<マザーズ指数(左軸)とマザーズ売買代金(右軸)>

4月の中小型株ハイライト

初の宇宙IPO、夢で買って現実で売る?

 3月後半からIPO(株式の新規公開)が続きましたが、中でも話題性でダントツだったのが4月12日に東証グロース上場のアイスペース(9348)でした。同社は、月への物資輸送サービスをはじめとする月面開発事業を手掛けており、上場企業として国内初の宇宙ベンチャーでした。研究開発費が巨額となるため昨年末時点では債務超過だったものの、今回のIPOによる公募増資でいったんは解消。

 赤字が当面続く「ディープテック銘柄」として東証も注意喚起する存在ながら、その可能性は未知数。上場と同時に、「夢を買う!」粋なマネーが同社株に殺到しました。

 公開価格254円に対し、上場2日目に初値1,000円で全株一致。また、IPOと同時に同社が「26日に民間初となる月面着陸を予定している」と発表。26日に向けたイベントドリブンで、尋常ではない売買エネルギーがかかったのが印象的でした。

 19日に付けた最高値は2,373円で、初値形成からわずか5営業日で初値の2.3倍強に! なお、メディアでも注目された26日の月面着陸は失敗に終わり、同日から需給は逆流、2日連続ストップ安売り気配に…。株価も事前期待で上がった分の全部を消し、初値水準へ「往って来い」となりました。

スタンダードの人気仕手系ツートップが暴落

 4月前半、プライム市場の1日の売買代金が2兆円を下回るなど売買が低調。閑散ムードが漂う中、14日に今年最大の売買代金(1,733億円)を記録するなど異様な盛り上がりを見せたのが東証スタンダード市場でした。

 値動き緩慢な主力大型株を見切り、Abalance(3856)Eインフィニティ(7692)など個人に人気化した仕手系材料株でのデイトレが活況に。また、この時期IPOした住信SBIネット銀行(7163)もセカンダリー好調で売買増加に寄与していました。

 売買ピークの14日時点で、スタンダード市場とグロース市場の信用買い残トップだったのがAbalanceの220億円で、5位のEインフィニティも90億円と人気化していました。その人気2銘柄が立て続けに急落。まずはAbalanceが、東証が19日より増担保規制をかけたことをきっかけにストップ安へ。

 翌20日にはEインフィニティがSNS上でのはしご外しから短期勢の売り殺到。こちらのストップ安は3日続く異常事態となり、「何となく上がりそうだから」という理由で信用買いしている個人短期マネーの多さには驚くばかりで…。一部個人投資家のセンチメント悪化が、他の中小型株にも負の連鎖となる場面も見られました。

グロース市場全体は昨年来でも屈指の低ボラ

 新年度相場入りした4月は、国内機関投資家による「益出し売り」などで序盤こそ軟調。ただ、米金融システム不安への警戒が薄れたほか、米主要ハイテク企業の決算が想定より堅調だったこともあり、月後半にかけてリスクテイク色を強めました。

 日経平均株価は上伸し、21日には年初来高値を更新。その過程では、4月第2週の外国人投資家による巨額買い越しも話題に。その週は、著名投資家のウォーレン・バフェット氏が来日、日本株に対して「追加投資を検討している」との姿勢を示したことも刺激となりました。

 ただ、バフェット氏が投資対象とする総合商社も無く、この時期再び物色されたリオープン株も少ない東証グロース市場。日経平均の4月月間騰落率+2.9%に対し、東証マザーズ指数は▲0.6%とさえない展開でした。なお、3月に盛り上がった反動から、直近IPOは値崩れ続出。

 ただ、3月や4月上場の直近IPOは指数構成銘柄ではないこともあり、どれだけ盛り下がろうがマザーズ指数には影響無し。上にも下にも値動きが緩慢だったことで、マザーズ指数のヒストリカル・ボラティリティは昨年来最低水準に。値動き妙味の乏しさから、短期マネーはスタンダード市場で売買活発なハイボラ株などに流出する格好となりました。

