ファンド・オブ・ファンズとは外部で運用されるファンドを複数組み入れて構成した運用商品の呼び名だ。

投資信託業界にはファミリー・ファンドと呼ばれるものがあるが、ファミリー・ファンドとは自社内の複数のファンド(マザー・ファンドと呼ばれる)を自社内の別のファンド(ベビー・ファンド)が買い付ける形で運用されるファンド商品の呼び名であり、こちらの方は、運用管理の省力化あるいは品質の均一化を図るための業務遂行上の工夫という色彩が強い。

ファンド・オブ・ファンズは、ヘッジ・ファンドや商品ファンドなど単独ではリスクの大きな商品を複数組み合わせて組成されて年金基金のような機関投資家に販売されることもあるし、最近では、リテール向けに販売されている投資信託を複数組み合わせて別の投資信託を作る形で一般顧客向けに販売される商品もある。

さて、投資家の立場から見ると、ファンド・オブ・ファンズには、どのようなメリット、デメリットがあるのだろうか。

ファンド・オブ・ファンズのメリットとして通常挙げられるのは、(1)リスク分散がされていることと、(2)プロによるファンド選択の二点だ。

これらの外に、ファンド・オブ・ファンズだと商品組成・運用にコストがかからないことが挙げられることがあり、たとえば、立ち上げたばかりの運用会社が、自社に本格的な運用部門を持たなくても商品を販売することができるコスト節約上のメリットがある。しかし、これは、ファンド・オブ・ファンズを作る運用会社にとってのメリットであり、顧客にとってのメリットではない。顧客側では、ファンド・オブ・ファンズが組み込んでいるファンドを直接買い付ける方がローコストになることがほとんどなので、コスト面の問題はむしろデメリット側にカウントすべきだ。

一方、デメリットとしては、(1)運用報酬が二重にかかるなどのコストが高いことと、(2)ファンドの実質的な中身が分かりづらいことの二点が重要だろう。

ファンド・オブ・ファンズのメリットの検討

ファンド・オブ・ファンズのメリットは、表面的に言葉だけを聞くとその通りだと思う人もいるだろうが、本当にメリットといえるかどうか怪しい面がある。

まず、リスク分散だが、確かに複数のファンドを組み合わせると、単独のファンドよりもリスクを抑える効果がある。年金基金のヘッジ・ファンド投資などの場合、運用結果が極端に悪いファンドがあると、加入者への説明などの際に格好が悪いことから、ファンド・オブ・ファンズ型の商品提案を好む基金もあるらしい。

しかし、こうした分散投資の効果は、ファンド・オブ・ファンズを使わなくても、投資家(この場合年金基金)が直接個々のファンドを買い付けると得られるものだ。また、投資家側から見ると、ファンドの選択や投資ウェイトの決定に当たっては、ファンド・オブ・ファンズ以外の保有投資対象とのリスクの相関関係が重要なファクターになるはずであり、ファンド・オブ・ファンズ形式にまとめられてしまうと、本来は却って不自由なはずだ。はっきり言うと、ファンド・オブ・ファンズでセールスするということは、売り手の側が、相手はポートフォリオの構築能力がないと、顧客を見下している状況だと言える。年金基金の運用担当者は、曲がりなりにも運用のプロなのだから、ファンド・オブ・ファンズ形式で提案を持ってこられた場合には、腹を立てるぐらいでないと、本来はおかしい。

もう一点、メリットとして挙げられることがある「プロによるファンド選択」あるいは「ファンドの目利き」の効果についても大いに疑うべきだ。

有効なファンド選択能力は「平均よりも優秀なファンドを選ぶ力」とでも定義できるが、経験的には、残念ながらこうした能力を持っている人も、こうしたことを可能にする方法も見つかっていない。どうやっても何かが「できない」ということを包括的かつ論理的に証明することは難しいが、これが「できる」という有効な証明が見つかるまでは、「上手い話はない」という投資の世界の常識に従っていていいだろう。

また、個々のファンド・オブ・ファンズの商品に関して、商品の組成者・運用者が十分な能力を持っているかどうかを推定するには、個々に組み入れたファンド毎の期待リターン、推定リスクから個々のファンドへの投資ウェイトを決める方法の説明を求める手がある。これは、本来、ファンドの運用上重要なポイントで、本来ははじめから説明が必要な問題だが、改めて質問するまでもなく、ほぼ間違いなくボロが出る。これまで、いろいろなファンド・オブ・ファンズ商品の説明を見聞きしたが、ポートフォリオとして合理的な説明に出会ったことがない。

単に、何々をコアにして、何々を付け加えましたといった説明や、投資対象地域や資産の種類などを三分法、四分法にした、全く内容のない能書きがせいぜいだ。リテール向けもプロ向けも、ファンド・オブ・ファンズは、単に商品の供給者自身が運用能力を持たないからファンド・オブ・ファンズ形式の商品を出したというケースが多く、こうした場合に、他社が運用するファンドの評価といった難しい作業が有効にできるはずがない。

デメリットは「その通り」

投資家から見たファンド・オブ・ファンズの二つのデメリットは、いずれも深刻なものであり、全くその通りだ。

手数料の二重取りは、投資信託形式のファンド・オブ・ファンズでも重い負担になるし、投資信託を運用対象商品として組み入れた個人年金保険でも同様の問題を抱えていることが多い。特に、個人投資家が直接買い付けることが可能なファンドを組み入れた商品の場合には、次に述べる問題も含めて考えると、必要な額を投資家が自分で買う方が、ファンド・オブ・ファンズを通じて買うよりもはるかにいい。個々のファンドの中身に関する情報も、個々のファンドに投資した方が把握しやすい場合が多いだろう。

手数料の問題も明快な欠点だが、ファンドの中身が分かりにくいという問題も実質的には大きな問題だ。特に、ファンド・オブ・ファンズでは、最終投資家が知らない間に組み入れファンドやその比率が変化していることがあり、実際に何に投資しているのかを把握することが難しいし、リスクが想定外の大きさになっていたり(大きすぎたり、小さすぎたり)、大きく性格の違うものになっていたりすることがあるので、気をつける必要がある。もっとも、気をつけると言っても、現実には難しいので、正しい対策はファンド・オブ・ファンズ商品を買わないことだ。

また、運用はあくまでも全体としてどうなっているかが重要なので、全体のリスクを把握しにくくするファンド・オブ・ファンズは投資対象として不適当だ。

市販の投資信託を対象としたファンド・オブ・ファンズは、はっきり言ってしまえば、投資対象についての推薦と推奨する投資ウェイトをホームページに書くなりして紹介してくれれば、それで用が足りるものであり、投資教育や啓蒙の意味では、質問でも受け付ければ、ファンド・オブ・ファンズを売るよりもその方が、ずっと親切だし有効だろう。もちろん、売り手側から見てこれでは商売にならないのだが、わざわざ商品に仕立てて安からぬ手数料を取って顧客に提供する意義は乏しい。

追加的注意

なお、ファンド・オブ・ファンズにあっては、ファンドの入れ替えの際に発生する手数料や、個々の投資対象ファンド内でかかるコストが見えにくくなることがある。かつて外資系証券で販売していた商品には、こうした手数料の中から一定の金額が販売者にキックバックされるような、悪質な商品もあった。そこまで悪い商品は例外的だとしても、情報開示が不透明になりがちで、方々で手数料が発生しがちなファンド・オブ・ファンズには十分な警戒が必要だ。

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