ジャック・マー氏の関心分野と注力領域

 香港大ビジネススクールのウェブサイトには「Prof. Jack Ma」のページが掲載されています。主な肩書として、「名誉教授、ジャック・マー基金創業者、アリババ・グループ創業者兼パートナー、国連『持続可能な開発目標』名誉提唱者(United Nations Sustainable Development Goals Emeritus Advocate)」。より詳細な経歴として、次の内容が明記されています。

・1999年にアリババ・グループを創業。1999~2013年までCEOを歴任

・2014年にジャック・マー基金を創設。教育、アントレプレナーシップ、環境保護分野をサポート

・国連「持続可能な開発目標」名誉提唱者、ザ・ネイチャー・コンサーヴァンシー(The Nature Conservancy)グローバルボードメンバー、パラダイス基金(the Paradise Foundation)共同議長

・香港大学、テルアビブ大学名誉博士

・杭州師範大学卒業(英語教育学士)

 これらは、世界中であらゆる組織の役職に就いていると見られるマー氏が、今このタイミングで対外的に主張したい、厳選されたタイトルだと言えます。注目に値するのが、2014年、アリババCEO退任後に創設した自らの基金が、教育、アントレプレナーシップ、環境保護分野に注力していること。そして、昨今投資の分野でも盛り上がりを見せているSDGs(持続可能な開発目標)にも直結すること。

 以下は、マー氏がボードメンバーと共同議長を務める二つの組織の概要です。

 ザ・ネイチャー・コンサーヴァンシーは、米ヴァージニア州に本部を置く、1951年に設立された自然保護団体(非営利)の一つで、生物生息地の確保や希少野生生物・生態系の保全などの活動を世界各地で行ってきています。

 2015年に設立されたパラダイス基金は、中国に本部(主に広東省深セン市と四川省成都市)を置く自然保護団体(非営利)です。一つは米国、もう一つは中国。ただ共に非営利の環境保護団体である点が極めて重要です。

 以上の情報から、アリババ・グループの創設者として長年携わってきたビジネスマンを引退したマー氏が、今現在関心を持っていること、これからやろうとしていることは、(1)教育の現場に身を置き、自らが長年携わってきたアントレプレナーシップと企業イノベーション、長年関心を抱いてきた農業の分野の研究や講義に従事する、(2)社会的には、非営利の立場で、環境・自然保護の分野に注力する、(3)これらを通じて、次世代の育成に努め、次世代が安心して暮らせる地球の実現にコミットする、の3点に集約できると思います。