李強首相が国務院常務会議で「ビジネス環境の最適化」を主張

 6月2日、経済政策を統括する李強(リー・チャン)首相が月例の国務院常務会議を主催しました。議題となったのが「ビジネス環境を最適化するための仕事の進展状況と、これから重点的に取るべき措置」です。

 上記とも関係しますが、新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に抑え込むことを目的とする「ゼロコロナ」政策が解除された一方、足元では解除後の第二波が押し寄せている。そんな中、景気回復のために企業をどう生かすべきかという中央政府の問題意識が、このテーマ設定から顕著に垣間見れますし、それだけ切羽詰まっているということでしょう。

 李強首相は次のように指摘します。

「今年に入って、我が国の経済運営は良好な開局を実現してきたが、経済回復の基礎はいまだ安定しておらず、市場化、法治化、国際化に立脚したビジネス環境を作り上げることを重要視しなければならない。社会における期待値を安定させ、成長に向けた自信を鼓舞し、市場の活力を促すことで、経済運営を持続的に回復、好転させていく必要がある」

 国務院の上層部や国家統計局などがこの期間公言してきた経済状況を巡る現状認識、見通しを踏襲するもので、何ら目新しい表現ではありません。中国のビジネス環境が「市場化」「法治化」「国際化」に基づいたものであるべきという点も、中国政府は繰り返し主張してきました。

 要するに、中国のビジネス環境は、(1)市場原理で、(2)法律に基づいた、(3)国際標準に符合する、場であるべきだという立場です。言うまでもなく、中国政府が定義、実践する「市場」「法律」「標準」と、多くの日本企業や海外投資家が一般的に認知するそれらの間には少なからずギャップが存在しますから、そこの歩み寄りは容易ではありません。

 ただ、少なくとも、巨大市場を抱える中国の為政者が、(1)~(3)の実現が必要であるという点に自覚的である、というのは歩み寄りの可能性が残されている、という意味で重要だと思っています。