まず安全資産の比率を決める

 今日は第3回、アセット・アロケーションをどのように決め、どのように投資ポートフォリオを組んでいったら良いか、私の考えをお伝えします。

 最初に決めなければならないのは、リスク資産と安全資産の比率です。

◆リスク資産(リスクをとってリターンを狙う金融商品)を何%にするか?
◆安全資産(元本が棄損するリスクが小さい金融商品)を何%にするか?

 GPIFと同じアセット・アロケーション(国内株式25%:外国株式25%:外国債券25%:国内債券25%)を組む場合は以下の通りとなります。

◆リスク資産(国内株式+外国株式+外国債券)=75%
◆安全資産(国内債券:現預金・個人向け国債)=25%

 国内債券には、かなりリスクの高いものもあります(低信用債券など)。そのような高リスクの国内債券はリスク資産の枠でカウントする必要があります。今日のレポートでは、説明をシンプルにするため、国内債券の枠では元本確保型の現預金や個人向け国債のみに投資するものとします。

 安全資産の比率の決め方として、一般的には次のルールに従ってください。

【1】近い将来、使う可能性のあるお金は、安全資産に入れておく

 さまざまなライフイベント(結婚・マンションや自動車の購入・子供の進学・海外旅行…)で、まとまったお金が必要になることがあります。近い将来に使う可能性があるお金は、安全資産に入れておくべきです。

【2】急に予期せぬ出費が必要になった時に困らないようにするための予備のお金は、安全資産に入れておく

 予期せぬ出費は、毎年のように出るものです。全てに備えることは不可能ですが、一定額はすぐに使える現預金などに置いておいた方が良いと思います。

【3】株などリスク資産への投資は原則、景気1サイクル(4~5年)以上、使う予定のない余裕資金で行う

 株式投資は、原則、景気1サイクル以上持つ予定で始めるのが良いと思います。私はファンドマネージャー時代、年金運用で株を買う時はいつもそのような考えで投資銘柄を選んでいました。

 景気1サイクルには、「景気拡大期」と「景気後退(減速)期」が含まれます。投資してすぐに景気が悪化する場合、投資した株式に含み損が生じる可能性があります。それでも、いつまでも景気が悪いままということはありません。次に景気が良くなる景気拡大期まで持てば、プラスのリターンが得られる可能性が高くなると思います。

 それなら「景気が良い時だけ株を持って景気が悪くなる時は株を売れば良い」と思う人もいるかもしれませんが、それは言うのは簡単でもやるのは至難の業です。景気判断はよく外れます。特に、市場コンセンサス予想は外れます。

 みんなが悲観の底にいて「いよいよ恐慌が来る」と覚悟する時に、景気は急に回復することがあります。逆に、みんなが楽観の頂点にいて「好景気がいつまでも続く」と思っている時に、突然景気が急激に悪化することがあります。

 不確かな景気予測にベットする(賭ける)ことなく、株式投資は景気1サイクル持てる資金で行うべきだと思います。

【4】将来、獲得する予定の所得が大きい人は、安全資産は少な目で良い

 生涯年収が1億4,000万円(年収400万円で35年働くイメージ)の人を前提に話します。まだ20代で働き始めたばかりで貯蓄が100万円の時、保有しているのは以下二つです:金融資産100万円・人的資産(将来所得を獲得する能力)1億4,000万円。

 この100万円では、高めのリスクをとって超長期投資していくことが可能です。短期的な値下がりがあっても、これから稼ぐ所得から追加で投資していくことで、リターンを安定化させていくことが可能です。

【5】将来、獲得する予定の所得が小さい人は、安全資産は多めが良い

 貯蓄が2,000万円で、年金収入は入るものの、仕事は完全に引退している場合、2,000万円の貯蓄に占める安全資産の比率は高めが良いと思います。

 上記は全て一般論です。個別にいろいろな事情をお持ちの方には、異なる対応が適切になる場合もあります。

 安全資産の比率が決まったら、次に、リスク資産の枠内で何に何%投資するか決めます。細かく議論するときりがないので、今日は国内株式、外国株式、外国債券に等金額(3分の1)ずつ投資することを前提とします。