今日の為替ウォーキング

今日の一言

内面の強さが勝敗を決めると信じている。勝者というのは心の声によく耳を傾ける者だ。- シルベスター・スタローン

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 インフレ期待とは、物価の行方を人びとがどう見るかの予想だ。インフレ期待が安定していれば物価の変動を和らげる緩衝材となる。物価が上がると考える人が多くなれば、買い急ぎや賃上げの要求を通じて現実の物価を押し上げる物価高のスパイラルが発生する。

 インフレ上昇に歯止めがかからなくなれば、それを鎮圧しようと中央銀行はさらに利上げする。インフレと物価高デッドヒートが繰り広げられる。そして最後は経済が耐えられなくなって深刻なリセッションが起きるのだ。日本経済はいまだに30年前のバブル崩壊の後遺症に悩んでいる。

 FRBはインフレ期待の不安定化を非常に警戒して、利上げの前倒しを急いでいる。ところが日銀は逆にインフレ期待を解き放とうとしている。黒田日銀総裁は、日本でインフレが定着しないことを長年悩んでいたが、エネルギー価格上昇と円安という「大チャンス」が巡ってきた。

 この円安によって輸入インフレを引き起こし、日本人に実際に物価上昇を長く経験させることで、物価上昇を徐々に日本人の考え方の前提に組み込ませるようと日銀は考えているのだ。

 しかし、円安を放置すれば、家賃や税金、食費や携帯代、衣料品や水道光熱費などの「生活コスト」は大幅に上昇する。そこで何をするかというと、政府与党が生活支援として現金給付を行うことで国民の不満を鎮めようとしているのだ。日銀はインフレ期待が欲しい。政権にとっては利上げより現金給付の方が、国民受けが良いにきまっている。

 円の実力(実質実効為替レート)は、1972年以来50年ぶりの低さになっている。名目レートでいえば、固定相場時代の1ドル=308円と同水準だ。それでも日銀と政府には円安に対する危機感が感じられない。

出所:BIS、日本銀行

今週の 注目経済指標

出所:楽天証券作成