為替DI:6月のドル/円、個人投資家の予想は?
楽天証券FXディーリング部 荒地 潤
楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスのときは「円安」見通し、マイナスのときは「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示します。
DIは「強さ」ではなく、「多さ」を測ります。DIは、円安や円高の「強さ」がどの程度なのかを示しているわけではありませんが、個人投資家の相場観が正確に反映されていると考えるならば、DIの「多さ」は同時に「強さ」を示すことになります。
「ドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」
楽天証券がドル/円相場の先行きについて個人投資家にアンケート調査を実施したところ、6月は「円安/ドル高」との見方が大幅に増え、全体の71%を占めました。前回5月は60%でした。
円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から22ポイント増加して+42になりました。
利上げやめようとしたのをやめるのをやっぱりやめたわ
日本銀行は、早ければ7月の会合でYCC(イールドカーブ・コントロール)政策を修正して円金利上昇を容認するとの予想がでています。しかし円相場はまったく反応していません。4月にデビューした植田和男総裁は新政策を打ち出すことに慎重で、失望したマーケットは日銀を監視対象から外したままにしています。
マーケットの注目は、FOMCが、利上げを終了するのか、それとも続けるのかということです。今月6月の利上げは五分五分といわれていましたが、最近は「6月見送り、7月再利上げ」の予想が勢力を増しています。
6月か7月か、あるいはその両方するにしても、米利上げサイクルが夏前に終了することはほぼ確実です。これからは「長期間にわたる高金利」がどれだけ続くのか、すなわち「高さ」ではなく「長さ」が主題になります。
FOMC参加者は、少なくとも今年いっぱいは高金利を維持する考えを持っています。FF(フェデラルファンド)金利予想(ドットチャート)によると、2023年末の中心値は5.125%です。現在のFF金利の中心値も、5月の0.25%利上げで同じく5.125%まで引き上げられました。
ドットチャートに従えば、利上げサイクルはすでに5月で終了していて、6月は利上げ「見送り」というよりも「休止」と考えるべきかもしれません。再利上げというカードをちらつかせながらも、できれば使わずにすませたいというのがFRB(米連邦準備制度理事会)の考えでしょう。
次にFRBが動くときは、利上げではなく「利下げ」の可能性が高いのではないでしょうか。最後の利上げから次の最初の利下げまでの期間は平均約6カ月間というのが過去のパターンです。年末まで金利を据え置いたあと、来年1月から利下げサイクルに入るというのは、ドットチャートの予想にも合致します。
利上げは、米金利上昇、他国との金利差拡大という意味では「ドル高」であり、利下げはその反対で「ドル安」要因といわれます。しかし、利下げで米国のリセッションが回避される可能性が高まるという意味では、利下げは「ドル高」と考えることができます。
ユーロ/円
楽天証券がユーロ/円相場の先行きについて個人投資家にアンケート調査を実施したところ、6月は「円安/ユーロ高」との見方が全体の71%を占めました。
円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から24ポイント増加して+42になりました。
豪ドル/円
豪ドル/円相場の6月は「円安/豪ドル高」との見方が全体の69%を占めました。
円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から20ポイント増加して+38になりました。
今後、投資してみたい金融商品・国(地域)
楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲
今回は、毎月実施している質問「今後投資してみたい国(地域)」で「日本」と「アメリカ」を選択した人の割合に注目します。各質問の選択肢は、ページ下部の表のとおり、13個です(複数選択可)。
図:「日本」「アメリカ」を選択した人の割合の推移
2023年5月の調査では、「日本」を選択した人の割合は78.27%(前月比+4.02%)、「アメリカ」は59.08%(同▲0.35%)でした。「日本」は、統計史上最高となりました(「日本」が当質問の選択肢に組み込まれたのは2016年5月)。
急上昇が始まったのは2023年4月でした。その前の月の3月(46.83%)から急上昇し、74.25%に達しました(このときの上昇率「+27.43%」は統計史上最高)。そして5月は、上述のとおり、さらに上昇しました。
なぜ「日本」は、このような急上昇劇を演じているのでしょうか。日本株市場が記録的な高値圏に達し、大きな話題を呼んでいるためだと考えられます。日本株が記録的な高値圏にある背景には、以下が挙げられます。
- 新型コロナの5類移行により、(待機期間短縮など)経済活性化が期待されていること
- 外国人観光客が増加し、消費回復が期待されていること
- 日銀の新総裁が決まり、しばらく、緩和的な策が継続するとの見方があること
- また、利上げが取り沙汰される米国と対照的であること
- これを主因として目立っている円安が日本株市場にプラスに働くと解釈されていること
- 著名投資家であるバフェット氏が日本株の積み増しを行って大きな話題を呼んだこと
- G7サミットで議長国となった日本が一定のリーダーシップを発揮したこと
(2023年4月に、楽天DIのアンケート実施に用いるシステムを変更しました。このタイミングで、他の質問で回答が急変した例がないことから、システム変更と「日本」を選択した人の割合が急上昇したことに関連はないと考えています)
記録的な高値圏で推移する日本株の動きを、メディアは「33年ぶり高値」「バブル崩壊後の高値」などのキーワードを用いて報じています。
足元の日経平均の水準(3万2,000円近辺。原稿執筆時点)は、バブル崩壊直前の高値(1989年の3万8,957円)に比べれば、まだまだ安いですが、それでも、「バブル」や「高値」などのキーワードが踊ると、バブル期の高揚感を想起する方もいらっしゃると思います。こうした高揚感もまた、株価を支える一因になっているのかもしれません。
目先、「日本」を選択する人の割合がさらに上昇するかは、やはり、日本株の動向にかかっているのかもしれません。今後も「日本」の動向に注目していきます。
表:今後、投資してみたい金融商品 2023年5月調査時点 (複数回答可)
表:今後、投資してみたい国(地域) 2023年5月調査時点 (複数回答可)