5月の中小型!今月のキーワードは… 決算発表は「出たとこ勝負!」

 ここ数年でいえば、5月の中小型株市場は軟調気味なトラックレコードを残しています。2020年こそコロナバブルで大きく上昇しましたが、マザーズ指数の月間騰落率でいえばコロナ前の2019年5月が▲4.3%、おととし2021年5月が▲4.3%、昨年2022年5月が▲3.3%でした。「セルインメイ(5月に株を売れ)」の相場格言は有名ですが、それっぽい実績を残している昨今の5月相場。

 月間トータルで見ると下げているマザーズ指数ですが、日足チャートを眺めてみると、軟調地合いは月前半だけ、月後半は上向いていることも見て取れます。5月に大きく下げた2019年、2021年、2022年5月のマザーズ指数を、4月末終値を100として指数化したのが上の折れ線チャートになります。

 月中に向けて調整するも、月後半は好パフォーマンス化しているのが分かると思います。具体的な騰落率でいえば、2019年は月前半が▲6.7%、月後半が+2.6%、2021年は同▲9.8%、+6.0%、2022年は同▲6.6%、+3.5%といった具合です。

 5月は月前半が軟調で、月後半が好調…その理由としては、まさに月の真ん中に向け、決算発表シーズンに突入することが挙げられます。3月決算企業の場合は、期初の次期見通し(=ガイダンス)を示すタイミング。

 市場予想との乖離(かいり)が大きかった場合の株価反応が大きいことから、「ガイダンスリスク」を発表手前で警戒するムードは広がります。バリュエーションが高いグロース株の場合、決算の失望で売られることで5月安値を付け、これが指数の安値タイミングに影響していると考えられます。

 GW明けは中小型株の決算ラッシュで、発表社数のピークは「5月12日(金)」となります。決算ピーク前後での安値形成を意識しつつ、月後半のパフォーマンス好転時の主役となるのは「決算ポジティブサプライズ銘柄」と想定して臨みたいところ。

 グロース株の決算の場合、自社株買いなどの株主還元サプライズに期待が乏しいため、決算数値のポジティブ/ネガティブ判定が株価リアクションの重要指標となります。

中小型人気株の決算発表予定日一覧
【条件】(1)アナリストのレーティング付与、(2)レーティング強気以上
(3)売買代金25日移動平均が3億円以上
※売買代金25日移動平均上位順、5月2日時点

市場 コード 銘柄名 決算発表 予定日 決算
S 7163 住信SBIネ 5月15日
G 6613 QDレーザ 5月12日
S 6890 フェローテック 5月15日
G 7794 イーディーピ 5月12日
S 2702 マクドナルド 5月12日 1Q
G 9204 スカイマーク 5月15日
S 6425 ユニバーサル 5月12日 1Q
G 4485 JTOWER 5月11日
G 4169 エネチェンジ 5月12日 1Q
G 4448 Chatwork 5月12日 1Q
G 6030 アドベンチャ 5月12日 3Q
G 7342 ウェルスナビ 5月12日 1Q
G 5240 monoAI 5月12日 1Q
S 2780 コメ兵HD 5月15日
S 4970 東洋合成 5月12日
S 7716 ナカニシ 5月12日 1Q
S 7826 フルヤ金属 5月11日 3Q
G 4436 ミンカブ 5月15日
G 5034 unerry 5月12日 3Q
G 2150 ケアネット 5月12日 1Q
G 4475 HENNGE 5月12日 2Q
S 7809 壽 屋 5月15日 3Q
G 4259 エクサウィザー 5月11日
G 7157 ライフネット 5月11日
G 7094 NexTone 5月12日
G 7685 BUYSELL 5月12日 1Q

 不確実性が高いことから、「決算を見てから動けば良い」という市場参加者が多くなる傾向もあります。先行して決算発表したところでは、メルカリ、Sansan、マネーフォワードなどプライム上場のグロース株で「ポジティブ決算→翌日株価急上昇」になりました。

 スタンダード、グロースに上場する銘柄の中から、流動性上位、かつアナリストの高レーティング付与の注目銘柄の決算発表予定日をまとめています。いずれもアナリストが強気目線によりコンセンサスは高めなため、その数値を上回ったポジティブ決算銘柄は「出たとこ勝負!」で上値追いを検討しても良いと思われます。