長年相場をやっていると、24時間の相場のリズムというのが体に染みついてくる。相場は規則正しい動きをすることはないので、このリズムというのはあくまで体感による「傾向」であり、統計的に検証しているわけではない。これは筆者の「独断と偏見によるパターン分析」なので、読者の皆さんは話し半分に読んでいただきたい。(24時間の相場のリズムを利用したデイトレード・テクニックについては、3月11日の「外為ライブリポート」でも説明しているのでそちらも参照してください)
一日(24時間)の相場のリズム
一日の相場のなかで円安になりやすい時間帯は、
AM9:00~AM10:00
PM12:00~PM1:00
PM10:00~AM12:00
の3つの時間帯である。
一方、円高になりやすい時間帯は、
AM7:00~AM8:00
PM2:00~PM5:00
の2つの時間帯である。
相場が一方通行に動きやすい時間帯は、
AM4:30~AM5:00
ポジション調整(相場が反転しやすい)となりやすい時間帯は、
PM8:30~PM9:30
というのが、大まかな筆者のパターン分析である。
もちろん、このようなパターンが毎日規則的に繰り返されることはないので、筆者はこのパターンが外れた局面では損失をこうむることも多い。相場には、絶対に儲かる手法というのは存在しない。相場は「確率に賭けるゲーム」なので、筆者は勝率が上がるような相場のくせやリズムを日々探している。
円相場の一日のリズム(特に豪ドル/円に有効)
筆者は相場が円安トレンドを形成しているときは、一日の相場で円高になりやすい時間帯でポジションを作り、円安になりやすい時間帯で手仕舞うのが習慣となっている。相場が円高トレンドを形成しているときはこの逆の作業、即ち、一日の相場で円安になりやすい時間帯でポジションを作り、円高になりやすい時間帯で手仕舞うということだ。
昨日、3月12日の円相場は東京時間で突発的な円高となり、NY時間では円安となるなど波乱含みの相場展開であったが、以下は豪ドル/円とユーロ /円の3月12日の5分足チャートである。1日の相場リズムに当てはめた円安になりやすい時間帯が赤の枠、円高になりやすい時間帯が青の枠だ。PM0:00~PM1:00の円安になりやすい時間帯に円高推移となったものの、その他の円安になりやすい時間帯や円高になりやすい時間帯は概ね有効に機能している。
はずれることも多いので、あまりかたくなにならず柔軟に対処したい。
豪ドル/円(5分足)3月12日の相場推移
豪ドル/円(5分足)3月12日の相場推移
相場が円安トレンドを形成しているのか、円高トレンドを形成しているのかの判定に、筆者は13日移動平均線と21日移動平均線を使っている。13日線が21日線の上にあるときは円安トレンド、下にあるときは円高トレンドと判断する。
豪ドル/円(日足)13日移動平均線(ピンク)と21日移動平均線(グリーン)
ユーロ/円(日足)13日移動平均線(ピンク)と21日移動平均線(グリーン)
以下は、豪ドル/円の日中取引の具体例である。
3月9日~10日の豪ドル/円相場 買いポジションを作る時間帯
- AM4:30~AM5:00
- 通貨ペアおよびNY株の動きをみながら1回転。
NY株引け前30分の動きは一方通行となりやすい。 - AM5:00の段階でNY引値から1円~1円50銭下のレンジで断続的(10銭刻み・30銭刻み・50銭刻みなど)に小さなポジションの指し値を断続的にならべておく。
- AM7:00~AM8:00
- 豪ドル/円相場が押し目を形成しやすい(円が上昇しやすい時間帯)
- AM9:00~AM10:00
- 豪ドル円相場が上昇しやすい時間帯(円が下落しやすい時間帯)
仲値前のこの時間帯に上昇すれば利食い
仲値後は豪ドル/円相場が下落しやすい傾向がある(円が上昇しやすい)
仲値後の時間帯で豪ドル/円の押し目買い(1分足・5分足・10分足・30分足を確認しながら当日の安値ゾーンか過去2日間の安値近辺をねらって指し値する。あるいは1円~1円50銭幅で小さなポジションの指し値を断続的にならべておく) - PM0:00~PM1:00
- 豪ドル/円相場が上昇しやすい時間帯(円が下落しやすい時間帯)
豪ドル/円相場が上昇すれば利食いをおこなう - PM2:30~PM5:00
- 豪ドル/円相場が下落しやすい時間帯(円が上昇しやすい時間帯)
豪ドル/円の押し目買い(1分足・5分足・10分足・30分足を確認しながら当日の安値ゾーンか過去2日間の安値近辺をねらって指し値する。あるいは1円~1円50銭幅で小さなポジションの指し値を断続的にならべておく) - PM8:30~PM9:30
- NYオープン前のポジション調整の時間帯
