末に発表されるCPI、PPI統計に注目したいと思います。