今日の為替ウォーキング
今日の一言
人々はあなたが何を言ったか、何をしたかは忘れてしまう。でも、あなたにどんな気持ちにさせられたかは決して忘れない
Crazy For You
日銀は、日本人の心からデフレマインドを完全に消し去り、かわりにインフレ期待を植え付け、インフレがインフレを呼ぶ経済をつくりだそうとしている。
インフレとはモノの値段が上がることだが、相対的に円の価値が下がるということでもある。借金をしている人(政府)は、インフレによって返済するお金が少なくなる。しかしその分高い利息を払わなくてはいけない。お金の貸し手側から見ると、もし市場原理が正常に機能していれば、受け取るお金の価値が減った分だけ、金利上昇による運用益が増えるはずである。
しかし、日銀が人為的に国債利回りを低く抑えつつ、インフレを発生させたらどうなるか。借金をしている政府は、低利息で利払いを軽減させ、お金の価値の減少で債務残高を縮小させることが可能になる。インフレ率を2%以上にして、国債金利を0.25%に固定する状況を安定的に達成できたなら、日本政府の借金は30年後に実質的には半分近くまで減少するとの計算がある。これが緩和政策の究極目標ではないか。
日銀の議事録では「必要ならば、躊躇なく緩和政策をさらに強化する」と述べているが、現在の量的緩和政策は、金融部門がほぼすべてを吸収し、実体経済の支援にはなっていないことを知っているはずだ。緩和政策は新しいビジネスを支援することよりも、ゾンビ企業の延命に利用されているとの指摘もある。日本企業の1/4は、緩和政策の即時終了を希望している。
緩和政策の副作用が、急激な円安となって現れている。しかし、政府・日銀にとっては、円安のスピードが好ましくないのであって、円安そのものがダメはひとことも言っていない。マーケットもこのレトリック(ことばを巧みに用いた表現)に気づいたようだ。
日銀は、為替は管轄外だから関係ないと、円安に対する責任を放棄している。では、政府が対策を講じるのかというと全くその逆で、むしろ円安を大歓迎しているようだ。
政府はインバウンド需要で盛り上がった楽しい日々を忘れることができないのだ。2013年から2020年まで、訪日客は7年連続で史上最高を更新し、2019年は3,190万人に増加した。ところが、新型コロナの影響で2020年には前年比約9割減の412万人まで急減した。
日本政府は6月10日から海外観光客の受け入れを2年ぶりに再開した。インバウンド景気を一気に盛り上げるためには、円の為替レートは140円とはいわず150円くらいまで円安になってほしいと考えているのだろう。