2022年の東証再編、物価高などをきっかけに、優待内容の見直しを進める企業も増。また、米国株人気が高まったことにより、優待品ではなく配当によって、全株主へ平等に利益を還元するという流れも強まった。

 優待銘柄や優待投資家にとってはやや逆風と言える昨今だが、株主と企業をつなぐ株主優待は、日本人にとって親しみのある制度。日本固有の「株主優待制度」は、今後、どういう方向へ向かうのか…。2022年9月発表の「大和インベスター・リレーションズ」の優待白書をもとに、令和の優待銘柄のトレンドを探っていこう。

◆データ提供:大和インベスター・リレーションズ

◆参考データについて:2022年9月末時点の情報をもとに大和インベスター・リレーションズが調査した、上場企業に関する「株主優待ガイド」を参照し、トウシル編集部が必要データを抽出。大和インベスター・リレーションズの調査時点で、優待の実績があった場合でも、掲載を辞退した企業などは含まず。

※優待制度導入企業の実施内容については、必ず企業の公式情報などをご確認ください。

優待制度の新設・廃止トレンドをチェック!

Q この数年で、優待実施企業は増えた?減った?

A 優待実施企業、3年連続で減少へ…

 株主優待制度を実施している企業は、ここ30年で初めて、3年連続で減少へ。昨年度のインフレ・物価高などで、株主優待制度の維持が難しくなったケースも考えられる。優待品の中身だけでなく、原油高騰による発送料の負荷により、優待制度の見直しをする企業が増えた可能性もある。 

Q 優待廃止の理由は?

A 経営不振ではなく、公平性重視が主理由

 物価高や円安の嵐が吹き荒れたものの、優待制度を廃止する理由は「経営不振」ではなく「公平な利益還元のため」。大和インベスター・リレーションズ株式会社 コンサルティング部・濱口政己氏(以下、濱口氏)は、「優待廃止と同時に増配を発表している企業も多くあり、経営不振ではなく、本当に[公平な利益還元]を意識して廃止した企業が多いと思われます」と語る。

 優待廃止というと、上場廃止や経営不振などのネガティブ要因が浮かんだ平成とは異なり、今後は株主への公平な利益還元のために制度自体を見直すという、ポジティブな方向転換がトレンドになっていることがわかる。

令和の優待トレンドをチェック!

Q 優待内容は何が多い?

A 飲食料品がトップ、プリペイドカードも多数

 届いたときからテンションが上がる「飲食料品」を優待品とする企業が最大の635社。また、優待投資家の人気が高い「金券系」を採用する企業も508社と多数。発送料金が安く、発送も簡易で、導入する企業側のハードルが低いのも理由の一つと思われる。中でも優待投資家の人気が高い「QUOカード」は、投資家の居住区を選ばないため、導入している企業が多数と思われる。

「飲食料品を優待としている企業については、自社製品を採用しているケースが多いと思います。また、プリペイドカードや食事割引券などについては、紙のクーポンからデジタルクーポンに変更する動きは徐々に増えている感じがあります」(濱口氏)。

Q 優待発生条件のトレンドは?

A 継続保有が条件の企業が増

 優待獲得に「継続保有」を条件とする企業が微増中。権利付き最終日後に売却する優待品が目的の投資家ではなく、長く安定して保有する継続投資家の厚遇に力を入れる傾向。長期保有による優遇を設ける企業もあり、企業と株主、相思相愛の関係が構築されつつあるようだ。

Q 最近の優待トレンドは?

A 選べる優待、社会貢献がじわり人気

 優待品が単一ではなく、個人の希望で複数から選択できる優待制度が増。さらには、寄付などの社会貢献を選べるように優待品を設定する企業も増えている。企業・投資家ともに、優待に求めるものや考え方が柔軟になってきたことが、令和優待の大きなトレンドともいえる。