ジャック・マー氏が香港大学名誉教授、東京大学客員教授へ就任

「ジャック・マーが東京大学教授に就任しましたが、これは何を意味するんですか?」

 5月に入り、しばしば聞かれる質問です。本連載は、アリババ創業者であるジャック・マー氏の動向、それがアリババ・グループ全体に及ぼす影響などについて適宜分析を行ってきました。私がジャック・マーやアリババにこだわるのは、それが同氏、同社だけの問題ではなく、中国という国、市場、社会、そしてそこで暮らし、稼ぐ人々の命運に関わっていると切に考えるからです。より具体的に言えば、マー氏やアリババの没落は、中国経済・市場に関心と期待を持つ中国内外の投資家やビジネスマンたちの自信を喪失させるということです。

 そんなマー氏は、今年4月1日に香港大学ビジネススクール名誉教授に就任しました。期間は2026年3月までの3年間です。マー氏は9月で59歳になりますが、中国で定年年齢とされている60歳まで務めるということでしょう。同大の発表によれば、マー教授は就任期間中、金融、農業、企業イノベーションといった分野の研究に従事するとのことです。

 そして5月1日、東大の「東京カレッジ」(同大と海外の研究者や研究機関を結ぶインターフェースとして2019年に設立)客員教授に就任しました。期間は10月31日までの半年間。同大の発表によれば、就任期間中の研究概要は「持続可能な農業と食料生産」です。マー氏には、重要な研究テーマに関する助言や支援、同大研究者との共同研究・事業の実施、および、講演や講義を通じて、起業、企業経営、イノベーションなどの経験や先駆的知見を学生や研究者と共有することを期待しているとしています。

 就任発表の時期、肩書き、招聘(しょうへい)期間から、香港大のほうがインパクトが強い気がしますが、マー氏がアジアの両雄とも言える二つの大学で従事する研究のテーマ、大学側から期待される役割は似通っているように思います。