先週の日経平均株価(225種)は前週比373円安。米国の景気後退懸念が重く圧しかかった1週間でした。

 12月19日(月)~23日(金)は、16日(金)夜の米国株続落を受け、日本株も下落して始まりました。

先週:米CPIで上げ、FOMCで小幅安、景気後退を示す小売売上高で急落!

 先週は米国の重要経済指標やイベントに右往左往した1週間でした。

 株式市場が固唾(かたず)を飲んで見守った13日(火)の米国の11月CPI(消費者物価指数)の発表は前年同月比7.1%上昇と5カ月連続で低下。

 前月比も0.1%の上昇にとどまり、予想を大きく下回ったことから、米国株は上昇しました。

 翌14日(水)には米国の政策金利を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)が0.5%の利上げを決定しました。利上げ幅は予想通りでした。

 しかし「ドット・チャート」と呼ばれるFOMC参加メンバーによる2023年末の政策金利予想の中央値が5.1%に上昇。

 米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長は「まったく痛みをともなわずに物価安定を取り戻す方法はない」と述べ、景気を犠牲にしても物価高の抑え込みを続けるタカ派的な姿勢を強調しました。

 株式市場は若干ネガティブな反応で終わりましたが、そこに追撃を与えたのは、15日(木)発表の11月の米国小売売上高。

 前月比0.6%低下と下げ幅は11カ月ぶりの大きさとなり、市場予想も下回りました。

 ここまで堅調だった個人消費も物価高に勝てず、懸念された景気後退がついに現実味を帯び始めた、といった悲観論一色となり、多くの機関投資家が運用指針にする15日のS&P500種指数は前日比2.5%近い下落となりました。

 さらに翌16日(金)にはECB(欧州中央銀行)が4会合連続の0.5%利上げを決定。

 ラガルド総裁は「ECBが方針転換したと考える人は間違っている」とFRBのパウエル議長同様のタカ派発言に終始。

 また同日発表の米国総合PMI(購買担当者景気指数)の12月速報値は好不調の境目である50を大幅に下回る44.6に低下。

 巨額のオプション取引の清算日でもあった米国市場は続落しました。

 一方、日本では15日(木)、岸田政権が掲げる今後5年間で総額43兆円に上る防衛費の大幅増加を賄うため、自民党税制調査会が増税案を実施時期未定のまま了承。

 これを受け、防衛省向けに哨戒機や輸送機などを製造する川崎重工業(7012)が前週比で7.7%も上昇するなど、防衛関連銘柄が好調でした。

 コンテナ船市況の下げ止まりが伝えられた商船三井(9104)など海運セクターが先週に引き続き、週間の業種別上昇率トップになったのも、景気鈍化懸念を打ち消す好材料といえるでしょう。

今週:米住宅、物価指数に注意!40年ぶりの国内物価高も重しに!? 

 今週は25日(日)のクリスマス休暇が近づき、売買高が減少するため、思わぬ株価の乱高下に注意が必要です。

 米国の経済指標としては、20日(火)に11月の住宅着工件数、21日(水)に11月中古住宅販売件数など、FRBの大幅利上げを受けて落ち込みが続く住宅関連指標が相次いで発表されます。

 21日(水)には米民間調査会社コンファレンス・ボードの12月消費者信頼感指数、23日(金)にはFRBが物価指標として最重要視する11月の個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)も発表されます。

 前回10月分は、個人消費支出が前月比0.8%増と予想通りの増加となる一方で、PCEデフレーターは前年同月比6%増と伸び率が鈍化。

 株価にとっていい結果でした。

 米国の経済指標を悲観して下落が続く12月相場ですが、年末最後の重要指標のPCEデフレーターがいい方向に転ぶことに期待したいものです。

 日本では20日(火)に日本銀行の金融政策決定会合が終了。欧米の中央銀行とは一線を画す量的金融緩和策の継続が表明されそうです。

 2023年4月に2期10年の任期満了が近づく日銀の黒田東彦総裁ですが、来年に入ると次期総裁人事を巡る思惑で、日本株が乱高下する局面も起こるでしょう。

 23日(金)には11月の国内の11月のCPIも発表。生鮮食料品を除く前回10月のコアCPIは前年比3.6%増と、約40年ぶりの高い伸びに。

 今回11月分も前年比3.7%増と伸びが加速する予想です。

 10月後半に1ドル152円目前まで迫った円安を受け、国内物価も上昇傾向が鮮明ですが、欧米に比べると低水準です。

 その原因としては、日本人の給与がいまだ伸び悩んでいることも大きいでしょう。

 国税庁が発表した令和3年(2021年)度の民間企業の平均給与は前年比2.4%増の443万円。

 コロナ禍での2年連続減少から、ようやくプラスに転換しましたが、ここ30年近くあまり上がっていません。

 空前の物価高が続く米国などでは、労働市場の逼迫(ひっぱく)で平均時給の伸び率が依然として高水準です。

 物価は上昇するものの、給料もそれなりに上がるというのが米国の現状です。

 それに対して日本では、物価が上昇しても、給料はほとんど上がりません。

 日本人の給料を上げるためには、米国のように労働市場をより自由化して解雇しやすくした方がいいのか、それとも投資機会も見いだせず企業がため込んだ500兆円超の内部留保を賃上げに回したほうがいいのか、議論の分かれるところ。

 2023年の株式市場が上向きに転じるためにも、賃上げに向けたポジティブな議論の活発化に期待したいものです。