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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
リーマンショック再来ある?忍びよる危機にどう備える?

米インフレ&ウクライナ・ショック続く。日米とも株の上値重い

 米インフレ・ショック【注1】、ウクライナ・ショック【注2】が続き、日経平均株価・NYダウ(ダウ工業株30種平均)とも下値不安が払拭(ふっしょく)できない状況が続いています。

【注1】米インフレ・ショック
 米インフレ率(CPI総合指数前年比)が8.5%(3月時点)と、約40年ぶりの高水準となったことを受けて、FRB(米連邦準備制度理事会)が金融引き締めを急いでいます。金融緩和で押し上げられてきた世界の株式市場はFRBのタカ派転換を嫌気して昨年10月以降、下落が続いています。3月16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)でFRBは0.25%の利上げを実施、さらに5月4日のFOMCで、0.5%の利上げと保有資産の縮小(量的な引き締め)を行うのがほぼ確実です。金融引き締め観測の強まりとともに米長期金利が一時2.9%台まで上昇したことを受けて、大型成長株の比率が高い米ナスダック総合株価指数の下落が目立っています。

【注2】ウクライナ・ショック
 2月24日ロシアがウクライナに侵攻を開始したことが、世界の株安を加速させました。米欧日本などがロシアに経済制裁を実施。これにより制裁を受けるロシア経済だけでなく、制裁する側の欧州・日本などにもダメージが大きくなりました。ロシアの主要輸出品である原油・ガス・穀物・パラジウムなどレアメタルの供給不安から市況が高騰、世界のインフレを加速する懸念が高まりました。米欧日本のロシア事業停止・撤退の発表が続いていますが、それが撤退企業の巨額の損失につながるリスクも出ています。
 停戦合意が近いとの思惑が出たこともありましたが、ロシア・ウクライナ間の主張の隔たりが大きすぎて、当分、停戦は見込めない情勢となっています。世界経済からロシアが分断されることによって、グローバル分業を前提に成長してきた世界経済が壊れ、日米欧のロシア事業で巨額の減損が出る可能性があります。

NYダウと日経平均の動き:2020年12月末~2022年4月26日まで

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成。2020年末を100として指数化

 このコラムでいつもお伝えしている通り、日本株は短期的にはさらに売り込まれる可能性があるものの、長期的には良い買い場と判断しています。それでは、短期的な下値をどれくらい見たら良いか、シナリオ別に試算しました。