アドバンテスト

1.2023年3月期4Qは26.2%増収、14.4%営業増益

 アドバンテストの2023年3月期4Q(2023年1-3月期、以下前4Q)は、売上高1,473.92億円(前年比26.2%増)、営業利益385.47億円(同14.4%増)となりました。

 売上高は、顧客への製品納入が想定以上に進んだため、会社予想の1,372億円を上回りました。一方、営業利益は前4Qにシステムレベルテスト事業(種類が異なる半導体の組み合わせテストを行うテスタを製造販売)等で在庫評価損を計上したことや、製品ミックスが悪化したことによって会社予想の409億円を下回りました。

 製品別売上高を見ると、SoCテスタ(非メモリ・テスタ)は前3Q800億円→前4Q869億円と伸び、高水準な売上高が続きました。メモリ・テスタも同186億円→239億円と伸びました。一方でシステムレベルテスト事業は同137億円→77億円と急減しました。顧客が拡大しておらず、特定顧客向けが減少した影響を受けました。保守サービス等は同116億円→113億円と小幅減でしたが堅調でした。

 地域別売上高を見ると、台湾向けが前3Q277億円→前4Q352億円に、米州向けが同97億円→137億円に増加しました。中国向けは同454億円→455億円と高水準でした。中国向けはSoCテスタの比率が大きく堅調でした。アメリカ向けはシステムレベルテスト、CD-SEM(半導体ウェハ上に形成された微細パターンの寸法を計測する検査機器)が増加しました。

 これによって、2023年3月期通期は、売上高5,601.91億円(同34.4%増)、営業利益1,676.87億円(同46.2%増)となり、過去最高の業績となりました。

 市場シェアは、SoCテスタは2021年暦年45%→2022年暦年58%、メモリ・テスタは同51%→53%へ上昇しました。

表6 アドバンテストの業績

株価    14,320円(2023/5/18)
発行済み株数    184,214千株
時価総額    2,637,944百万円(2023/5/18)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益。
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。

表7 アドバンテストのテスタ売上高

単位:億円
出所:会社資料より楽天証券作成

表8 アドバンテストの地域別売上高

単位:億円
出所:会社資料より楽天証券作成

2.今期会社予想は二桁減収減益の見通し

 2023年3月期は過去最高の業績を達成しましたが、会社予想では今期2024年3月期は売上高4,800億円(前年比14.3%減)、営業利益1,050億円(同37.4%減)となる見込みです。スマートフォン向け等の民生用半導体の在庫調整が前3Q決算時に予想していた2023年7-9月期に終了せず、2023年10-12月期か2024年1月ごろまでかかるという見方です。データセンター向けのAI用半導体向けや自動車、産業機器用半導体向けSoCテスタは堅調と思われますが、スマートフォン向けの不振で相殺されるという見方です。

 会社側の四半期ごとの業績イメージは、今1Q(2023年4-6月期)に業績が急減して、今2Qから緩やかに回復するというものです。これに対して楽天証券の見方は、今1Qは会社側の見方同様業績が急減すると予想していますが、これはスマートフォン向け半導体の調整によるものです。データセンター用AI半導体向けテスタは今1Qも堅調と思われます。今2Q、今3Qもスマホ向けは調整が続く可能性はありますが、AI半導体向けは増加が続き業績を牽引し、今4Qからはスマホ向けが増加に転じ、AI半導体向けも引き続き増加し業績が本格回復すると予想しています。AI半導体と種類としては、エヌビディアのデータセンター用GPU「H100」(2022年8-10月期出荷開始)、AMDのサーバー用CPU「Genoa」(2022年7-9月期出荷開始)、「GenoaX」「Bergamo」(いずれも2023年4-6月期に出荷開始予定)、データセンター用新型GPU「MI300」(2023年後半に出荷開始予定)、エヌビディアの新型CPU「Grace」(今年後半に出荷開始か)、インテルの最新型サーバー用CPU「サファイア・ラピッズ」(2023年1月出荷開始)、その次世代版である「エメラルド・ラピッズ」(2023年10-12月期出荷開始予定)と続きますが、これらのAI半導体の出荷数量は傾向的に増加すると予想されます。

 特にGPUは内部構造が複雑なためテスト時間が長くかかるため、アドバンテストのSoCテスタでも高価格帯機種が必要になり、台数も多くなると予想されます。これまでの大規模AI(お客様相談窓口、レコメンデーションシステム、ランキングシステムに使う大規模言語モデル)に加え、ChatGPTを代表とする生成AI(同じ大規模言語モデル)がGPUユーザーに加わります。楽天証券の予想では2023年後半か遅くとも2024年初頭から本格的に始まる次のSoCテスタのブームの主役はAI半導体向けになると思われますが、会社側もAI半導体を主軸として各種の研究開発プログラムを始動している模様です。

 このような見方から、楽天証券では2024年3月期業績を売上高5,100億円(前年比9.0%減)、営業利益1,240億円(同26.1%減)と予想します。会社予想はいずれ上方修正される可能性があると考えます。

 また、来期2025年3月期は、半導体デバイス市場全体が回復することによって、売上高6,400億円(同25.5%増)、営業利益1,700億円(同37.1%増)と予想します。

表9 アドバンテストの事業別売上高

単位:億円
出所:会社資料より楽天証券作成。
注:四捨五入のため合計が合わない場合がある。

表10 アドバンテストの半導体テスタ市場予想

単位:100万ドル、暦年
出所:アドバンテスト資料より楽天証券作成

3.今後6~12カ月間の目標株価を2万円とし、前回の1万6,000円から引き上げる

 アドバンテストの今後6~12カ月間の目標株価を2万円とし、前回の1万6,000円から引き上げます。

 長期的な視点から、楽天証券の2025年3月期予想EPS695.4円に成長性を考慮して想定PER25~30倍を当てはめました。

 引き続き中長期で投資妙味を感じます。

 なお、2023年10月1日付けで、1対4の株式分割を実施します。