NISAの「枠」、今年の分は今年限り

 NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座を持っていると、「今年の枠は今年のうちに」というような案内を証券会社から受けているかもしれません。

 本連載の読者はもうNISAの基本はご存じと思いますが、NISAの非課税投資枠は「年」ごとに設定されています。個人の所得課税が1月1日から12月31日を区切りとしているためです。

 一般NISAなら年120万円、つみたてNISAなら年40万円の枠までが非課税投資できるわけですが、この枠自体は年ごとに消滅していきます。

 来年は来年の枠を使うことになり、今年の未使用枠はもう失われてしまいます。2022年に利用できる120万円の枠を40万円使い残した人が、2023年に160万円NISA口座に入金することはできないわけです。

 この考え方はiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)も同様です。iDeCoやNISAは、最初からいきなり高額入金ができないことと(ゼロからスタートする)、使い残した枠はもう戻ってこないことを踏まえ、できるだけ活用を考えたいところです。

 今回は年末を控えて、一般NISA、つみたてNISAについてチェックし、また「あえて使い残し枠を使わない選択肢」も考えておきたいと思います。

一般NISA編:使い残し枠で追加の投資をしてみる

 一般NISAの場合、毎月10万円に相当する非課税投資枠があり、これは普通の個人投資家においては十分な金額でしょう。多くの人は使い残しが発生するかもしれません。

 一般NISAは購入タイミングが自由に決定できますので、買い付けが年内に完了するタイミングにだけ注意すれば、好きな金額を追加購入して年120万円の枠の有効活用を行うことができます。

 つみたてNISAと大きく異なる点としては、個別株を購入することができることでしょう。株主優待狙いで保有銘柄を追加するとか、10万円単位で投資枠を大きく穴埋めしていくような選択肢が可能になります。

 年末は冬ボーナスが支給されるので、最後にギリギリ投資資金が手に入る人も多いでしょう。NISAは売却の自由度が高いこともあり、iDeCoのように投資資金が60歳まで固定されることもありません。

 ある程度中長期保有を念頭に置いているなら、一般NISA枠を使った追加購入を、考えてみてもいいでしょう。

つみたてNISA編:追加の自由度があまりない

 つみたてNISAの場合、毎月定期引き落としによる積立投資設定をしている人が多いでしょう。この場合、月3.33万円(年39.96万円)の上限にしている場合は、使い残しの心配はあまりありません。

 月3.3万円で設定していた場合は、4,000円の使い残しが生じますが、それでも大きな未使用枠とはなりません。

 もともとの限度額が低いこともあり、最初から上限に近い設定をしている人が多いと思います。投資信託の定額購入をできる利便性は、ここでは追加購入の問題を起きにくくします。

 また、仕組み上も任意の追加購入が容認されておらず、「年末に余ったから10万円分埋めておこうか」というような使い方はできません。

 月3.3万円ではなく、月1~2万円の積立投資をして枠を余らせて年末を迎えている方は、「来年の未使用枠減」を検討してみましょう。

 定期的な投信購入額を増額する手続きを今からでもしておけば、来年は年40万円の枠をフル活用した投資が行えます。

 手続きや証券会社各社の仕様にもよりますが、年内の最後の購入が終わったら、1月の購入から月3.3万円に切り替わるように手続きをしておくことになります。

 できることなら年内でも次回購入から月3.3万円にしてもいいでしょう。

無理して満額埋めなくてもいい人・パターン

 一方でオススメできないパターンもいくつかあります。「枠を使い切るために、普通なら買わないであろう個別銘柄の注文を入れる」のようなものはオススメできません。

 投資の必要性を見いだせない(言い換えれば値上がりにあまり期待できないと内心では考えている)投資をしても、中長期保有につながるとは考えにくいでしょう。

 値下がりして見切りをつけたとしても損益通算の対象にはなりませんので、含み損を抱えて手放したら全く意味がない投資になってしまいます。

 同様に、「ちょっと割高感があるけど、まだ枠を残しているし買っておこうか」のような使い方もあまりオススメできないパターンです。

 こちらも値下がり後に手放してもしょうがないということになりますし、大きな上昇が期待できなければ譲渡益非課税のメリットもフル活用できません。

 言うまでもありませんが、家計が赤字になっていても投資をするとか、「枠が余っているからちょっとキャッシングして投資資金を調達しよう」などということは絶対にやめておきましょう。

 無理をするくらいなら、枠をあえて余らせて越年するのもまた、投資判断なのです。

2023年のNISA活用方法を今から考えておこう

 先ほど、つみたてNISAの課題として、定期購入で年40万円の枠組みが埋まるように手続きをしておくことを紹介しましたが、今年使い残した枠を意識し、来年のNISA口座活用法を考えておくのは一般NISAでも同様です。

 一般NISAを「下がったとき、とりあえず買い注文を入れる」のように使っていたら、下げ相場が続いてずっと手が出ないことがあります。

 こうした人は、定期購入の枠を導入してみるのも一考です。120万円全額といかなくても、半額くらいを積立投資してみるのはいいと思います。あなたさえよければ、120万円の枠を積立投資したってかまわないと思います。

 また、つみたてNISAの枠を楽々と使い切ってしまい、投資意欲の向上とともに一般NISAへの切り替えを検討しているなら、基本的には年内に手続きを進めておく必要があります。(翌年の最初のつみたてNISA購入が行われたら、翌年のNISA口座はつみたてNISAで確定される)。こちらも年内に考えてみてはどうでしょう。

 NISAの制度改正の可能性(恒久化措置や一本化など)が高いものの、2023年については現行のままいくことは間違いありません。今のうちから、来年のことをしっかり考えても、鬼は笑わないと思います。

「2023年のNISA戦略」について少し考える時間をとってみてはいかがでしょうか。