シャッターストック

1)画像、映像、イラスト、音楽素材などの販売大手

 シャッターストックは、個人や企業のクリエーターの創作活動のために、画像(写真)、映像、イラスト、音楽素材を販売する事業の大手です。競合相手は、ゲッティ・イメージズ、アドビ、Freepik、StoryBlocks、ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング・グループ、ソニー・ミュージック・パブリッシング、グーグル・イメージズなどです。

 2022年12月末時点で保有するコンテンツは、画像4億3,300万点以上、動画2,800万点以上、エディトリアル(ニュース、スポーツ、エンタテインメント関連画像)5,000万点以上であり、年々増加しています。これらのコンテンツは、著作権フリーあるいは著作権問題が発生しないように対価が支払われています。

 料金は、企業向けの都度販売から個人向けの年額定額料金などがあります。

2)2022年12月期4Qは5.8%増収、47.9%営業減益

 シャッターストックの2022年12月期4Q(2022年10-12月期、以下前4Q)は、売上高2.177億ドル(前年比5.8%増)、営業利益760万ドル(同47.9%減)となりました。

 販路別に見ると、Eコマース向けは1.223億ドル(同5.5%減)となり減収になりました。一方で、エンタープライズ向け(企業向け)は9,530万ドル(同24.7%増)と好調でした。Eコマース向けに対してエンタープライズ向け売上高が接近しており、企業顧客と大口顧客が増加していると思われます。

 地域別売上高を見ると、北米向けは9,830万ドル(前年比22.3%増)と好調でした。2022年5月に買収が成立した世界最大のビデオマーケットプレイス「POND5」の寄与があったほか、企業向けが好調でした。

 一方で、ヨーロッパ向けは6,020万ドル(同8.9%減)と前2Qから前年割れが続いています。ヨーロッパにおける景気後退の影響を受けています。その他地域向けも5,930万ドル(同0.2%増)と横ばいでした。

 北米向けはPOND5の寄与で好調でしたが、ドル高の影響を受けたこと、ヨーロッパで減収が続いていること、POND5と2021年のSplash Newsの買収に伴う償却費の増加、リース資産の減損等によって、大幅減益となりました。

 なお、全社売上高は、POND5の寄与を除くと前年比で横ばいでした。

表4 シャッターストックの業績

株価(NYSE)    71.95米ドル(2023年3月30日)
時価総額    2,577百万ドル(2023年3月30日)
発行済株数    36.147百万株(完全希薄化後、Diluted)
発行済株数    35.821百万株(完全希薄化前、Basic)
単位:百万ドル、ドル、%、倍
出所:会社資料より楽天証券作成。
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:EPSは完全希薄化後発行済み株式数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前発行済み株式数で計算。
注3:会社予想は予想レンジのレンジ平均値。

表5 シャッターストックの販路別売上高(四半期)

単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成

表6 シャッターストックの販路別売上高(年度)

単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ2 シャッターストック:地域別売上高(四半期)

単位:100万ドル、出所:会社資料より楽天証券作成

3)2023年1月から全顧客が「Shutterstock.AI」を利用できるようになった

 前述のように、2022年10月にシャッターストックはOpenAIとの提携を強化し、OpenAIの画像生成AI「DALL-E2」をベースにした「Shutterstock.AI」を開発し、2023年1月から全顧客への提供を始めました。会社側によれば、初期のデータでは、このトラフィックの75%が潜在的な新規顧客から(加入したばかりの会員と思われる。加入後1カ月間は無料になる)、25%が既存顧客からのものです。「Shutterstock.AI」がローンチしてから2週間で約300万件のコンテンツがAIによって生成されました。会社側は収益化の方策を検討し、注力する方針です。

 2023年12月期の会社側ガイダンスは、売上高8.36~8.53億ドルです。レンジ平均は8.445億ドル(前年比2.0%増)となりますが、これには「Shutterstock.AI」の収益寄与、新規サービスの「コンピュータービジョン」関連データセットなどの寄与を考慮していない保守的なものと言えます。

 これに対して楽天証券では、2023年12月期売上高を会社予想レンジの上限と予想します。即ち2023年12月期通期を売上高8.53億ドル(前年比3.0%増)、営業利益1.00億ドル(同6.8%増)と予想します。また、2024年12月期は企業顧客の増加と企業向け売上高の増加、「Shutterstock.AI」の収益寄与、ヨーロッパ、その他地域の景気回復を予想し、売上高9.50億ドル(同11.4%増)、営業利益1.20億ドル(同20.0%増)と予想します。

 画像生成AIの需要は大きいと思われますが、マイクロソフトの脅威もまた大きいと思われるため、そのリスクも考慮しました。

表7 シャッターストックの主要経営指標

出所:会社資料より楽天証券作成

4)今後6~12カ月間の目標株価を95ドルとする

 今後6~12カ月間の目標株価を95ドルとします。2024年12月期楽天証券予想EPS2.68ドルに、画像生成AIの将来性とマイクロソフトのリスクの両方を考慮し、想定PERを35倍前後として当てはめました。

 企業規模が比較的小さいためリスクはありますが、中長期で投資妙味を感じます。

本レポートに掲載した銘柄アドビ(ADBE、NASDAQ)シャッターストック(SSTK、NYSE)