源泉徴収あり・株式数比例配分方式で受けとった配当金のみに適用されるルールとは

 では、なぜこのようになってしまうのでしょうか?

 これは税務上の規定により、「源泉徴収ありの特定口座かつ株式数比例配分方式」で受け取った配当金は、口座ごとに「全額を申告する」か「全額を申告しない」かのどちらかを選ぶことになっているからです。

 つまり、200万円の配当金につき全て確定申告するか、全て確定申告しないかの二者択一しかできないのです。

 実は、上場株式等の配当金を確定申告するかどうかの判断は、配当金をもらった銘柄ごと、かつもらった都度(同じ銘柄で中間配当と期末配当をもらった場合はそれぞれ別個に)行ってよいというのが原則です。

 ところが、源泉徴収ありの特定口座かつ株式数比例配分方式で受け取った配当金については、口座内で受け取った配当金を「すべて申告する」か「すべて申告しない」かのいずれかしか選択できないのです。

解決策は「源泉徴収なし」・「株式数比例配分方式以外」

 これらを解決するために、まず「源泉徴収なしの特定口座」にすることが考えられます。

 こうすれば、原則通り配当金につき銘柄ごと、1回に受け取るごとに確定申告するかどうか選択できます。

 上記の例でいえば、配当金のうち、繰り越してきた譲渡損失と同額の30万円を少し超えるくらいの額(実際受け取った配当金を組み合わせて最も有利となる額を計算します)だけ、申告分離課税で申告することで、追加的な税負担や保険料負担を回避することができます。 

 また、シミュレーションをしてみて、あえて譲渡損失と相殺をせず、総合課税で確定申告した方が有利ならそちらを選択することもできます。この時も、受け取った配当金の全額ではなく、一部だけを申告した方が有利であれば、それを選択することができます。

 ただし、源泉徴収なしの特定口座の場合は、株式等の譲渡益(売却益)が生じた場合、原則として確定申告が必要となります。多額の売却益が出た場合、源泉徴収ありであれば申告しなくて良いですが、源泉徴収なしだと申告しないといけないので、その結果配偶者控除や国民健康保険料などに影響が生じてしまう可能性があります。

 そこでもう一つ考えられるのが、源泉徴収ありの特定口座のまま、配当金の受け取り方法を株式数比例配分方式以外の方法にするというものです。そうすれば特定口座内に配当金を受け入れない形になりますので、原則通り銘柄ごと、1回に受け取るごとに配当金を確定申告するかどうか選択できます。 

 このように、配当金の受け取り方一つとっても、有利な方法が全ての人に共通とはなりませんし、シチュエーションによって有利な方法が変わることもあります。ここが証券税制の奥深く、難しいところでもあります。

 株式数比例配分方式を選択しておかないとNISA口座の配当金が非課税にならないというデメリットも考慮した上で、最善の方法を模索していく必要があります。

 それでも、所得が増えると国民健康保険料が増額され、かつ配当金の受け取り額が多額な方は、あえて「源泉徴収ありの特定口座+株式数比例配分方式」以外の方法で配当金を受け取ることで、取りうる選択肢が増えて有利になることがありえますから、検討の余地があるでしょう。

注)証券税制は非常に複雑で、個々人により、またその時々の状況により取り得る選択肢が大きく異なります。また、筆者は本コラムの記述内容につき正確性を保証することはできません。
本コラムの記述内容をもとに実行したことにより生じた結果につき、筆者および楽天証券は責任を負いませんので、事前に税理士・税務署などとよく相談した上で実行するかどうかご判断ください。