お金と投資をもっと身近に
facebook twitter
「市場の効率性」を考える5つの質問
山崎 元
ホンネの投資教室
楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元の提供レポートです。経済やマーケット、株式投資、資産運用のノウハウと考え方など幅広い情報提供をおこなってまいります。資産運用の参考にお役立てく…

「市場の効率性」を考える5つの質問

2010/12/3
楽天証券経済研究所客員研究員として活躍する経済評論家・山崎元による「ホンネの投資教室」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
facebook twitter メールで送る 印刷

今回は「市場の効率性」について、質問を発しながら段階的に考えてみたい。市場が効率的であることを、どのように確かめることができるのかをはっきりさせておきたい。

暫定的に市場の効率性の定義を与えておこう。市場が効率的であるとは、
(1)情報が効率的に伝わり、
(2)市場参加者が正しく解釈するので、
(3)正しい価格が実現している状態のことだとする。

つまり、株式市場でいえば、正しい株価が常に形成されているということだと考えよう。この定義は、正しい資産価格の下に資金・資源が配分されるので、
(4)資産市場は、経済の資源配分の効率性にも貢献している、
という含意を持っている。

では、質問その1。

質問 1
市場が効率的なら、プロが運用するアクティブ・ファンドも市場平均に勝てない、というのは確からしいか?

これの答えは、「Yes」でいいだろう。常に株価が正しく形成されているということは、他人よりも有利な投資を行うチャンスがないということだから、前記の意味で市場が効率的なら、アクティブ・ファンドは市場平均を上回るチャンスがない。ここは、問題がなさそうだ。

次の質問を考えてみて欲しい。

質問 2
アクティブ運用が市場平均に勝てないとするとき、市場が効率的でないことがあり得るか? あり得るとすれば、それはどんな場合か?

市場が効率的ならばアクティブ運用が市場平均に勝てないということはいいとしよう。だが、論理的には、逆は必ずしも真ではない。たとえば、「事態」の集合を考えるとして、アクティブ運用が市場平均に勝てない事態の集合の要素で、正しくない株価が形成されている事態の集合に入らない要素が存在するか、ということだ。

この要素(事態)は、現実に存在し得るのではないか。その要素を考えるための質問が、質問3だ。

質問 3
市場に参加する素人も、プロも、たいして変わらない程度の(貧弱な)情報力・解釈力しか持っていない場合に、アクティブ運用は市場平均とどのような関係になるか?

このケースでは、株価が正しくない場合でも、プロが素人よりも上手に正しい株価を知ることができるわけではないから、プロが市場平均に勝てないという事態が起こり得る。市場参加者は、いわば「ドングリの背比べ」のように、甲乙つけがたいレベル差でひしめいていて、且つ常に正しい株価を形成できるほど有能ではないという状況だ。この状況を「ドングリの背比べ仮説」と呼んでおこう。

つまり、この段階で、アクティブ運用が市場平均に勝てるか否かで市場の効率性を検証しようとする試みは、論理的に正しくないのではないかという疑念が湧く。

それでは、「ドングリの背比べ仮説」が現実に成立しているかもしれないという「現実」はあるだろうか。この仮説は、アクティブ運用が市場平均に勝てない状況で、且つ株価が誤って形成されているという状況であれば成立している。

内外いずれの市場にあっても、平均的にみてアクティブ運用が市場平均に勝っていないという状況はほぼ現実に近い。前半の必要条件は満たされている。では、次の質問の状況をどう考えるか。

質問 4
たとえば、以下の現象は市場が非効率的であること(誤った株価が形成されること)をサポートする事実といえるか?
・「バブル」の発生
・市場参加者のポートフォリオの相違
・各種のアノマリー現象

端的にいって、大規模なバブルが比較的頻繁に起こっていることは、市場が株価を正しく形成していないことの有力な証拠ではないか。たとえば、アメリカで大規模に起こった「ネット・バブル」のような株価形成を、「その時点では正しい情報を正しく解釈していた株価形成だった」と考えることには無理があると思われる。1980年代後半に発生した、日本の株式バブルも、もちろん同様だ。

また、市場の情報伝達と参加者による解釈が正しければ、CAPM(資本資産価格モデル)が考えるように、投資家が持つリスク資産のポートフォリオ(マーケット・ポートフォリオ)が同様なものになる事態が考えられるが、現実には、多くの経済主体が異なるポートフォリオを保有している。

