中国当局もアリババ社を支持。今後の焦点は?
実際に、当局は今回のアリババ社の動向を前向きに捉えているように見受けられます。7月26日、中国人民銀行(中銀)が発行する「金融時報」は、アリババ社の重複プライマリー上場申請を受けて速報を配信し、次のように解説をしています。当局の見解、立場だと認識して間違いありません。
「アリババ社が香港とニューヨークで重複プライマリー上場した後、ニューヨーク証券取引所におけるADR(米国預託証券)と香港における普通株式は引き続き相互に交換すること、投資家はどちらか一方を選択する形で同社の株を保有することが可能である。これによって、より多くの海外資本が香港に流入することになるだろう」
「重複プライマリー上場後、中国概念株(筆者注:米国上場の中国企業を指す。 基本的にADR形式で、その数は足元で270社超に上るとされる)と香港株の価格設定は相互に独立することになるが、これは香港証券市場の価格設定能力の向上につながる。流動性の増加は、香港の国際金融センターとしての地位を強化する。それに、中国概念株企業が重複プライマリー上場を選択することは、米国での上場に影響しない。長期にわたり、海外資本は中国の科学技術企業の成長に著しい作用をもたらしてきた。アリババ社など一連の中国概念株が米国で上場したことで、グローバル資本の中国企業、中国市場への理解が促された」
当局がアリババ社による今回の行動を支持しているのは明らかです。同社が申請を決定する過程で、中国人民銀行、中国証券監督管理委員会といった公的機関と密接なコミュニケーションを図ってきた経緯も疑う余地がありません。
この期間、アント・フィナンシャルの上場延期、その実現のために、当局からの指導を受けつつ、企業再編に取り組んできた経緯がありますが、香港市場への重複プライマリー上場申請は、まさに再編プロジェクトの一環であると解釈すべきです。その意味で、アリババ社と中国当局は持ちつ持たれつの関係にあると言えるのです。
今後の焦点は、今年中に無事申請が通り、上場に至るか。そして、延期になっているアント・フィナンシャルの再上場に向けた動向といえるでしょう。