「資産形成を始めたいけど何をしたら良いかわからない」という質問を読者の方からよく受けます。そういった投資初心者の方のために、資産形成のイロハを解説しています(毎週木曜日掲載)。

 今日は、第3回「ポートフォリオの組み方」を解説します。

第1回・第2回のおさらい

 まず、これまで解説したことをおさらいします。

【第1回】まず家計のバランスシートを作る

 投資を始める前にまず、自分の年間収支や純資産をきちんと把握しましょう。そのためには少なくとも年1回、家計のバランスシートを作りましょう。保有している全ての金融資産(現預金を含む)と金融負債の残高(時価ベース)を書き出し、それを1年前のバランスシートと比較して、1年間の資産増減を計算しましょう。

【1年間の資産の増減】=【年間の収入-支出】+【投資の成果-運用コスト】

 レポート全文は以下からお読みいただけます。

資産形成のイロハ【1】まず家計のバランスシートを作る

【第2回】アセット・アロケーションを決める

 投資成果のほとんどはアセット・アロケーション(資産配分)によって決まります。投資を始める前に、まずアセット・アロケーションを決めましょう。

 参考になる、日本最大の年金基金GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオは、以下の通りです。

 国内株式25%、外国株式25%、外国債券25%、国内債券25%

 現在、国内債券へ投資する価値はほとんどありません。国内債券のところは銀行預金や個人向け国債で問題ありません。

 レポート全文は以下からお読みいただけます。

資産形成のイロハ【2】アセット・アロケーションを決める

まず安全資産の比率を決める

 今日は第3回、アセット・アロケーションをどのように決め、どのように投資ポートフォリオを組んでいったら良いか、私の考えをお伝えします。

 最初に決めなければならないのは、リスク資産と安全資産の比率です。

◆リスク資産(リスクをとってリターンを狙う金融商品)を何%にするか?
◆安全資産(元本が棄損するリスクが小さい金融商品)を何%にするか?

 GPIFと同じアセット・アロケーション(国内株式25%:外国株式25%:外国債券25%:国内債券25%)を組む場合は以下の通りとなります。

◆リスク資産(国内株式+外国株式+外国債券)=75%
◆安全資産(国内債券:現預金・個人向け国債)=25%

 国内債券には、かなりリスクの高いものもあります(低信用債券など)。そのような高リスクの国内債券はリスク資産の枠でカウントする必要があります。今日のレポートでは、説明をシンプルにするため、国内債券の枠では元本確保型の現預金や個人向け国債のみに投資するものとします。

 安全資産の比率の決め方として、一般的には次のルールに従ってください。

【1】近い将来、使う可能性のあるお金は、安全資産に入れておく

 さまざまなライフイベント(結婚・マンションや自動車の購入・子供の進学・海外旅行…)で、まとまったお金が必要になることがあります。近い将来に使う可能性があるお金は、安全資産に入れておくべきです。

【2】急に予期せぬ出費が必要になった時に困らないようにするための予備のお金は、安全資産に入れておく

 予期せぬ出費は、毎年のように出るものです。全てに備えることは不可能ですが、一定額はすぐに使える現預金などに置いておいた方が良いと思います。

【3】株などリスク資産への投資は原則、景気1サイクル(4~5年)以上、使う予定のない余裕資金で行う

 株式投資は、原則、景気1サイクル以上持つ予定で始めるのが良いと思います。私はファンドマネージャー時代、年金運用で株を買う時はいつもそのような考えで投資銘柄を選んでいました。

 景気1サイクルには、「景気拡大期」と「景気後退(減速)期」が含まれます。投資してすぐに景気が悪化する場合、投資した株式に含み損が生じる可能性があります。それでも、いつまでも景気が悪いままということはありません。次に景気が良くなる景気拡大期まで持てば、プラスのリターンが得られる可能性が高くなると思います。

 それなら「景気が良い時だけ株を持って景気が悪くなる時は株を売れば良い」と思う人もいるかもしれませんが、それは言うのは簡単でもやるのは至難の業です。景気判断はよく外れます。特に、市場コンセンサス予想は外れます。

 みんなが悲観の底にいて「いよいよ恐慌が来る」と覚悟する時に、景気は急に回復することがあります。逆に、みんなが楽観の頂点にいて「好景気がいつまでも続く」と思っている時に、突然景気が急激に悪化することがあります。

 不確かな景気予測にベットする(賭ける)ことなく、株式投資は景気1サイクル持てる資金で行うべきだと思います。

【4】将来、獲得する予定の所得が大きい人は、安全資産は少な目で良い

 生涯年収が1億4,000万円(年収400万円で35年働くイメージ)の人を前提に話します。まだ20代で働き始めたばかりで貯蓄が100万円の時、保有しているのは以下二つです:金融資産100万円・人的資産(将来所得を獲得する能力)1億4,000万円。

 この100万円では、高めのリスクをとって超長期投資していくことが可能です。短期的な値下がりがあっても、これから稼ぐ所得から追加で投資していくことで、リターンを安定化させていくことが可能です。

【5】将来、獲得する予定の所得が小さい人は、安全資産は多めが良い

 貯蓄が2,000万円で、年金収入は入るものの、仕事は完全に引退している場合、2,000万円の貯蓄に占める安全資産の比率は高めが良いと思います。

 上記は全て一般論です。個別にいろいろな事情をお持ちの方には、異なる対応が適切になる場合もあります。

 安全資産の比率が決まったら、次に、リスク資産の枠内で何に何%投資するか決めます。細かく議論するときりがないので、今日は国内株式、外国株式、外国債券に等金額(3分の1)ずつ投資することを前提とします。

ポートフォリオの組み方

 それでは、ポートフォリオの組み方を説明します。GPIF型の資産配分を使うことにします。まだ貯蓄がほとんど無い方と、ある程度まとまった投資資金をお持ちの方で、投資の始め方は異なります。

【1】これから貯蓄・投資を始める若い方(まだ貯蓄がほとんど無い方)

 最初から、国内株式25%:外国株式25%:外国債券25%:国内債券25%のポートフォリオを組む必要はありません。

 毎月1万円ずつ積み立てで投資していくとしましょう。GPIFと同じポートフォリオを組むとすると、国内株式2,500円:外国株式2,500円:外国債券2,500円:国内債券2,500円の投資をしなければならないことになります。

 貯蓄が少額の間は、そんなふうに細かく分散投資する必要はありません。投資額が100万円になった時に、国内株式、外国株式、外国債券、国内債券(預金でOK)に25%(25万円)ずつ投資するポートフォリオができているように考えて投資していけば良い、と私は思います。

 最初に投資する1万円は、国内株式だけでも、外国株式だけでも、外国債券だけでも問題ありません。自分が最初に買ってみたいと思うものから始めたら良いと思います。投資額が100万円になった時に、GPIF型ポートフォリオが完成するように積み上げていくと良いでしょう。

【2】投資に回せるまとまったお金をお持ちの方

 既にまとまったお金をお持ちでしたら、最初から国内株式、外国株式、外国債券、国内債券に25%ずつ投資するポートフォリオを組んで良いと思います。ただ、マーケットのボラティリティ(変動性)が大きい時は、数カ月に分けて、時間分散しつつ買っていった方が良いこともあります。

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2022年9月29日:資産形成のイロハ【1】まず家計のバランスシートを作る