相手への理解が原油高を終わらせるカギ

 SDGsを上手に進めていくことで、こうした状況を打開できると、筆者は考えています。SDGsを進めていく上で重要なことは、本レポートで述べたとおり「俯瞰的であること(誰一人、何一つ置き去りにせず、17の目標を抜け漏れなく対応すること)」です。

 加えて、SDGsをビジネス利用しないことも重要だと考えます(ビジネスで利用すると、必ずどこかで置き去りや金銭的な衝突が発生してしまう)。

 とはいえ、まず先にやらなければならないのは、「向こう側」にいる相手を知り、配慮を見せることです(2015年から現在に至るまで、西側は非西側(特に産油国)への配慮を欠いた上で、SDGsをビジネス利用してしまった)。

 世界には無数の「正義」が存在します。先進国だから、民主国家だから、自由経済を採用しているから、正しいなどということは一切ありません。自分の正義の向こう側に、その正義を正義と思っていない人がいると考えることが、俯瞰の一歩になります。

 ロシアが西側に置き去りにされて意固地になり、その成れの果てにウクライナ危機を勃発させた、そして今、そのロシアに産油国や多数の非西側国家が追随している。などという話が本当なのであれば、西側はどうすればよいのでしょうか。

 豊かな生活を放棄し、産油国に依存しないようにする(産油国から剥(は)がされそうになる恐怖からも解放される)のも一計かもしれませんが、一度豊かな生活を覚えた人間がそれを放棄することなどできないでしょう。

 かといって、化石燃料を湯水のように使っていた数十年前の生活に戻ることもできません。ましてや、環境問題をここまで大規模にした手前、いまさら二酸化炭素を出しても大丈夫などとは言えません。

 また、技術革新で化石燃料を使わない世界を創るという話がありますが、高インフレや分断は極まっており、もはや待つ時間はありません。

 では、どうするか。対話で前進する以外に方法はないでしょう。対話の糸口を見つけるにも、やはり「俯瞰」が有効です。

 以下は、4月23日付けの国内大手新聞の主要面の見出し(10個)です。明確に「西側」と「非西側」に分類することができます。紙面では、これらの関わりがある旨の記載はありませんでしたが、このように分類だけで、我々日本人にも「非西側」の世界がぼんやりと見えてくるはずです。

 そこに人々の生活があって、そこでモノや情報やお金が動いているのです。我々と同じなのです(このような想像を働かせると、「あいつら(産油国)に(原油価格を)決められたくない」、「安い価格で買ってやってもいいと(産油国と)強気に交渉したらどうだ?」などとは言えなくなるでしょう)。

図:国内大手新聞の主要面(4月23日付)

出所:各種情報源より筆者作成

 お互いを理解すること、理解した上で対話すること、対話した上で解決策を導き出すこと、解決策を導き出した上で実行すること、実行した上で検証すること。西側と非西側が、ここまでできる日は来るのでしょうか。

 おそらくその日が来るころには、ウクライナ危機は終わっているかもしれません。そして原油価格はいまよりも、安い水準で推移しているかもしれません。西側(消費国)も非西側(産油国など)も、納得できるSDGsが実現していることでしょう。

 そのような日が来るまで、ウクライナ危機や、それが一因で固定化されている西側と非西側の分断、そして高インフレ、原油高は、続く。筆者はそう考えています。

[参考]エネルギー関連の投資商品例

国内株式

INPEX
出光興産

国内ETF・ETN

NNドバイ原油先物ブル
NF原油インデックス連動型上場
WTI原油価格連動型上場投信
NNドバイ原油先物ベア

外国株式

エクソン・モービル
シェブロン
オクシデンタル・ペトロリアム

海外ETF

iシェアーズ グローバル・エネルギー ETF
エネルギー・セレクト・セクター SPDR ファンド
グローバルX MLP
グローバルX URANIUM
グローバルX 自動運転&EV ETF
ヴァンエック・ウラン+原子力エネルギーETF

投資信託

UBS原油先物ファンド
米国エネルギー・ハイインカム・ファンド
シェール関連株オープン

海外先物

WTI原油(ミニあり)

CFD

WTI原油
ブレント原油
天然ガス