最重要となる米8月消費者物価指数
内閣府が8月15日に発表した4-6月期のGDP(国内総生産)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.5%増、年率換算で2.2%増でした。新型コロナウイルス対策のまん延防止等重点措置の解除によって個人消費が回復、全体を押し上げ設備投資も伸びました。
実質GDPの実額は約542兆1,000億円と、コロナ前の2019年10-12月期(540兆8,000億円)を超えています。ここから想起されることは、追加景気対策は実施されないものの、「コロナ感染第7波」が収束した後はさらに大きな伸びになるのではないかということでしょう。この視点からは、東京都の日々のコロナ感染者数に注目しておくべきです。
過去のコロナ感染拡大時も東京都の感染者数が減少を示した時点から、主に消費関連株に動意が見られました。旅行・レジャー(空運、電鉄、ホテル含む)、外食、エンターテインメントに関連する銘柄、さらにはインバウンド消費に関連する銘柄などに注目が集まる可能性があります。
過去の感染拡大時とは異なり、政府は行動制限(まん延防止等重点措置、緊急事態宣言)を取らない姿勢を崩していません。感染が拡大する中においても株式市場(とくに内需消費関連株)の下支えになっていると思われます。
他方、FRB(米連邦準備制度理事会)は6月に続き7月にも0.75%の大幅利上げを行いました。ECB(欧州中央銀行)も 0.5%の利上げを行いマイナス金利に終止符を打っています。これにより世界的なインフレ懸念はやや後退、逆に景気減速が取りざたされていますが、株式市場では年初から割高感が嫌気され売られていたグロース株が反発しています。
その後、米7月CPI(消費者物価指数)が6月+9.1%→7月+8.5%と低下し、一段とインフレ収束と米利上げ打ち止め感が広がり株式市場はさらに堅調となっています。もちろん米CPIは低下したとはいえ依然8%超であり、低下トレンドに転じたかどうかは米時間9月13日に発表される8月CPIの数値を確認しなければなりません。
9月20~21日開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)直前に発表される数値でもあり、多分、本年ここからの株式市場の動向を決める最重要指標となる公算です。それまでにも米金融当局者の発言なども株式市場をアップダウンさせる要因となりそうです。
次に動き出すのは個人投資家か?
日経平均株価はこの7月以降堅調に推移していますが、その要因として、やはり大型グロース株の反発が指摘できます。日本株全体に特段の期待が高まったわけではないものの、大型グロース株には日経平均寄与度が高い銘柄が多く、それらが上昇する市場環境に変化したことにより目立った反発となったものです。
【日経平均構成比率トップ5】(カッコ内構成比)
- ファーストリテイリング(約8%)
- 東京エレクトロン(約7%)
- ソフトバンクグループ(約4%)
- KDDI(約3.5%)
- ファナック(約2.5%)
・ファーストリテイリングの6カ月日足チャート
・東京エレクトロンの6カ月日足チャート
・ソフトバンクグループの6カ月日足チャート
・KDDIの6カ月日足チャート
・ファナックの6カ月日足チャート
とくに構成比トップの「ファーストリテイリング(9983・プライム)」の動きが出色です。さらに「4-6月期3兆円超最終赤字」が嫌気され急落した「ソフトバンクグループ(9984・プライム)」も保有する中国・アリババ集団株の一部を放出、財務を改善するとしたことで急反発の動きを見せています。
このほか「テルモ(4543・プライム)」、「第一三共(4568・プライム)」、「エーザイ(4523・プライム)」など医薬品株の上昇も日経平均上昇に一役買っていることも指摘しておかなければなりません。
ここから予想されることの一つに、日経平均上昇に伴う「センチメント(市場心理)の好転」があります。情緒的なものではあるものの、株価指数の上昇によってひとまず目先の底値が確定したことから、次の興味が「上値」に移り、これまで手控えていた投資家の参入が期待される流れです。
この動きとなれば、上値形成の中心的存在となるのは個人投資家の可能性が高いです。ここまでの大型グロース株の反発はおおむね外国人投資家によるものであり、個人投資家は小型の株に目を付けるのが過去の経験則です。
セクター2番手や3番手の銘柄に先回りして注目しておく手もあると思われます。ここではセクター3番手以下のイメージがある10万円で投資可能な銘柄を例に挙げます。