資産形成の正解は人それぞれですが、一方で、多くの人が失敗してしまう考え方や、やり方があるようです。このシリーズでは、資産形成を始める人が陥りがちな失敗事例を取り上げ、やってはいけない行動をわかりやすく解説します。

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新NISAで高配当が狙える株式に投資してみたいが…

江藤元記さん(仮名)会社員・50歳(既婚、配偶者は専業主婦、子どもは2人)

 江藤さんは、これまでつみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の制度が始まった2018年1月当初からずっと利用していました。NISAでは投資信託で積立投資をしつつ、通常の課税口座で高配当株を投資するなど仕事の合間をみつつ、資産形成にいそしんでいました。

 もともとは株式投資が好きでいろいろと投資をしていましたが、だんだん仕事や家庭で忙しくなりました。NISA制度が始まってからは税金が非課税になるメリットもあり、毎月の積み立てだけで大して手間がかからない積立投資を中心に資産形成をしていました。

 しかし、新NISA制度が発表されて、つみたて投資枠と資産成長枠の両方をうまく使えば、積立投資を続けながらこれまで課税口座で投資していた高配当株も非課税口座で投資できることに、投資欲も刺激されました。

 新しいNISA制度を江藤さんがうまく生かすためにはどんなことに気をつけたら良いのでしょうか?

【2024年からの新NISA制度について、詳しい説明はこちら

新NISAの成長投資枠で高配当株投資をする時に注意することは?

 NISA枠を利用した高配当の株式投資は、従前から人気のある投資手法です。株式投資というなじみある投資にくわえて、定期的に配当という収入が期待できるという仕組みが日本人にとって魅力的と感じやすいのでしょう。さらに課税口座なら税金で20.315%を差し引かれる配当が非課税でもらえるとなると、手取りも大きくかわります。

 これまでの一般NISAでは「年間120万円かつ投資期間は5年間」という縛りがありましたが、新NISAでは「年間240万円かつ上限1,200万円で投資期間は無制限」となりました。今後ますますNISA枠を利用した高配当株への投資が活況になることでしょう。

 しかし、話題になる投資ほど魅力的に感じやすい半面、注意点をつい見逃しがちになりやすいものです。そこで、今回は新NISAの成長投資枠で高配当株投資をする時に注意することをお伝えしたいと思います。

成長投資枠で高配当株投資の注意点1:つみたて投資枠とのバランスを考えておく

 新NISAでは成長投資枠は最大1,200万円となっていますが、NISA枠のつみたて投資枠と成長投資枠を合わせた合計は最大1,800万円となっています。つまり、成長投資枠を利用した分、つみたて投資枠が利用できる枠が減ることになります。

 これまでのNISAでは一般NISAとつみたてNISAのどちらかを選ぶという制度だったので、こうしたバランスを考慮する必要はありませんでした。さらに年間投資上限額について、つみたて投資の120万円に対して、成長投資枠は240万円と2倍もの差があります。

 単純に毎年最大まで枠を利用していると5年目でつみたて投資枠600万円と成長投資枠が1,200万円となります。1/3がつみたて、2/3が成長投資という比率です。

 この比率の良しあしは人それぞれですが、本来の投資目的にあっているかを考えておくことは必要です。特に高配当株の投資は、株式投資の中では比較的安定した投資だと考えられがちですが、株式投資であることに変わりはありません。個別銘柄への投資となると、リスクは高めの投資といえます。

「つみたて投資枠」ではつみたてNISA同様に低コストのインデックス投資が中心となることを考えると、「成長投資枠」で個別銘柄の高配当株へ投資をすることは積極的な投資をしているといえそうです。それが本来の自分の投資目的とあっているのかどうかを検討した上で比率を考えるべきでしょう。

成長投資枠で高配当株投資の注意点2:高配当の「率」だけで判断しないこと

 高配当株への投資で注意することで最も気をつけておきたいことは、課税口座も非課税口座のNISAも共通しています。それはただ配当率が高い銘柄に注目するのではなく、業績は安定もしくは右肩上がりか、また配当を継続しているだけでなく増配しているか、などをしっかりと確認することです。

 高配当株の銘柄を探す時には初心者ほど配当率の高さを比較したランキングなどから銘柄を探しているように思います。もちろんそこから選別するやり方もありますが、「高」配当といっても限度があります。少なくとも3%以上は狙いたいですが、高配当株を取りまとめたETF(上場投資信託)の中身をみても3~5%程度の銘柄が大半です。

「配当率=(配当金額÷株価)×100」の計算式で決まります。そしてデータで見る配当金額は過去の数値もしくは予想数値から参照されます。

 つまり、良い高配当株とは業績がよくて株価も上昇しつつ、配当金額もしっかり増配することで高い水準の配当を維持し続けている銘柄です。逆に業績が落ち込んでいて株価が下がっている銘柄では、一見高い配当率に見えますが、その後配当金額が下がっていくことがよく起こります。

 配当金は権利付最終売買日に株式を保有している投資家がもらえますが、配当金額が確定するのはその権利付最終売買日以降なので、要注意です。

 そして個別株投資なら銘柄の分散だけでなく、購入時期の分散なども重要です。最も安いタイミングを狙いすぎたり、配当が高いならとタイミングを考えずにただ購入することはおすすめできません。高配当を狙った投資といっても株式投資であることにかわりはありませんので、ハイリスクハイリターンであることを理解した上で投資をしましょう。

成長投資枠で高配当株投資の注意点3:自分の資産金額にあった枠を利用すること

 NISA枠は制限がありますが、枠が余っていると使った方が良い気がしてくる方は多いようで、年末ごろになるとよく相談があります。ここで気をつけておきたいことは、NISA枠があるから投資をするのではなく、自分の投資資産に余裕資金があり、かつ投資目的にあった投資であることが前提です。

 NISA枠は利用できるものであって、利用しないといけないものではありません。そもそも新NISAでは投資期間の制限もなくなっており、枠が一杯になってもNISAで購入した資産を売却すればまた新しく枠を利用できます(年間の投資金額制限はありますが)。

 投資においては投資目的にあった資産配分(アセットアロケーション)が重要だと考えられていて、株式や債券など複数の資産に長期分散投資をすることが安定した運用成果を続ける手法だと考えられています。

 しかし、それ以上に大切なことは、適切な投資金額を設定することです。特に値動きの大きい(=ハイリスクハイリターンの)投資をする際にはうまくいっているからといって安易に投資金額を増やすことはおすすめできません。

 投資では常に安定した成果を出し続けることは困難です。常に大きな成果を狙うのではなく、大きな失敗をしない投資をするべきです。そして私の経験上、取り返しが難しい失敗の大半はリスクの高い投資に投資金額が偏っているときに起きています。資産配分はもちろんですが、適切な「投資金額」も考えておきましょう。

新NISA制度を生かす投資知識を身につけよう

高配当株投資は資産成長枠を活用する良い手段の一つ

 NISAの資産成長枠を活用する方法はさまざまですが、高配当株投資はその代表的な投資手法の一つと言えるでしょう。高配当だからこそ非課税枠のメリットを最大限に生かすことができます。

 とはいえどんな投資であっても、万人にとって良い投資というわけではありません。自分や家族とのライフプランや今後の資産設計を考えつつ、投資目的にあっているのか、高配当株投資にまわせる資金なのかどうかを慎重に検討することが大切です。

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