国際商品市況が安定に転じるか否かに注目

 図表4は、国際商品市況の動向を示すS&P GSCI(ゴールドマン・サックス商品価格指数)の推移を示したものです。同指数は、エネルギー、貴金属、農産物など24種類の商品価格を取引量で加重平均した指数となっています。

 高値が続いていた同指数は6月下旬に下落に転じ、50日移動平均線を割り込みました。昨年からの物価上昇は、「コモディティ・インフレ」や「コストプッシュ・インフレ」などと呼ばれてきました。

 したがって、エネルギーを中心とする国際商品市況が下落もしくは安定に転じるか否かは、当面の物価上昇率や期待インフレ率に大きな影響を与えると考えられ引き続き注目したい事象です。

<図表4>国際商品市況が一転下落している

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年7月初~2022年6月29日)

 一般的に、景気減速で「消費量」が「生産量」を下回るとの観測が浮上し、国際商品市況が鈍化する動きとなれば、株式市場にとり「大敵」であるスタグフレーション(物価上昇と景気後退の同時進行)シナリオは後退します。

 市場が目先の経済減速をすでに織り込み、景気が「マイルド・リセッション」(短期で浅い景気停滞)の範囲に収まり金利の落ち着きを視野に入れる動きとなれば、年後半に米国株の持ち直しが期待できると考えられます。

 ニューヨーク連邦準備銀行のジョン・ウィリアムズ総裁とサンフランシスコ連銀のメアリー・デーリー総裁は28日、「高インフレを沈静化する必要があるが、依然としてソフトランディング(景気の軟着陸)の達成は可能だ」と述べ注目されました。

 年前半に悪材料を相当程度織り込んできた米国市場では、インフレと金融引き締めペースが想定より早い緩まりをみせることを契機に年後半に株価が戻り歩調をたどっていくと期待しています。

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