豪ドル/円相場がもう一段の下落(円高)をみても、辛抱してもう一度買う。(1分足・5分足・10分足・30分足を確認しながら当日の安値ゾーンか過去2 日間の安値近辺をねらって指し値する。あるいは1円 ~ 1円50銭幅で小さなポジションの指し値を断続的にならべておく)
ここで重要なのは決して大きなポジションをとらないことである。最低枚数1万豪ドルでよいので1円~1円50銭幅で各自の資金量やリスク許容度に見合った買い下がり注文をならべておく。
PM2:30からPM5:30で約定した豪ドル/円の注文が評価損をかかえていても、気にせずにさらに押し目を買い下がる。 - PM10:30~AM0:00
- 豪ドル/円が上昇しやすい。(円が下落しやすい)
ここで一日のポジション(残った建て玉)の8割の手じまい売りを行う。 - AM1:30
- 残ったポジション(利食い・損切り)の最終決断を行う。
資金的に余裕があれば評価損の出ているポジションを翌日に持ち越してもよい。
ただし、日足相場が円安トレンドを有している(13日移動平均線が21日移動平均線の上にあること)が絶対条件となる。
(石原順個人の売買手法の参考事例であり、決して将来の収益を保証するものではありません。相場に過信は禁物です)
このトレード手法は2月以降から現在までの円安局面では非常にうまくワークしている。ただし、2000年以降の3月相場はドル/円やユーロ/ドルが「11日から17日の期間に相場の反転をみることが多い」ので、今週以降は相場トレンドの反転にも注意が必要となろう。
これまで述べたことは、汎用性があるかどうかわからない。たぶん、もっと良い方法もあるだろう。また、読者の皆さんも筆者も24時間相場に張り付いていることは不可能である。1日の相場のリズムを読者ご自身で会得して、できるだけ取引に有利なポイントで売買されることを筆者は願っている。取引手法で重要なことは、小さなポジションで買い下がる、あるいは売り上がることである。一度の取引で決して過大なリスクをとってはいけない。余裕のないトレードは市場から追い出される。利食いを欲張らないのがデイトレードの基本だ。そして、読者の皆さんの資産を守ってくれるのはストップ・ロス注文による徹底した資産管理である。
現在の外為市場は既報のように市場間の相関関係が崩壊しており、ファンダメンタルス的なアプローチでは相場に手が出ないのが実情であろう。
NYダウとドルインデックス(日足)
円安の原動力は買い戻しと金融機関によるドルの流動性確保である。日本勢のリパトリは、2009年度税制改正要綱に「日本企業の海外子会社からの配当を益金不算入とする」(時限措置ではない)ことが盛り込まれており、4月以降となるようである。また、現在の水準まで円安が進むと、心配された仕組債がらみの「デジタルな円買いの連鎖」がおこる可能性は小さくなっている。ドル/円の99円半ばから100円にはオプションのトリガーが並んでおり、100円まで強引に踏み上げ相場を仕掛けにいく可能性も否定できない。しかし、いずれにせよ「需給」中心の相場であり、相場の上げ下げを後講釈で解説しても収益に結びつかないので仕方がない。12日にはスイス中銀が為替介入しスイスフランは大幅安するなど、最近は通貨ごとに突発的な動きが起こっていて、相場の焦点ボケが進んでいる。
今週はドルの動きも波乱含みとなっており、次のはっきりとしたマーケットテーマ(相場の焦点)が出てくるまでは、需給に振り回される展開が続くだろう。現在の視界不良の外為相場をしのいでいくのに筆者が拠り所としているのは、上記に述べてきたような1日の相場のバイアス(偏りや歪み)とリズムなのである。
円相場の相場変動幅(ATR)の動向(データは2009年3月12日まで)
ドル/円およびクロス円市場は「円の上昇時に変動幅が拡大し、円の下落時に変動幅が縮小する」という市場の構造を持っている。(特に変動幅縮小の過程では円安になりやすいというのが円相場の特徴である)ドル/円やクロス円通貨は、ATR(アベレージトゥルーレンジ)が下がる過程で円安、上がる過程で円高となるパターンが多い。黄色の期間は円の売り放置やキャリー取引はリスクが高くなる。筆者はデイトレードおよびスウィングトレードでも緑の期間は円売り、黄色の期間は円買いを中心にしている。相場の循環からみると、当面は円高バイアスがかかり続けるので過信は禁物である。また、過去にはATR上昇で円安、ATR下落で円高となった局面も多いので注意されたい。
(また、ATRやボリンジャーバンドの売買手法については、過去のレポートをご覧ください)
豪ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
ユーロ/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
ポンド/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