ただし、この点に関しては、情報は共通で判断力はあっても、将来の消費や収入のパターンが異なる投資家が、将来のリスクとの関連で現在異なるポートフォリオを持つという可能性はある。しかし、それでも、現在さまざまな投資家がこれだけお互いにかけ離れたポートフォリオを持つ事態が、将来のリスクのヘッジで説明できるとは考えにくい。

小型株効果や、割安株効果などのアノマリー効果の実証研究に対応する過去の株式リターンのパターンも、過去において、まとまった株価形成のミスがあったことの傍証として考えることができるのではないか。

また、率直にいって、ファンドマネジャーは、個々の株式の絶対的な適正価格を自分で自信を持って計算した上で投資しているわけではない。将来の利益の予想も、将来利益を現在価値に割り引く適当な割引率も、どちらについても、自分にとって難しくて分からないけれども、ライバルたちも同様だろうと思いながらゲームを戦っているのが実情だ。

では、市場平均はなぜアクティブ・ファンドの平均に勝つのかを、質問5で考えてみたい。

質問 5
市場参加者は、11人のファンドマネジャーだけだとする。11人のうちの1人が、他の10人のポートフォリオの「平均」(時価総額で加重する)を取って運用すると何が起こるか? ただし、10人は「アクティブ・マネージャー」なので運用手数料が高い。

この場合、市場の効率性には全く関係なく、10人のアクティブ・マネージャーの平均に対して、彼らの平均と同じポートフォリオを持つインデックス・マネージャーの運用成績が勝つことが容易に想像できる。

顧客にとっての両者のパフォーマンスの違いは、運用報酬(投資信託なら信託報酬)の違いと共に、10人のアクティブ・マネージャーが売買の度に払う手数料の差も反映される。また、1人のインデックス・マネージャーは、毎期毎期の運用成績でも、通算の運用成績でも相対的に突出して劣後することはないだろう。

質問5の状況を考えると、インデックス・ファンドの優位性は、市場が効率的であるか否か(=株価が正しいか否か)には関係なく成立することがお分かり頂けるだろう。

市場の効率性は、アクティブ運用の可否と結びつけて論じられることが多い。文献によっては、市場の効率性の判断基準を「結局、アクティブ運用は市場平均に勝てるのか?」という問題に置いているものがある。しかし、この基準は、意味がないのだ。

それでは現実の市場はどうなのかというと、株価の正しさはごく大まかで頼りないものであり、市場の参加者はプロアマを問わず「正確な、あるべき株価」を知らないで運用に参加している、という状況だろう。つまり、「ドングリの背比べ」仮説の状況だ。

【この記事に対するアンケート回答はこちらから】

トウシルのオススメ記事

▲トウシルトップページへ

 

つみたてNISA
人気記事ランキングTOP

 

このレポートについてご意見・ご感想をお聞かせください「市場の効率性」を考える5つの質問

本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。

記事についてのアンケート回答確認

「市場の効率性」を考える5つの質問

今回のレポートはいかがでしたか?
コメント

 

 

 

 
フレッシャーズ
 

 
タイムトリップ
 
メールマガジン

直近1日の記事を配信します

配信:平日毎営業日配信
祝日・GW・夏季/冬季休暇 を除く

公式SNS

タイムリーな情報を
ゲットできます

配信:記事配信時 随時
facebookおよびTwitterには一部配信しない記事もあります

TOP
×
トウシル メールマガジン および SNSについて
メールマガジン 申込み

トウシルメールマガジンではレポートやコンテンツ等、直近1日の記事をお知らせします。
本メールは配信希望のお客様に平日毎日お届けしております。
リアルタイムでの情報取得は、公式SNS(facebook、twitter)もあわせてご利用ください。

  • 「メールマガジン 選択/受付」画面から購読を選択できます。
  • 楽天証券のメルマガをすでに配信希望にされている方は、
    初期設定としては購読申し込みとなっている場合があります。
  • メールマガジン購読申し込みには、楽天証券会員登録(口座開設)が必要となります。
Gmailサービスをご利用の方へ
メールマガジンを受信時正しく表示されないことがございます。あらかじめご了承ください。
メールマガジン サンプル
メールマガジンサンプル
  • 「メールマガジン 選択/受付」画面から購読を選択できます。
  • 楽天証券のメルマガをすでに配信希望にされている方は、
    初期設定としては購読申し込みとなっている場合があります。
  • メールマガジン購読申し込みには、楽天証券会員登録(口座開設)が必要となります。
Gmailサービスをご利用の方へ
メールマガジンを受信時正しく表示されないことがございます。あらかじめご了承ください。