アルファベットが急落

 2月8日、アルファベット(ティッカーシンボル:GOOG)株が▲7.4%の急落を演じました。

 同社のグーグル部門がマイクロソフト(ティッカーシンボル:MSFT)の後押しするオープンAI社のチャットGPTに対抗するバード(Bard)というサービスをデモ実演した際、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に関する質問をしたところ、さっそく事実誤認の説明が飛び出したことが原因です。

 この事件はAIの完成度がいまだ低く、信頼性に問題がある点を痛感させました。

 アルファベットはそのような限界をよく知っているので時期尚早にAIサービスを開始すると訴訟の嵐になることを恐れ、これまで一般への公開は躊躇(ちゅうちょ)してきました。

 ところがチャットGPTがいち早く無料でこのサービスを一般に公開、しかもその背後にはマイクロソフトの財政・技術面での支援があるということで対抗上公開に踏み切らざるを得なくなったのです。

 バードがとても人様からおカネを徴収できるような完成度ではないということは課金戦略のロードマップは曖昧模糊(もこ)としていることを意味します。

 その一方でチャットGPTが流行しはじめるとグーグル検索の牙城はだんだん崩れてゆくわけで、検索広告への依存が高いアルファベットにとってこれは死活問題です。

曲がり角に立つGAFAM

 この一件に象徴される如く、最近のGAFAM(アルファベット、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフトの総称)を巡る経営環境は悪い方へ激変しています。

 具体的には;

  1. ネット広告市場の飽和
  2. ネット通販市場の成長鈍化
  3. 消費者向けデバイス全般の販売不振

により、昔と同じような成長をひねり出すことが極めて困難になっているということです。これらはネットが世界の隅々まで行き渡った結果起きている「フロンティアの喪失」なので、いままでと同じやり方で難局を乗り切ることはできません。

アルファベットの決算

 アルファベットの第4四半期の決算は一株当たり利益が予想$1.19に対し結果$1.05と未達だったことに加え売上高も予想764.9億ドルに対し結果760.5億ドルと落胆させられる内容でした。売上高成長率は前年同期比わずか+1.0%でした。

 とりわけYouTube広告が前期に続いて今期も前年同期比でマイナスを記録したことは投資家にネット広告環境の暗転を印象付けました。YouTube広告は前年比▲7.8%でした。

アップルの決算

 アップル(ティッカーシンボル:AAPL)の第1四半期(12月期)決算は一株当たり利益が予想$1.95に対し結果$1.88と未達でした。加えて売上高も予想1,216.7億ドルに対し結果1,171.5億ドルとがっかりさせられる数字でした。売上高成長率は前年同期比▲5.5%でした。

 とりわけiPhone売上高は予想690億ドルに対し結果658億ドルと落胆を誘う数字でした。さらにMac売上高も予想98億ドルに届かない77億ドルでした。

 近年重要度を増しているサービス売上高は予想208億ドルに一致する208億ドルでした。

 第2四半期の見通しに関しては、やはり今回と同じ▲5.5%前後の成長率になることが表明されました。これは市場の予想+3%より明らかに低いです。

メタの決算発表

 メタ(ティッカーシンボル:META)はこのところずっとひどい決算を出してきた関係で事前のアナリストの予想数字が低かったのに助けられ、良い決算を出しました。

 第4四半期の一株当たり利益は予想$2.23に対し結果$3.00、売上高予想316.9億ドルにたいし結果321.6億ドル、売上高成長率は前年同期比▲4.5%でした。

 第1四半期の売上高は予想272.5億ドルに対し新ガイダンス260億~285億ドルが提示されました。中値は予想に一致しました。

アマゾンの決算

 アマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)の第4四半期決算は一株当たり利益が予想17セントに対し3セントでした。ただしこれはリヴィアン・オートモーティブ(ティッカーシンボル:RIVN)の株価が下落したことによる見なし損23億ドルが含まれているのでコンセンサス予想と単純に比較することはできません。売上高は予想1,457.2億ドルに対し結果1,492億ドルでした。

 売上高成長率は前年同期比+8.6%でした。ただしアマゾンは小売業であり米国のインフレは+6.5%であることを考えると物価の上昇分を除いた成長はとても低いと考えるべきです。

 注目されたAWS売上高は前年同期比+20.2%成長の213.87億ドルでした。セグメント・営業マージンは24.3%でした。これは前年同期の29.8%から大幅に下落しました。ドル箱部門であるAWSが値引き圧力に晒されていることが明らかになり、投資家はこれを嫌気しました。

マイクロソフトの決算

 マイクロソフトの第2四半期(12月期)決算は一株当たり利益が予想$2.31に対し結果$2.32と辛うじて上回ったものの売上高は予想531.7億ドルに対し結果527.5億ドルと未達でした。売上高成長率は前年同期比+2.0%でした。

 注目されたアジュール部門売上高は前年同期比+31%でした。これは9月期の+35%から減速しました。

まとめ

 GAFAMの成長率は限りなくゼロに近づいています。各社は人員削減を発表していますがまだまだコスト削減の努力は手ぬるいです。成長のための「次の一手」が見えない以上、値ごろ感からこのあたりの銘柄に手を出すべきではありません。