平常時は損益計算書が重要だが、非常時はキャッシュフローの方が重要
近代会計が正常に機能するのは、あくまでも「平常時」です。財務や業績が急激に悪化する「非常時」は、会計上の利益の信頼性が急速に低下します。
例えばリーマンショックのような経済危機が起こると、減損といわれる大きな損失を計上する企業が増えます。経済環境が変わることで、過去に行った設備投資が過剰投資だったことが明らかになったりするからです。
今後10年にわたって価値を生むと思っていた設備が、もはや何の価値も生まない不良資産だとわかれば、その時バランスシートに計上されていた残存価値を全て損失処理する必要が生じます。
非常時に力を発揮するのが、現金会計です。現金会計であれば、非常時に減損のような大きなマイナスが急に発生することはありません。
「キャッシュは事実、会計は意見」といわれることもあります。損益計算書に出る「会計上の利益」は、会計基準が異なると、違う値になることもあるからです。経済環境が変わることで、後から大きな減損が発生することが続くと、会計上の損益に対する信頼は低下します。「会計不信」がしばしば取り沙汰されるのは、非常時に多いと言えます。
金融機関や機関投資家のアナリストは、キャッシュフローを重視
企業にお金を貸す金融機関(銀行など)は、会計上の利益よりも、キャッシュフローを重視するのが普通です。機関投資家のアナリストは、会計上の利益も見ますが、同時にキャッシュフローも見ます。
M&A(合併と買収)の現場では、キャッシュフローの方が重要視されます。未上場企業の買収価格をいくらにするか決めるのに重要なのは、会計上の利益ではなく、キャッシュを稼ぐ力です。
キャッシュフロー表は営業CF・投資CF・財務CFから構成される
上場企業が決算の時に公表するキャッシュフロー表では、キャッシュフローが、【1】営業キャッシュフロー(営業CF)、【2】投資キャッシュフロー(投資CF)、【3】財務キャッシュフロー(財務CF)の三つに分けて示されます。
詳しい説明は割愛します。ざっくり、おおざっぱに解説すると、
【1】営業CF:主に「本業」で現金をいくら稼いだか(減らしたか)示す。
【2】投資CF:主に設備投資などでどれだけ現金を減らしたか示す。設備の売却などで現金を増やしたことが示されることもある。
【3】財務CF:主に借金などによっていくら現金を増やしたか、あるいは、借金返済によっていくら現金を減らしたかを示す。
上記は、きわめておおざっぱな概要説明で、細かい説明は省略しています。もっと詳しい説明は、別の機会にします。