エアロバイロンメント
1.軍事用ドローンメーカー
エアロバイロンメント(AVAV、NASDAQ)は、アメリカの軍事用ドローンメーカーです。主力製品は小型UAS(Unmanned Aircraft Systems)で攻撃型(自爆型)ドローンである「スイッチブレード300」「同600」ですが、このほかにも偵察型ドローン「ブラックウィング」、スイッチブレードとブラックウィングを組み合わせてシステム化した戦術ミサイルシステム、偵察型ドローンの「Puma」シリーズなどの製品ラインアップを持っています。また、サイズの大きい中型ドローンには2021年4月期にArcturus(アークチュラス)を買収して参入しました。
今回のウクライナ危機では、報道されているだけで、スイッチブレードが1回目100台、2回目100台、アメリカからウクライナに供与されました。また、3回目300台の供与が決まりました。このほかにも供与されている可能性があります。
ウクライナに供与されたものがスイッチブレード300なのか600なのか不明です。スイッチブレード300(2011年にアメリカ軍での採用が決まった)は軽量ですが弾頭が小さいため軽装甲車までの撃破が可能です。再利用はできませんが、1機約6,000ドルと安価です。スイッチブレード600(2020年に開発終了)はより重いですが、対戦車弾頭を装備できるため、戦車の撃破が可能です(価格は不明)。
2.米軍調達の減少で、2022年4月期は赤字予想。2023年4月期からの黒字転換に期待。
エアロバイロンメントの2022年4月期3Q(2021年11月-2022年1月期、以下今3Q)は、売上高9,009.3万ドル(前年比14.4%増)、営業損失1,412.6万ドル(前年同期は64.2万ドルの赤字)となりました。増収にはなりましたが、これは契約サービス売上高の増加によるものです。今期はアメリカ軍のスイッチブレードの調達が減少している模様であり、このため採算の良い製品売上高が減収となり営業赤字になりました。
会社側ガイダンスによれば、2022年4月期は売上高4億4,000万~4億6,000万ドル(前年比11.4~16.5%増)、当期純損失800~1,200万ドルの見込みです。今期2022年4月期は通期で赤字になる見込みですが、今4Qはウクライナ戦争の影響でウクライナ向けだけでなく、アメリカの同盟国、友好国向けにスイッチブレードの需要が増加している可能性があります。そのため、今4Qは営業黒字が予想されます。
ドローンによる偵察と攻撃、特に攻撃型ドローン、スイッチブレードのような自爆型ドローンは、戦場における新しい攻撃方法です。特に小型軽量で従来型のスイッチブレード300だけでなく、戦車の撃破が可能なスイッチブレード600は今後需要が伸びる可能性があります。
このような見方から、楽天証券では、エアロバイロンメントの来期2023年4月期を売上高5億2,500万ドル(同16.7%増)、営業利益4,500万ドル(2022年4月期楽天証券予想は2,100万ドルの営業損失)と予想します。2023年4月期の営業利益率は2021年4月期から以前に比べ低いと思われますが、これは2021年4月期に買収したArcturusのMUAS(中型UAS)の赤字が継続すると思われるからです。
今後はスイッチブレードの販売の伸びとともに、MUASの損益の改善が焦点となります。
表3 エアロバイロンメントの業績
表4 エアロバイロンメントのセグメント別業績(年度)
表5 エアロバイロンメントの売上高内訳
表6 エアロバイロンメント:受注残高
4.今後6~12カ月間の目標株価を140ドルとする
エアロバイロンメントの今後6~12カ月間の目標株価を140ドルとします。2023年4月期の楽天証券予想EPS1.61ドルに、成長性を考慮して想定PER80~100倍を当てはめました。
中長期で投資妙味を感じます。
本レポートに掲載した銘柄:TSMC(TSM、NYSE ADR)、エアロバイロンメント(AVAV、NASDAQ)